第10話
コアラのビンセントは、羽の生えた猫に変身して、超高速級に走って、隣町のシャンポール街に到着した。この日は、空中飛行は、やらなかった。
勇者たちのいる家に着いた。そこは、平屋建てで、こじんまりしている建物だった。エマの親戚の所有する物件だった。勇者たち全員が3DKの部屋で、暮らしていた。家賃は、老朽化しているので、低料金だった。それにしても、破格の格安料金だった。全員、この家で一応、満足していた。
ビンセントは、ドアを叩くと「こんにちは!伝達屋の猫です!開けてください!魔王様から手紙を預かっております!」
エレーナは、ドアを開けて「あっ!伝達係の猫じゃない!まあ、中に入ってよ!」
ビンセントは「はい!魔王様からの手紙です!」
エマは、ビンセントを見ると「猫ちゃん!今日も可愛いね!」
ビンセントは「うん!ありがとう!」
ビンセントは、犬のヘンリー同様、勇者たちを騙すことを基本にしていた。
勇者たちは、ビンセントを商売のために伝達業をしていると思っていた。魔王とは、商売上だけの付き合いだと思っていた。
エマは「猫ちゃん可愛いから、いつか、一緒に暮らせたらいいね!」と
ビンセントも、エマに合わせて「エマちゃんなら、最高だよ!」
エレーナは、受け取った手紙を開けた。手紙には、“1時間後に、シャンポール街のA野原に来い!さもないと、お前たちが困ることになるぞ!今までのように甘くはないぞ!なめんなよ!魔王より”と記されてあった。
エレーナは「ちょっとみんな、魔王が挑戦状を送りつけてきたよ!いつもと違って、強気の文面だわ!ビンセントによる伝言の時でも、こんな強気のことは今までなかったわ!何を企んでいるのかしら?」
ライガは「給料をもらってから、刀鍛冶のガテゾリアンのところに行ったら、1週間休みの貼り紙がしてあったしなあ。あのおっさんでないと、うまくないから、他の店で、刀を研ぎに出せないしなあ。」
スカイラーは「他に、上手な刀鍛冶は、いないし、困ったなあ。あたしの両刃ソードは、あの店でないと、納得しないから、頭痛いわ!」
ルークは「カードデッキの差し込み口をたまに磨いてもらうけど、いい感じに仕上がるよ。僕が思うには、ガテゾリアンのおっさん、性格は、いい加減だけど、職人気質で、刀鍛冶の腕は、ピカイチだからなあ。困ったもんだ!」
エレーナは「本当にそうよね!」
エマは、ビンセントを抱っこするのをやめると「猫ちゃん!もふもふで気持ちよかったよ!また遊ぼうね!」
ビンセントは「うん!」と言って、帰って行った。
ドロシーは「早くしないとまずいんじゃないの?」
ライガは「じゃあ、みなさん、研いでない武器で、行きましょうか?」
勇者たちは「エイエイオー!!!」と気合を入れた。