表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
普通すぎるほどに異常な生徒たち  作者: 天野るみ
第一章 壊れていく
10/15

第八話 何故四人目が






 ──午後四時五十分




遥陽(はるひ) ちょっと話したいことあるんだけど』

『何?』

未來(みく)のことなんだけどさ、やっぱなんか隠してると思うんだよね』

『なんか?』

『今日話したこと以外にも多分何か視たんじゃないかって』

『それって……犯人とか?』

『そこまでは分かんないけど…… でも何か重要な、それこそ犯人に繋がることだと思う』

『どうしてそう思うの?』

『どうしてって……勘だよ勘』

『勘て』

『とにかく! 隠したのには何かしら理由があるのかもしれないけど、それとなく聞き出してみるから収穫あったら報告するわ』

『りょーかい 話ってそれだけ?』

『もう一つ』

『?』

『……遥陽は 犯人が私達の中にいる……ってどう思ってる?』

『……まだ信じ難いのは山々だけど 可能性は高いとは思うよ』

『そっか ……もし本当に、そうだったら?』


「えっ」

 思わず声が出た。


『うーん…… なんでこんなことをするのか聞きたいかな』

『聞くだけ?』

『まずはね 絶対何か訳があるはずだから』

『その後は?』

『そのあと?』

『理由聞いて、納得できなかったら』

『別にどうもしないんじゃない? そんときはそんときかなあ…… 今考えてもいまいち分かんないけど』

『ま、それもそうだね』

『ってか突然どーしたの?』

『いや、特に深い意味は無い なんとなく気になったから』

『……てまり』

『ん?』

『無事でね』

『何急に 怖いわ』

『ひどいなーせっかく心配してんのに』

『何をよ笑』

『てまりの能力も有能だから 犯人にとっては脅威だと思うし』

『それ今言うことでもないって 大丈夫、遥陽に心配されるほどヤワじゃないっての 護身術ぐらいは心得てるしさ』

『はいはい、それは失礼しましたー』

『笑 じゃまた明日ー』

『うん おやすみ』



 てまりとのトーク画面を閉じ深く息を吐いて、今日一日を振り返る。

 今日は実言がいなくなって、梅葉(うめは)が対策を立てる提案をして、未來から彼女が視た凄惨(せいさん)な未来を聞いて…………。


「あと二十二人、か……」

 本当に一人ずつ消えていっている。


 ……ふと思った。今のところは「厄介な能力順」だが、その後はどうなるのだろう。例えばあたしや雪南(ゆきな)は能力が酷似(こくじ)しているので、差が無い。故に、順番も何も無いと思うのだが。──そうだよ。そこを考えていなかった。“厄介な能力者”を全員連れ去ったら、それ以降はもうただの好き嫌いになるんじゃ……?

「あと考えられるのは──性格、頭脳……あたりか」

 頭が切れる梅葉や緋咲(ひさき)ら辺に、観察力が優れていて勘が鋭い(まどか)なんかも先に選ばれるのかも。


 思案しているうちに夕飯に呼ばれたので、思考を中断してリビングへと向かう。


(未來も桜詠(さよみ)も無事だといいけど………………)

 不安を抱えながら黙々と、できたてのオムライスを頬張った。






 ──六月二十二日 木曜日 午前七時三十五分




 あたしは雪南の家の近くまで来ていた。

 一人で登校する気になれなくて、とにかく誰かと……と思い、雪南に一緒に行こうと提案したのだ。ちなみにてまりやヒトミとは家が逆方向な為、誘いたくても誘えなかった。

 一応桜詠と未來の二人ともにメッセージは送ったが、朝だからなのかいずれも既読はつかない。

「雪南まだかなぁ~」

 若干パラパラと小雨が降りだしている。一応持っていた折り畳み傘をさすべきかどうかと迷っていた、その時。

「呼んだ?」

 背後から突然声をかけられ、思わず跳び上がってしまった。

「ゆきな……と光空(みそら)……」

「「うん」」

 二人が同時に頷いた。

「ごめんね少し遅れちゃって。ちょうど家出た時にね、前を光空が通りかかったの。それで光空も一緒にって」

「なんだか一人じゃ心細くて……」

 むしろ、二人より三人の方が安心だ。三人寄れば何とやら……みたいな?


