放課後、1人、恋心。
キーンコーン、カーンコーン、
ワイワイ、ガヤガヤーー
長い授業の終わりを告げるチャイムが鳴り、生徒達は解放感を味わいつつ帰り支度を始めていた。
「カケル、部活頑張れよっ!じゃあまた明日なっ」
「おぅ、また明日なっ」
颯の友人達は軽い挨拶をして教室を出て行き、
「颯君、今日はサッカー部で試験だよね!私達も応援に行くからねっ」
「おぅ、ありがとう!でも今日は暑くなりそうだから、応援してくれるのは嬉しいけど日陰でちゃんと水分摂りながら応援してくれよっ」
颯に好意のある女子達は、自前と思われる応援旗と鉢巻を装備してグラウンドへと向かって行った。
そんないつもの光景を横目に、雅も帰り支度を済ませて部室へと向かおうとしていた。
「ミヤビ、部活頑張れよっ!賭けの結果、楽しみにしてろよなっ」
『うん。颯が頑張ると私が奢らないといけないから、本当はあんまり応援したくないんだけど……颯、頑張れ』
「ーーーおぅ!」
雅に応援されたのが予想外だったからか、颯は一瞬だけ目を見開いて驚いた顔をした後、いつもと同じ爽やかな顔でニカッ笑って返事をした。
ガラガラッーーー
「・・・・・」
雅が教室を出て行った後、颯は少しの間 自分の席に座ったままでいた。
誰も居なくなった教室に1人残った颯は、先程ミヤビが言ってくれた言葉と、その時のミヤビの優しげな表情を思い返していた。
「颯、頑張れ…って」
そんな颯の頬は、少しだけ紅くなっていた。
「あんな顔でミヤビに頑張れなんて言われたら、ヤル気出るに決まってるじゃんか…」
部活は普段から結構真剣に取り組んでいるし、今日の実力査定試合も本気でやるつもりではあったが、ミヤビのせいでヤル気メーターが完全にマックスを通り越した。
ドクンッ、ドクンッーーー
しかし、雅の応援で上がったのはヤル気メーターだけではなく、どうやら心拍数も激しく上げられてしまったようだ。
ドクンッ、ドクンッーーー
高鳴る鼓動のせいで顔が熱くなっているのが分かる。
教室に、誰も居なくて良かった。
誰かが居たら、紅くなった顔を揶揄われたかもしれない。
もしかしたらバクバクうるさい心臓の音を聞かれてしまうかもしれない。
ミヤビに告げる前に、気持ちを気付かれてしまうかもしれない。
ーーーパチンッ!
いつまでも収まってくれない鼓動の音と、自分の中にある特別な想いを抑え込む為に、颯は自分の両頬を叩いて 無理矢理気持ちを切り替えた。
「・・・よしっ、頑張るとしますかっ!」
気合いを口に出す事で意識をミヤビから部活へと移し、颯はグラウンドへと向かって行った。