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継ぎし賢者の禍祓い(更新停止中)  作者: 漆黒月 劉狐
9/10

「……」

(やはり、こういう確認という作業の大切というものは、つくづく身に染みるな)


 窓から差し込む翌日の朝日に照らされて目覚めた雅嗣。目の前には、宙に浮いた半透明の液晶の様なものがある。表示されているのは雅嗣自身のステータス。加えてスキル等の詳細な説明等が表示されている。


 自身の持つ身体能力やスキルの名前の把握などはあっという間に済んだが、問題はそこからだった。スキルや魔法についての詳細な説明、珍しいスキルの名称とその解説等々。いい加減なものから異常と言える膨大な情報まで、余す事無く読み込むのに一日は容易にかかってしまいそうだと判断出来てしまったが故に。


 と言っても、今の雅嗣にとって一日を不眠不休で過ごす事は毎日睡眠をとるのと何ら変わりの無い程にしか消耗されない為、然程肉体的に疲労は見えない。代わりに精神が疲弊が時間に比例して大きくなる。一日、休みも無くただひたすら情報を頭の中に流し込み、思考し続けているのだ。疲れない訳が無い。


 そんな精神にとっては地獄の一日が終わりを迎えようとしている。

 最後に雅嗣は自身の状況や現在の自身の能力について、再度考えをまとめることにした。


(この身体能力なら大概の事は全く苦労しないだろうが、その代わり技術向上においては厳しいだろうな。だからと言って全部力任せにする訳にもいかない。まぁ、その為の弱化の指輪。というのも中々用意周到な準備だと思うが、何故こんなものが俺のもとにあるのかが気になって仕方がない。…………考えるだけ無駄か)


 徐に取り出した弱化の指輪を左の中指に嵌めて改めて自身のステータスを見る。



◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

氷月 雅嗣  年齢:15歳 性別:男 種族:半竜人


職業:?


レベル:1


HP:10(100)

MP:0(1000)

ST:50(500)

状態:弱化


筋力:20(200)

技量:20(200)

防御:20(200)

敏捷:20(200)

知力:20(200)

魔力:0(500)

魔耐:0(500)

運 :10(100)


魔法適正:極

適正属性:全


スキル:ストレージ 戦闘術基礎 竜変化 竜技 超速再生 仙術


ユニークスキル:不死者の烙印


称号:守護者 漆黒き竜神


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



(確かに変わったな。これなら周りに紛れることも簡単だな。スキルや称号は、まぁ何とかなるだろ。偽装の指輪を使っているとはいえ、見た目に関してはもっと厳重にする必要があるな。たしか、戦闘技術基礎の中に≪偽装≫と≪気配操作≫があったな。これを使えばどうにかなる筈だ。まだレベル1で心許ない事には変わりは無いが、上手く使えればそれはちょっとした誤差にしかならないだろうからな。今の俺ならそれが可能だろう)


 なるべく目立つのを避ける為に雅嗣は見た目をより隠蔽し、身体能力を大きく制限する事にした。


戦闘技術基礎 ≪偽装≫≪気配操作≫


 ≪偽装≫

 見た目を全く違う姿に変える事が出来る。

 欠点:バレやすい

 代わりに偽装する範囲が広い。


≪偽装≫→ステータスの偽装・外見の偽装

偽装の指輪→外見の偽装


 偽装の指輪を用いている為、その能力に重ね掛けして強固にする事が可能。

 試しに≪偽装≫を発動すると、弱化に()がかかり正常と表記された。



 ≪気配操作≫

 自身の気配をある程度操る事が出来る。

 欠点:気配を消していた場合に察知され視界に捉えられた時。

   →察知した対象にスキルの効果が僅かに薄まる。


 見た目というのは行く所まで行けばそれだけで武器になり得る。世の中のそういう類の事をしている男や女がよく使う手段。そんなものを使うほどの余裕を雅嗣は持ってはいなかった。

 それは肉体にも当て嵌まる。

 現在の雅嗣の肉体は全身細身に強靭ともいえる筋肉をこれでもかと搭載している。所謂、人間凶器とも称されても違和感の無いものになっている。そんな人間が町中を歩いてみるとしよう。どれだけ一般的な顔面偏差値であろうが周りの目が向けられる事は変わらないだろう。


(筋骨隆々な奴等は漏れなく大人数からの視線の串刺し行きだ(個人の偏見))


 ゴリッゴリの要塞よりも、もやしの方があまり目立たないのではないのだろうか。そう雅嗣は考えていた。


(暗殺者

アサシン

や狩人の≪気配操作≫に≪偽装≫職業系統のスキルにも共通するスキルにはある程度補正が付いている。こういったスキル達は初期にしてはかなり利用しやすくなる事は覚えておこう。いずれ必要になってくるものだろう。だが、このスキルはあまり表に出さない方がいいだろう。バレでもしたらどんな対抗をされるか分からないからな)


