2-7.余命診断を受ける
特に病院にも見えないけど、ただの民家でもないような建物に入る。
やけに愛想の良い、受付の女の子に案内されて、すぐ奥の部屋へ。
そこには35歳くらいに見える女の人が居て、この人が医者?診断士?まあ、調べてくれる人らしい。
白衣とか着てないので見た目はただの町民だ。
「大きいねぇ」と言ってから上から下まで見て、「すごいね、これで若かったら、どこぞの貴族が迎えに来るよ」と言った。
大きいのは、まあ、ここではそうなんだろうけど、”すごいね”の方はどういう意味なんだか。
ここでようやく名乗った「はじめまして、メリーです」、
「わざわざ遠くからここに来たからには知ってると思うけど、
君みたいな男性には慣れてるからなにかわかるかもしれないね」と言った。
慣れてても、何かわかるかもレベルなのか。銀貨5枚もかけて。
問診からだけど、内容はけっこうバカバカしく、家族構成はともかくとして、女の裸が好きかとかそんなんだった。
そりゃ好きなので好きだと答えた。
そうすると、だんだん質問内容が生々しいものになってきて困った。
俺は、この医者、変態かもしれないと思った。
家族構成は、生まれ育った家庭のことも聞かれたが、ちょっと特殊で答えられないと言うと、それ以上は聞かれずに済んだ。
母はともかくとして父も最近まで生きていた。
俺自身が生きてて驚かれる年齢なのに、父親も最近まで生きていましたとは言えない。
学校は男女共学だし、高校、大学とか、こっちの環境と違い過ぎて、説明が難しいのだ。
それに、説明する意味も無いだろう。
現在のことに関しては、既にある程度知ってるらしく、部屋割りとかテントで寝るときのことを聞かれた。
そういう関係ではないと言ってるのだが、”くっつくと興奮しちゃう?” ”週に何回くらい?” とか”2人のうちどっちと?” とか聞かれて、なんか夫婦生活とか聞かれてる感じがして居心地悪い。
だから、そういう関係ではないと言ってるのだが。
”ベッドが1つなので、3人で”と言うと驚いてた。
でもよく考えたら、たいがいテーラも一緒だし、シートも居るなと思った。
なので、「実際は3人で寝ることはほとんど無いです」……とも言った。
本当は4人か5人で寝てることが多いのだが、それは言わずにおいた。
シートの知り合いみたいなので、娘達に混ざってシートも参入してると言うのもどうかと思たのだ。
単に3人で寝てると言えば良かった。
すると今度は体の方のチェックに移り、手を握ってみたり、頭や肩、背中を叩いてみたり、次は前屈とか体の柔らかさの検査をされた。意味が分からない。これで何がわかるんだ?
体の老化具合を調べてるのか?
最後はパンツまで脱がされ、ささっとだが、股間もチェックされて、「ちゃんと付いてる。大丈夫そう」と言われた。
何が大丈夫なんだよ……
なんか凄くテンション下がってきて、何してるんだ俺は……と思ったところに、なんか、タイミングを見計らったように受付のお姉ちゃんが入ってきて見られた。
しかも二度見しやがった。
キノセ村でも水浴びしてるとおばちゃんが覗きに来てたから、この世界では男の裸は見れたらラッキー、チャンスがあればいつでも見とけ!みたいな感じなのかもしれないと思った。
でも、ここに勤めてるなら、男の裸には見慣れてるだろうと思うのだが。
特に変でもないようなので、この世界の男にも付いているのだ。
俺も幼児に付いているのは確認できていたので、大人になっても消えたりしないだろうとは思っていた。
チェックしたってことはやっぱり寿命と不能者かどうかの確認だと思うのだ。
服着て待っていると、エスティアとリナが来た。
次は机の前に座らされて、はじめに先生に両手でしっかり手を握られた。
女の人の手って感じだ。なにを聞かれるでも無し、それで終わり。
手を握るだけで何もしない。何のテストだろう?
次に同じようにリナと手を握る。なんかリナっぽくなく、もじもじした感じだった。
こないだ怪我して死にそうなとき、ずっと握ってたんだから、今更気にすることでもないと思うが。
次はエスティア、イノシシのときは自然に手を握ってたと思ったんだけど、今は恥ずかしそうだ。
回りに人が居るからか。テスト内容と関係あるのかもしれない。
そう言えば、この世界で初めて人に会って初めて握った手なんだよな……と思った。
最後は、何故かさっきの受付の女の子。
何故か凄い笑顔だ。なんか、すげー腹立つ。
そういや、こいつさっき見やがったよな。
”お前の名は、今日から俺の中では、ち〇こ見る子だ”と思うと、それに呼応するように、さらに強く手を握ってくる。イラっとした。
さらにもう一度先生と手を握る。もう一周やるのか?と思ったら、そこで終わった。
それで検査は終わり。それで何が分かるのかさっぱりわからないんだが。
これで銀貨5枚って、なんか騙されてないか?
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俺だけ別室に追い出されて、エスティアとリナが説明を受けた。
本人に教えてくれないって、がん宣告かよ!と心の中で突っ込みを入れる。
5分くらいで出てきた。
なんとも微妙な顔をしているので、どうとでも取れる占いの結果くらいの微妙な結果だったのだろうと思った。
帰るとき受付の女の子、俺の中ではち〇こ見る子が凄い笑顔で見送ってくれた。
しかも手まで振ってる。いったいなんなんだ?
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エスティアとリナは診察結果を聞いた。
「不能者じゃ無いわね。もし、今不能者だとしても、磨り減ったって感じ。
珍しいタイプで、今の状態がどうなのかは正直わからないわ。でも……」
メリーはトルテラは不能者では無いだろう。と言う。
仮に今不能者だとしても、それは擦り減った結果であって、元は不能者ではなかったはずだと言う。
しかしながら現在の状態は、さっぱり判断がつかないそうだ。
老化が進んでないことに加え、女に反応する。
不能者ではないと思うが、年齢を考えても、現在の体力から考えても、次に恋したら最後、枯れるか死ぬだろうと。
そして、次に問題なのは、恐らくエスティアにもリナにも既にに特別な気持ちを持っていて、近いうちに恋するかもしれないと。「あなたたちも、それを受け入れる準備ができてるでしょ。見ればわかる」と言われた。
なんだか相性診断みたいな結果である。
マータルレバー。ここは砦の町でもあるが、ファッション冒険者の町でもある。
平時はほぼファッション冒険者の街なので、相性診断の客が多いのだ。
ほとんどは元から合意の上でくるので、相性調べる必要もない例が多いが、そういう方面にも経験豊富なのだ。
エスティアとリナは思った。
近いうちにトルテラは恋するかもしれない。
私たちに。でも、……そうしたら死んでしまうかもしれない。
トルテラはたぶん恋を知らない。
知らないうちに恋をして、その結果、死んでしまうかもしれない。
本人たちは真面目に悩んでいたが、それは大きな間違いで、毎日密着してたら既に恋してるのが普通だった。
エスティアとリナは男をよく知らないし、問診の時に毎日3~5人で寝てることが正確に伝わっていなかったのだ。
正しく伝わっていれば、もう少し別の見解になったのかもしれない。




