追い出されました?
僕の今を生きる理由は一重に“死ぬ為”だ。
今の僕にも過去の僕にも、居場所というのは無かった。加えて特に生きる理由が無かった為でもある。
その結果がそれに落ち着いた訳なんだけど、困ったことに死のうとしても死ねないからね。そういう意味でも死ぬ為にという目標の中に入っているのかな?
さてさて、話がズレそうになったから戻そう。
まぁ、始めは僕の素姓からだね。
僕の名前は 氷月 雅嗣 15歳の只今高校入学を前に控えた現在無所属の高校生(仮)で、基本的に動くことが好きな男子です。
身長は160センチ位で、髪型は少し長めの天然パーマがほんのりかかった黒髪。瞳も同じく黒。
ここまで聞けば唯の運動大好きなアウトドア系の男子をイメージするだろう。
しかし、僕は俗に言うデブスに該当するとのことで、小中と日々いじめを受けていた。
そんな僕だから、彼女も・いない歴=年齢という記録はを只今絶賛更新中です。
だけど、僕には誰にも経験が無いだろうと思っていることがある。
僕は、生まれてこの方疲れたことが無いんだ。
普通の一般市民が努力して体力をつけて、ていうなら話の筋は通るのだけれど、僕の場合はそれも無い。
つまり、体力的な意味で疲れたことが無いということだ。精神的な疲労は仕方ないのだろうけど。
だから、よく一人でランニングや散歩感覚でジョギングに出ていたりしていたし、アニメのマッチョキャラクター達を見て本気でトレーニングしたりしていた。
まぁ、体系は全くと言っていい程変わらなかったけどね。
あとは、時々変な現象が周りに起こるというところだろう。
例えば、
物が勝手に動く。
水道代が余り減らない。
ガス代が余りかからない。
といったものだ。
これは小学校低学年、1~3年生時代に起こって以降僕が料理をした時が多かった月のガス代がかなり安くなっていた。普通なら高くなっていた筈なのにも関わらず。
それに、その月に限って僕は他の月と比べて絶対高くなるだろうと思っていたりする。何故なら、炒飯やミートソースといった、火力を要する料理やじっくりと煮込むタイプの料理を頻繁に作っていたからだ。あ、もちろんだけど、その時は台所からは離れていないからね。
これでも料理、掃除全般は何でもござれの僕。主夫道を極められそうだな~。
さて、うん。そんな僕は今何をしているかって?
「ふぅ、あとこれだけか」
荷造り途中だよ。
僕はなるべく作業が済むように一言も発することなく目の前の作業にただ集中していた。
するとそこにあった筈の物が瞬く間に段ボールの中に消えていく。
我ながらかなり不思議なんだよね。だって、消えるんだよ?
「……やっぱり早いな」
加えて、荷物もそこまで無いから比較的簡単に荷造りが出来てしまった。
何故だろう、少し虚しい気持ちになる。
「これで、本当に一人だな」
実際は勘当に近い扱いなのだけどね。
全く、素直に邪魔だと言ってくれれば良かったのに。と言えないのが悔やまれる。僕は現在、中学校を卒業、そして高校に入る一歩手前まで来ているから、そんな事で文句なんて言っていられない。
こんなことになったのは殆ど父親が原因なんだけどね。
小難しい言葉を色々言っていたけど、要約すると「お前が居る邪魔だから家だけは準備してやる」といった感じかな。何でも僕が引っ越した時に新しい母親を迎え入れるのだとか。そりゃあこんな奴なんていない方がいいだなんて言われても否定できないよ。
因みに、母とは既に離婚しているらしい。父は僕の所為だとか言っているが、僕が何をしたというのだろう。
追加で言えば、その新しい母親という者には既に子供がいるらしい。才能溢れる麒麟児だとも言っていたな。
十全十美の天才。その名を欲しいままにしている男。そんな奴に対して僕は無能。なんて考えて天秤が傾いたのは仕方ない。
僕に向けられた愛なんて、生まれて少しで無いものとなったのだから。今更父親面された方が気持ち悪いと思ってしまうだろうな。
そもそも、今の僕にそんなものはいらないし、今更欲しくも無い。
さて、荷造りも終えたところだし、さっさとこの家から出されるとしますか。
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僕を乗せた父の車は暫くして目的地に到着したようなので車から少し体を捩って出る。
荷物を降ろすときも無言は続き、遂に最後まで言葉を交わすことなく、父は足早に車に乗り去って行ってしまった。
結局ここまで一言も会話が無かった。
車が見えなくなった後、僕はその建物を今度はしっかりと見据えた。
ただ、そこにあったのは僕が予想していたものより遥か上を行くことになる。
「確かに古そうだけど、これはちょっと」
古いアパートの一室かと思っていたから尚のこと吃驚した。
いや、いやいやいや。これは本当に勘弁してくれ。はぁ、これは掃除やら整頓で丸一日どころか、何日かかるんだコレ。
「大きすぎませんかねぇ」
僕の前には古いとはいえ立派な門が建っていた。門は開いていて、そこから見える建物に絶句していた。
「誰が日本家屋を想像すると思う。いないでしょ普通」
趣のある佇まい。パッと見て古いとは思えない上品な彫刻の彫られた門。その他装飾に目立ったものはないけど。迫力に圧倒されてしまった。
「はぁ。それじゃ、まずは掃除からかな」
そう言って僕は荷物を持った状態で器用に掃除道具を両手に持って作業に入るべく新しい住居となるこの地に足を踏み入れるのだった。