 だからと言って、手の内を意識し過ぎてはバレては元も子もない。

 つまり雅嗣には、この絶妙な加減を身に付ける必要があるのだ。



 能ある鷹は爪を隠すという言葉がある。


 真に実力のある者は、獲物を狩る瞬間の刹那に本気を見せるものだ。

 良くも悪くも、ちょっとした好奇心で無暗にやたらに手を伸ばすものではないそれは、本来触れるべきではないものである。



 常日頃より、生きとし生きる者達は、自身の行動を晒す。

 だが、だからと言ってその個体がその後、何を思い・行動しているのかは分かる事は無い。

 そして人は、言葉での細かな意識の疎通を図る事で、思いを伝い伝えられる事で、その人物の大まかな行動・心情を知ることが出来る。普通ならば、これで話は終わる為、特に何という事も無くて良いのだ。


 問題は、それらが行き過ぎると範囲に足を踏み込んだ時、自身の他者に対して晒す最低防衛ラインを突破される可能性がある。という事だ。


 人は誰しも知られたくない一面を、大小と不確定ながらも必ず持っているものである。その一面を何が何でも見たいが為に、他者がその人物の情報を手当たり次第に漁るとしよう。そして、その人物の隠していたものを知ってしまったとしよう。その時点で防衛ラインは突破されてしまうのだ。

 知られる事、その事実によって防衛という名の線の役割を担う壁に大きな穴を空けられてしまうのだ。


 余程の事では吊るし上げられる事は無い。だが、それが重なり重なる事で壁が意味を失うのだ。

 知られ過ぎる事が当たり前になる。


 が、その情報が下手にとんでもない情報だとして、抜き出されでもしたら状況は一変してしまう。


 何でも自由に引き出されて、枯れ果てるまで絞り尽くされて、最後は煙草の吸い殻の様に路上の隅の隅に投げ捨て踏みつけられる。吸うだけ吸っておきながら、誰も大切の扱う事をしない。何故なら、自分以外の防衛ラインなど知った事では無いからだ。



閑話休題



 さて、では雅嗣の目的はどうだろう。

 容姿と身体能力の偽装。そして、なるべく目立つ事無く単独行動が可能になる様、迅速に身の回りの状況を構築する事。

 理由は、自身への警戒を最小限の状態を保ちつつ、ある程度の行動範囲を確保したいから。

 勿論そこにはバレるリスクも当然ある訳で、


 容姿の≪偽装≫がバレれば、

 周りから注目の的にされ、常に視線を気にしなければならなくなる。それは雅嗣の目立たない様に行動する状況とは反対の状態になってしまう上に、単独行動の出来る範囲も大きく制限がかかってしまう事になる。

 これに関しては、うっかり指輪を外されない限り問題は無いだろう。


 しかし、まだ自身の能力を把握しきれていない状態で身体能力の≪偽装≫がバレれば、

 これもまた注目を浴びる事になり、結局目を付けられる羽目になる。


 他にも数多警戒する必要があるというのは骨が折れるというもの。


 つまり、下品な言葉が頭に付くほど面倒くさいのだ。



「やってらんないな」


 溜め息を吐きながら雅嗣は右手人差し指に時空の指輪を嵌める。



時空の指輪


 神と呼ばれる者の創造した。

 世界と世界を繋げる能力を持つ指輪。

 世の支配者達が挙って欲した神代の遺産の一つ。


 この指輪さえあれば。今いる世界とは違う別の世界を渡る事が出来る。

 恐らく先人達は、力さえあれば、その地を支配出来るかもしれないという期待に駆られていたのだろう。



(世界と世界を自由に行き来する事が出来る能力を持つ指輪。確かにとんでもない能力だ。繋げる事が出来るのは一つだけで、更にその変更が利かないという条件付きではあるがな)


 先人達は知らなかったであろう。そんな条件があることは。と雅嗣はそう思っていた。


(まぁ、例外というものもあるんだがな)


 心の中でそう言った雅嗣は、既に別世界に繋がっている時空の指輪を見て、


「やはりな」


 そう呟いた。そして刹那の間を空けて、詠唱を始めた。



幾多の世界を繋ぐ大いなる時空の番人よ

我は一柱の神にして守り人なり

古き契りを果たす為

古き戒めに則り

世界の扉を開き給え

守護者の証たる神器はここにあり


顕現せよ時空の扉





「後は、現地で確認した方が楽だ」


 次の瞬間、雅嗣の姿は眩い光に包まれて消えていった。

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