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あおとみずいろと、あかいろと  作者: 蒼真まこ
あおの章~青葉
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永遠と変わりゆくもの

 それから僕たち3人は、共に語らい、共に笑って、青春の一時を過ごした。ケンカすることが多かった僕と水樹も、間に桃子がいるだけで関係が和らぐのだから不思議だ。

 水樹や桃子がおかしなことを言って、僕が笑い、そして3人で笑う。思えば笑顔が少なくなっていたと今更ながら気付く。


「青葉ね、しかめっ面なことが多いのよ。気付いてた?」

「うそ……。今晩の夕食をどうしよう? とか考えてただけなんだけど」


 桃子の言葉に、水樹がうんうんと(うなづ)く。


「そうそう、青葉はいつも怒ってる気がして、怖くて近づけなかったんだよ、俺」

「逆に水樹はにやけ顔を見せすぎだけどね」

「うそだろ? 俺としては、『いつも笑顔を絶やさずに』をモットーとしてたのに」

「笑顔というより、にやにや顔」

「桃子、きっついなぁ。じゃあ、これならいい?」


 笑顔をにやけ顔と言われた水樹はヤケになったのか、次々おどけた顔を見せては、桃子と僕を笑わせる。


「あははは、水樹ってば、おもしろいんだから!」

「そんなに笑わせないでくれよ、笑うのが止まらなくなる」

「青葉はもっと笑えぇ! しかめっ面をなくすんだ!」


 3人で笑って、3人で学び、3人で一緒に料理をする。助け合いながら、家庭や学校の不安を乗り越えていった。今後の不安や悩みも、水樹と桃子になら話せる。3人で助け合う生活は楽しくて心強い。

 

「青葉は真面目すぎるの。もうちょっと気を抜いて、人を頼ってもいいと思うよ。水樹は本当は誰より優しいのに、いつも言葉が足りなくて人に誤解(ごかい)される。思ってることはちゃんと人に伝えないと。誤解されたままじゃイヤでしょ?」


 桃子は僕と水樹に遠慮(えんりょ)なく話す。ちょっときつく感じることもあったが、それは僕たちを思ってのことだと今は理解している。実際、桃子の指摘は的を射ていた。


「桃子はちょっとがさつすぎるけどな」

「ちょっと、水樹。それ、女の子に言う台詞?」

「がさつというより、ずぼらかな?」

「青葉ぁ、それ、助けてないから! 追い打ちかけてるから!」

「桃子だって言いたい放題だろ、なら俺たちだって好き勝手言わせてもらうさ」

「そうだね、言われたまんまだと何か悔しいし」

「……わかりました、もうちょっと言葉には気を付けます……」


 珍しくしゅんとした桃子を見て、僕と水樹はお互いの顔を見ながら笑った。


「「わかればよろしい!」」

「わ、こういう時だけ二人同時に言うの? しかも息ぴったりなんだから!」

「そりぁや双子だから、いざとなったら息合わせるのは余裕」

「僕が水樹に合わせてるんだけどね」

「青葉、そこは『息ぴったり』って言ってくれよぉ」

「水樹ってば必死になって、おかしいの~」

「桃子、おまえなぁ!」

「きゃ~、水樹が怒ったぁ! 青葉、助けて~」


 水樹の手から逃れようと、桃子が僕の後ろに隠れる。水樹は僕という壁を通しながら、桃子を捕まえようと必死だ。僕は笑いながら、二人をなだめる。


 3人で笑う時間は僕たちにとって希望で、暗闇を照らし出す光だった。

 どうかいつまでも、3人で時間を過ごしていけますように。きっとそれは、水樹も桃子も同じだろう。永遠なんてないかもしれない。それならせめて少しでも長く、3人で助け合っていけますように、と願わずにはいられなかった。



          ♢♢♢♢♢



それは中学校の卒業が近づいてきた頃のことだった。


「なぁ、青葉、相談したいことがあるんだけど」


 一緒に料理をしていると、水樹が遠慮がちに声をかけてきた。


「水樹が相談? 珍しいな。一体なんだよ?」


 頼られるのは悪い気はしない。僕にできることなら、できるかぎり協力しようと思った。


「俺さ、桃子のこと好きかもしれない。友達としてじゃなく、ひとりの女の子として」


 ずっと変わらないでほしいと願った時間。それは身近なところから少しずつ(ほころ)びていったのだった。



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