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砂の雨

作者: 坂市さと

 少しの風が吹いたかと思うと、それは大きな竜巻となった。竜巻は大陸中の砂を巻き上げて、突然止んだかと思うと二ヶ月に渡って世界中に砂の雨を降らせた。

 作物が育たなくなったと農家が言い、魚が取れなくなったと漁師が言った。いくつかの宗教団体はこの世の終わりがやってきたのだと慌てていたが、三年も経てば砂だらけの世界は新しい日常となった。世界は多くの自然と生物を失い、人々は職を失い貧しい生活を強いられていた。


 とある村に住んでいる少年は、村のはずれで生活をしている先生と名乗る男の元へ通っていた。

「先生に言われた通り、村中のゴミを集めてきました」

「ありがとう、その箱へ入れておいてくれるかい」

 少年は集めてきたゴミを箱へ入れ、茶色く汚れた手で額の汗をぬぐった。

「一体このゴミで何を作るのですか」

「作るのではないよ、育てているんだ」

 男は数日程前から小さな芽に水をやって育てていた。その芽は二枚の葉がお互いを抱き合うように、小さく丸まっていた。


 その植物が気になった少年は、毎日男の家へと通い手伝いをした。それから植物の芽は驚くべき速さで育った。二週間も経つと立派な木になり、それから一週間経つと花を咲かせた。

「先生は、本当に凄いことを成し遂げましたね。もう植物が育たないと思われていたこの地面で、木を育てたんですよ。しかも、ゴミを使って」

「ああ、しかしまだここからなんだ」

「どういう事です?」

「この木はね、食べ物の実る木なんだ。あらゆる野菜やパン、ライスカレーだって実るんだ。この世界をより良い方向へ変える為に、私は常に新しいものを発明しているんだよ」

「先生は本当に素晴らしい方だ。きっと竜巻が起きる前からも素晴らしい物をたくさん発明してきたのでしょうね」

「いいや、まだ成功とは言えないよ」

「成功じゃあないですか。この木の種を世界中へ配れば、また自然が戻って人々は食事を楽しむことができる。まさに、夢の植物です」

 少年は、男の作った木の素晴らしさを伝えたが、男は首を横へ振り続けた。

「なぜ、そのようにご謙遜なさるのですか」

「私の発明は失敗続きでね。前回も地球温暖化を食い止める為に、世界の全てを冷やす扇風機を作ってみたのだが、あれは大失敗だった」

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