表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/27

2.親元を離れる


 そんなことがあって、雛岡(ひなおか)未来(みらい)はフィーネとして生きている。


 ただ、フィーネ自身も裕福に暮らしてきたわけではなかった。それは雛岡(ひなおか)未来(みらい)と統合された記憶を辿ればわかる。


 キャルディン家の両親は読書好きの長女、コニーにあらゆる期待を寄せていた。


 一方で、後から生まれたフィーネは物覚えが悪く、何故か好意的に接してくれなかった。



 その『何故』かを理解したのが、今から一年前。


 当時十二歳のコニーは、魔道書のお勉強を始めていた。炎、水、風、土、光、闇、なんでも扱えた。


 それに比べて、フィーネには、魔道書にすら触らせてもらえてなかった。明らかにコニーを優遇して、フィーネは両親とすら対話の壁を感じていた。


 だが、それももうじきおしまい。


 この世界での、貴族の決まりごとが関係していた。貴族は、十二歳になる年の一年間、教育の一環として学校へ通うことになっている。


 コニーは、キャルディン家の近隣にある魔法学園で学び、魔法を扱えるようになった。


 両親からそのように聞かされていた。



 つまり、フィーネも学校で学べば、魔法を扱えるようになる。そう思っていたのもつかの間、両親はキャルディン家から遠い王都にある学校に入学するよう手配する。


 両親はコニーを後続人にしたいってだけで、フィーネを遠回しに追い出そうとしている。


 そう捉えても仕方なかった。実際、合っているのだろうけど。


 幸か不幸か、未来(みらい)が望んだ転生特典は、貴族としてみるのであれば、魔法の才能以外はあまり役に立たなさそうなものばかりである。


 三日後にフィーネは十二歳の誕生日を迎え、馬車での移動開始日が四日後に迫っていた。


 誕生日パーティーなんて記憶にないし、今回もパーティーが開催されないとなると、自由時間が少しだけあるように思えた。


「お前はあらゆる面で育ちが悪いのだから、勝手にキャルディン家を名乗るのではないぞ」


 馬車での出発の日、父親からそう言われた。


 母親のほうに振り向くと。


「…………」


 無言だった。



 ちょっと残念だった。全く期待していないけれど、何かしらの言葉がほしかった。



「行ってきます……」


 フィーネは馬車に振り向いて、キャルディン家の屋敷から離れる。



 コニーはというと、まだ自室で寝ているのだろう。


 まだ朝日すら昇っていない時間ですから。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