 そうして、あたし達は学校へと向かった。


 先程送ったメッセージに、うち()()が返信してくれていたことに気付いたのは、教室に入ってからだった。






 ──午前八時十分




 そんな。


『私は大丈夫です ご心配なく』


 桜詠からそう返事が来ていた。

 一方の未來は──未だ未読のまま。


(で、でも……まだ気付いていないだけで、ふらっと返信がくる可能性だってある…………)

 そうだ……! ()()()()()が無ければ…………。


 そう思い未來の席に向けて歩き出すと、

「遥陽! みんな!」

 あたしよりも先に、てまりが未來の机の中を調べ声を上げた。

「! 無い……」

 駆け寄って机の中を覗くと、中は空。何も無い。

 その後未來の机は勿論、ロッカー等もくまなく探したけれど、あの黒いカードは見つからなかった。

(良かった…………)

 安堵のため息をついた。とりあえず未來は無事だ。

 ……しかし、完全に安心するのはまだ早い。

 未來がターゲットではなかったとなれば、四人目は別の誰かということになる。

 今の時点で来ていないのは、欠席の二人を除いて六人。

 一原(いちはら)瞬也(しゅんや)大杉(おおすぎ)(りき)斜線堂彩(しゃせんどうあや)七橋(ななはし)遊離(ゆうり)速水(はやみ)(あおい)藤川(ふじかわ)緋咲(ひさき)

 この中に、次の標的がいる────。











【奥宮梅葉】



 私は甘かった。


 てまりが未來の机の中にカードが無いことに気付き、まだ登校していない六人の中の誰かが四人目だと考えた私達は、六人の机も同様に調べた。──が、()()()()()()()()()()()()()。一応クラス全員の机を調べるも、どこにも見当たらない。

「ひょっとして今日は誰も……?」

 そう遥陽は安心し始めていたが、私にはどうも引っかかる。

 私のその予感が当たったと分かったのは六人が登校してきた、すぐ後だった。


 ホームルームで教師が「今日は知明さんが()()欠席……?」と言ったのだ。


 そんなはずはと誰もが思った。

 そして教師が教室を出た後に未來の机をもう一度調べると、案の定、


『 あ と 2 1 人 』


と書かれたカードを見つけた。


 先刻は無かったはずのカードが入っていた────考えられることは一つ。私達が調べてからホームルームが始まるまでの間で、()()()()()()()()()()、ということ。そしてその時間、他の生徒は勿論教師も、誰一人としてこの教室へ足を踏み入れていない。


 これで、奴がE組の人間だということはほぼ確実となった。


「てまり達が調べた後に、未來の席に近付いた人は?」

「誰もいなかったと思うけど」


 皆が互いを疑い始めている。このままではまずい。自分以外を信用できなくなれば、自然に自分の身は自分で守るという考えになる。しかし、それこそ狙いやすくなるため奴の思うツボだ。──今はまだ、そうなるわけにはいかない。

 桜詠がここにいない以上、カードはすぐに調べられない。

 とにかく放課後、それについても話し合う必要がある。


「梅葉。ちょっと相談したいことがあるんだけど……昼休み時間もらえるかな……?」

「……分かった」

 円に声をかけられた。彼女の深刻そうな表情を見るに、恐らく“エンパス”で何かに気付いたのだろうか。

 今はどんな手がかりでも欲しい。

 雛子の時のように、失踪直前にメッセージを残した実言の足取りも調べてみるか……いや、桜詠は今日一日外出はしないし、今これ以上危険を冒すのはやめた方がいいだろう。


(そろそろ未來の家も警察に届け出る頃かな)

 これだけ立て続けだとさすがに警察も学校まで来る。かなり面倒なことになりそうだ。けれど、一番最悪なのはマスコミに漏れること。テレビに映るなど(もっ)ての外だ。そこは警察に上手く掛け合えればいいが……。

 ──私達は、()()()()()()()()()()()()()()()を装わなければならない。

 あの招待状と今までのカードは一応私が預かっているが、他のみんな(特に光空辺り)からボロが出ないかが不安要素になる。

(……そこも話し合うべきね)











【知明未來】



 ──大人しく梅葉の言うことを聞いておけばよかった。



 ()()()()()()()()()()()()()()()




 殺される──────。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