転生愛玩人形
ザワザワと五月蝿い声に目覚めると私は鳥かごの中にいた。白い建物の中に色とりどりな鳥かご。私の鳥かごは銀でできたシンプルなカラーではあるが綺麗に艶やか…でも、やはり鳥かご。
「ちょっと!ここから出しなさいっ!!!」
「服をいただけませんか?」
「せめて毛布を…」
「…しくしく」
罵声から丁寧な声から恥ずかしがる様な声に泣き声まで様々な声は鳥かごの中からする。
状況からみて私と同じく転生した愛玩人形である。見た目はやはりキャラ選択でみたような獣人からエルフまで様々な姿をしているが皆全裸だった。
鳥かごに全裸での転生。驚きのあまり固まってしまったが他の鳥かごより高めな位置かつ扉から奥のほうに設置されていた私は他からは姿が見えにくいようで、私はショールで少しでも体を隠した。
まさかパネル画面にあったように裸にショール。全裸に耳にしっぽではなくショールを選んでよかったと心底思った瞬間だった。
暫くして扉が開き入ってきたのは神官服をきた男性達だった。悲鳴や罵声、媚を売るような甘えた声が広がる中、素早く鑑定魔法を使用する。
男性達の頭上には《司祭》とあり、その中でも《司教》とある男性が喋り始めた。そのあとに同じ言葉を繰り返す《司祭》たち。ついでに鳥かごの転生者は《愛玩人形》である。
「※※※※※※、※※※※※※※※※。」
「「※じめ※して、い※かい※よう※そ。」」
すぐに《自動言語習得》スキルが発動したのか片言ではあるが地道に言語が分かるようになった。
挨拶に歓迎の言葉。そして、愛玩人形である私達は部屋を移動してランク別に仕分けするらしい。神官長の言葉に繰り返す神官達の行動はどうやら《自動言語習得》のスキルがあるか、更にそのスキルを効率よく発動させ、この世界の言語を習得させているのだと気がついた。
話を聞きながら冷静さを取り戻した私は素早くショールに衣類変化するように願うとショールはしゅるしゅると体に巻き付きフワリとAラインのドレスへと変化し、ショールはウエストをくるりと回り背中で大きめなリボンへと変化した。シンプルな白いドレスはシンプルではあるが、見た目も生地も高価なのが分かる。貴族令嬢時代に使用したモノの中でも最上級なレベルな生地。ただ触れると肌に触れてるような感覚もあるのでやはり体の一部な扱いなのかな。うっすら透けるような銀糸のリボンは感覚で羽のような機能を補う補助的な役割をしていることがわかった。羽で風を起こし飛ぶのではなく、少量の魔力を使い浮遊するような補助。とりあえず今は素肌を隠せたことに安堵の息をつく。
扉側から次々と運び出される鳥かごを見送りながら言語習得へと集中していると、ただ流し聞くよりも聞き取れる単語が増えていき、私の番にはカタコトにだけど何をしゃべっているのかが聞き取れるようになった。
「こんニちハ。愛玩人形さマ。あなタ様はわたシのことバがりカイでキまスか?」
他の愛玩人形とは違い、衣類を着ていることに驚いた表情を見せた神官長が直々な話しかけてきた。他の愛玩人形は神官が話しかけていたからね。
やはり、目立つのか他の神官達もこちらをちらちらと視線を送ってくるのがわかる。
緊張から震えそうになる足をなんとか動かし、悪役令嬢…いや、公爵令嬢として学んだ技術を思い出しながらカーテシーをすると「ほぅ。」と感心するような声が聞こえた。
「おモてをあげてくダさイ。もウ一度かくニんします。あなタ様はわたしの言葉がりカイでキまスか?」
それに私は頷くことで答えた。聞こえているがまだ喋れるかは怪しい。でも、たったこの部屋でのやり取りでこれ程の言語が分かるのならすぐにでも普通に聞き取れるようになりそうだと安心した。もう、スキル様々である。
そのあと、司教の指示で他の鳥かごよりも丁重に別室に運ばれた。どうやら話ができるかで部屋を分けたりしているようである。私は他の鳥かごのないシンプルだが落ち着きのあるの部屋だった。部屋の中央に鳥かごを設置され、周りを見渡せばシンプルな勉強部屋の様な雰囲気で本棚まである。
…え?なんで??皆何人か…いや、何人形かで部屋に入っていったよね?!なんで私だけ一人なのー?!