母の思い
一文字ずつ確かめるように、ゆっくり手紙を読んでいたら、私の両の目から涙がとめどなくあふれていた。こらえる余裕すらなかった。桃子お母さんの思いがどれだけのものだったか、とてもよくわかったから。
お母さんは短い人生を懸命に生きたんだ。長くは生きられなかったけど、大きくなった私に会うことはできなかったけれど、それでも自分が選んだ人生に悔いはないと胸を張って言える人だ。強い人だと思う。お父さんとおじさんが強く惹かれたのも理解できる気がした。
私はお母さんみたいになれるだろうか? お母さんほど強くはないけど、自分で未来を選ぶことはきっとできると思う。
お母さんの願いは、私が幸せになることだ。そのためには何をしたら良いだろう? お父さんにはどう接したらいい?
返事が返ってこない母の写真を抱きしめ、枕を濡らしながら、その晩は眠った。
翌朝目覚めると、私の目は見事に腫れていていた。一晩泣いていたのだから当然だろう。今日は土曜日で、学校がないことが救いだった。
おじさんとお父さんは一瞬だけ驚いた顔をしたが、その後は何も言わなかった。私が泣きながら眠ったことを知っているのだと思う。
おじさんは蒸しタオルを作り、「これ使うといいよ」って渡してくれた。
蒸しタオルで目元を温めながらぼんやりしていると、照れくさそうに笑う海斗の姿が頭に浮かんだ。
海斗に会いたい。話を聞いてほしい。今日は海斗と一緒にいたい。
部屋に戻った私は、すぐに海斗にメッセージを送ったのだった。




