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俺だけがセーブできない世界  作者: リウイチ
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第6話 リスキル

6話 リスキル




リスポーンクリスタルの特性によって大量発生し、襲いかかってくるオークキング達。


「何度も湧いて出てくるのなら、何度も同じように斬るだけだ。」 

俺は無尽蔵に湧いてくるオークキングをひたすら斬り刻み続けた。 


斬っては湧き、斬っては湧きを繰り返す。


「なぁ。魔族は死ぬと“転生”ってのができて、死んだ数と同じだけ湧くのだよな。」

「つまり生き返れるって事だよな?やっぱり俺は、魔族とも違うみたいだな!」

敵を斬りながら、転生について考えていた。


“蘇生”と“転生”

その違いを詳しく知りたいという気持ちが強まる。


「「「ブォォォォオオオ!」」」

新たに湧いたオークキングの声が響き渡る。今は考える暇もないか。


「一心不乱、ってやつだな。」

俺は敵を斬る事だけに集中し、勢いを増して斬り続けた。


くそっ...!血しぶきが目に入る!

コイツらはいつまで湧き続けるんだ?限度が無いのか?【命がけ】によってステータスは圧倒しているが、流石に体力のほうが持たない!


「うおおおおおおおお!」

息があがり、体力が尽きはじめ、次第に押されてきた。


「チィッ!」

俺の刀とオークキングの剣が初めてぶつかり合い、力が拮抗した。


「ミコト!」

後ろのほうで俺の戦いを見守っていたセレスが突然声を発した。


「私、この後どうするか決めました!」

「あなたの使命、命の本当の在り方を、輝きを、これからもずっと私に見せてください!」

セレスは両手の拳を握りしめ、真剣な顔で俺に言い放った。


そうだ...ここで俺が死んだら、残されたセレスはどうなる。

そうか。これが人のために戦いたい、人のために死にたくない、という気持ちか。



「死んでたまるかよ!!!」

その時、左手の刻印が、赤く強く光り輝いた。


<スキル【リスポーンキル】習得>

<スキル【命の輝き】を習得>


「うおおおおおお!」

スキルの習得と同時に、俺の周りに強いエネルギーが放出された。

その習得の余波で、周囲にいた数頭のオークキングは木っ端微塵に砕け散った。


「い...一体何が起きたのです!?」

事態の急変に驚くグリズム。


「お前らに、命の尊さを教えてやるよ。」

俺は残りのオークキング達とグリズムを睨んだ。


新スキル【命の輝き】...。命の危機によって上昇するステータスが、以前よりも更に伸びている事を実感する。

戦いに集中する余り気が付かなかったが、レベルもだいぶ上がっていたようだ。まだ詳しく確認はできないが、オークキングのLv数値を把握できる。つまりLv50以上はあるな。


「頑張ってください!ミコト!」

セレスが後ろで応援してくれている。あの子の身の安全のためにも、絶対にこの場を切り抜けてみせる。


「さて。」

背後から襲いかかってきたオークキングを、振り向きざまに一太刀で仕留め、そのまま次々と斬り伏せていく。


「な...何が起こっているというのだ!」

「なぜ死んだオークキングどもが転生しない!?」

オークキングの数が激減している事に気がつき、焦るグリズム。


「どうしてなのか、教えてやる。」 

全てのオークキングを片付けた俺は、グリズムに説明を始めた。


「俺のスキル【リスポーンキル】により、光子となった魔族の魂は、リスポーンクリスタルの所へと飛んで転生した瞬間に消滅し、以後そのループを続けている。」

「これが本当の命、一度死んだらおしまいだ。」

刀についた血を払い、鞘に納め、俺は次の標的であるグリズムの方へと歩いた。


「キーーーッ!仕方がありません!聖女だけでも持ち帰るとしましょう!」

翼を羽ばたかせ、とてつもない速さで俺の後ろの方へ移動するグリズム。


まさか!


「きゃっ!」

セレスの細い声が響く。


俺の後ろに回り込んだグリズムは、セレスの腕を掴み、上空へ逃亡をはかろうとしていた。


「おい、Lv80グリズム。二度は言わねえ。セレスを離せ。」

抜刀の姿勢を取り、いつでも一閃を繰り出せる準備をした。


「ギャハハハ!離せと言われて離すやつがいますかね!」

「いや待て!...貴方今なんとおっしゃいましたか?Lv80グリズム?」

「(私のLvが見えている!?どいうことだ!そして奴のLvが見えなくなっている!?まさか!)」

グリズムの額に、大量の汗が浮かぶ。

 

「ギャ...!」

俺は、一瞬にしてグリズムの首を斬り飛ばした。

レベルアップによって上昇したステータスと、スキルによって上昇したステータスをフルに活用し、神速の一太刀を浴びせた。


「リスポーンキルだ。生と死を繰り返し、無限にその辺を彷徨っていろ。」

グリズムを消滅させ、若木ほどの高さから落下するセレスを俺は優しく受け止めた。


「大丈夫かセレス。」

セレスの身体に怪我はないかを確認した。


「えへへ。ありがとうございます!」

セレスは、出会った頃と変わらぬ笑顔で俺に感謝を伝えた。



先程の急激なステータスの変化を確認するため、俺は自分のステータスを開いた。

Lv97、Lv98、Lv99、まだ上がる。リスキルが発動し、永久的に経験値が入っているのか?


「ミコト!リスポーンクリスタルが!」

オークキングのリスポーンクリスタルが小刻みに震え始め、ひび割れていく。


石が、高速で繰り返される転生の負荷に耐えられなくなっているのだろうか。


「嫌な予感がするな。セレス、直ぐにここを離れよう。抱えても良いか?」


「はい!お願いします!」

セレスの小さな身体を抱きかかえ、その場をあとにした。

 

「しっかり掴まっていろよ。」

数十メートル離れた地点で、リスポーンクリスタルは大きな音を発しはじめ、強力な爆発を起こした。


「うおっ!」

きっと木の枝や小石が飛んでくるはずだ。セレスだけは傷つけたくない。


セレスにおおいかぶさり、次々と背中に飛来する細かな残骸を受けながら、静まりつつある爆風の中で、久々に、いや1日ぶりに込み上げてくるものを抑えきれなかった。


「ハハ...ハハハハ!最初に思った通り、あの石は本当に爆発したな!」


「ですね!かなり綺麗な爆発でした!」


明け方の空で光り輝く星を二人で眺めながら、俺は新しい日に、初めて心の底から笑った。



第一章、完になります。


ここまで読んで頂き、誠にありがとうございました。


感想を頂けると、大変嬉しいです...!

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[良い点] 誰も死なない世界で死んでしまう主人公という設定が面白かったです 文章も読みやすかったと思います [気になる点] 誤字脱字が少しあり、気になってしまいました [一言] 一章のラストシーンが…
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