第12話 会いに来ましたよ
無我夢中だった。
折れたホウキを学園の親切な先輩たちに交換してもらって、助けて貰ったお礼のためにも、クレアさんやナルカちゃんたちのためにも、お姉さんにまた会うためにも、絶対にゴールしなくちゃと思って。
レース最終盤、タイムはよく見ていなかった。
けど、一秒でも、一瞬でも速くと思って。
その後のことは覚えていない。
気が付くとわたしは、どこかのベッドに仰向けで寝転がっていた。
カーテンに囲まれた狭い空間。
前世の世界で長い時間を過ごした病室を思い出す。
でも、どこだろう?
確かめようと上体を起き上がらせる。
「痛た……っ」
頭に居座るような鈍い痛みを感じた。体には倦怠感があって、またすぐにベッドに倒れこんでしまう。
魔力切れ……というやつだろうか。
魔力を極度に消費すると、今みたいに頭痛と倦怠感にさいなまれると聞いたことがある。
実際に体験するのは初めてのことだった。
と、ベッドを囲んでいたカーテンが揺れて、誰かが中に入ってきた。
「おや、もう起きたんだね。おはよう、ミナリー」
入ってきたのは、赤茶色の髪の見覚えのある女性。
とんがり帽子と真っ黒なローブは身に着けていないけれど、見間違えるはずがなかった。
「お姉さ――痛ぁああああ」
飛び起きた直後、激痛が頭に走る。
うぅ……頭がぐわんぐわんするぅ……。
「こらこら、魔力切れを起こしてるんだから安静にしてなさい。しばらくしたらマシにはなるだろうけれど、きょう一日は魔力の使用禁止だからね」
「はぁーい……」
ほっそりとしたお姉さんの手が、わたしのおでこに優しく触れる。
冷たくて、気持ちい。
不思議と頭の痛みは和らいで、そのまま押されるような形でベッドにまた仰向けになる。
お姉さんはベッド横の椅子に座って、わたしに優しく微笑みかけてきた。
「久しぶりだね、ミナリー」
「……会いに来ましたよ、わたし。お姉さんに箒のお礼を返すために」
「うん。合格おめでとう、ミナリー。晴れて君は、今日からお姉さんの教え子だ」
「え、わたし合格……えっ⁉ 教え子っ⁉ えっ⁉ えぇっ⁉ 痛ぁあああああっ⁉」
一度に色んな情報が頭に入ってきて激痛が走った。
も、もう何がなんやら……。
「ごめんごめん。一つ一つ説明していくよ。まずはミナリー、君は見事王立魔術学園飛空科の試験に合格した。合格タイムギリギリ、最下位での滑り込み合格だ」
「わたし、合格したんですね……!」
「まあ、箒のコアをレース中に交換するなんて言う前代未聞のことをしでかしているから、後から合格を取り消される可能性はあるけどね」
「……痛たたた。あれっ? わたし、レース中の記憶がまったく思い出せません。これも魔力切れの影響だと思います、うん」
「便利な魔力切れだなぁ。まあ、その点については心配しなくてもいい。レース結果が君の実力を証明しているし、こちらは事情を把握している。誰も文句は言わないさ」
「よかったぁ……」
合格取り消しなんてお姉さんが言い出すからヒヤヒヤしてしまった。
きっとアリシアも合格しているはず。
わたし、アリシアと同じ学校に通えるんだ。
「それから、実はお姉さんはこの学園で教師をしていてね。新入生を受け持つことになったから、今日から君はお姉さんの教え子ということになる」
「じゃあ、お姉さんじゃなくて先生って呼ばないとですね」
「個人的にはお姉さんと呼ばれたほうが嬉しいけれどね。シフア・シュテインだよ。よろしくね、ミナリー」
「よろしくお願いします、シフア先生」
「うむ、これはこれでありだね」
お姉さん……シフア先生は『先生』と呼ばれて満更でもなさそうに頷く。
アリシアと一緒に学校に通えて、お姉さんとは先生と生徒の関係になるなんて。
もうそれだけで学園生活に希望が溢れていた。
新たな生活の始まりに胸がたかなる。
「楽しみだなぁ、入学式。どんな感じなんだろう……」
「ああ、入学式ならさっき終わったよ」
「…………え?」
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ここまで読んで頂いております皆さまのおかげです。
仕事との両立で大変ですが、これからも頑張って参ります。
本作の1000年前の物語に当たる「せっかく異世界転移したのに牢屋にぶち込まれた私。地上がドラゴンに支配されていたので箒に乗って空飛ぶトカゲどもを駆逐することにしました。 」ともども、本作を宜しくお願いいたします。
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