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エンディング・ワード  作者: セカンド
CASE.2 【 宿命 】
7/14

教室、カケル、雑談。



体育授業の数倍はハードな朝練を終えた雅は、更衣室で少し休憩してから着替えを済ませて教室へ向かった。



『じゃあ由梨、また後でね。早弁するのはいいけど、お昼の分はちゃんと残しておかないと、また部活中にお腹空いちゃうよ」


「だいじょーぶ、あれからお弁当は2つ持ってくるようにしてるから。じゃあまたお昼にねー!」



親友である由梨とはクラスが違う為、廊下で別れてお互いの教室へと入って行った。




ーーーーー






「よっ、さっきぶり!あれ?なんかミヤビ、朝見た時より顔が痩せた気がするけど、バスケ部の朝練ってそんな一瞬で痩せるくらいキツイのか?」



教室に入り、自分の席に座って一時限目の準備をしていると、朝練前にも会った颯が隣の席から声を掛けてきた。



『確かに朝練はキツいけど、一瞬で痩せるほどじゃないよ。朝は寝起きで顔がむくんでただけで、今が普通の顔』



「ははっ、そうだよな!朝練だけで小顔になるなら、女バスに入部する女子もっと多いだろうしな」



『そんな軽い気持ちでバスケ部に入ったら、多分1日持たずに泣くか吐くかして辞めちゃうよ』



「そうなのか?男バスはなんか楽しそうってみんな言ってたから、女バスもワイワイやってんのかと思ってた。まぁでもバスケ部は強豪だから仕方ないのか…。ミヤビも頑張るのはいいけど、あんま無理はすんなよ」



朝練終わりという事もあり、部活動をしていない生徒達より早く教室へ着く事が多い雅と颯は、席が隣同士である事も相まって日頃からこの様な雑談をする事が多い。




席が近いのは偶然だが、この偶然は中学の時からずっと続いていた。


颯が雅の通っていた中学に転入してから2人はずっと同じクラスで、毎回クジ引きで決まる席なのにも関わらず雅の席の前後左右どこかに必ず颯が居るのは、偶然というより運命に近いものがあるのかもしれない。




『そういえば颯、サッカー部の実力査定って今日だよね?インターハイ予選のメンバー選考も兼ねてるって由梨から聞いたけど、颯は選ばれそうなの?』



「んー、どうだろうな。去年部活の見学に来た時よりサッカー部のレベルも高くなってたからなぁ。

でもオレは一応サッカー推薦だから、ここで落ちると色々気まずいし頑張るよ。

ちなみに今日の実力査定はインターハイ予選の選考じゃなくて、それに向けての強化合宿に参加出来るかの選考な。まぁ結局その強化合宿に参加したメンバー中心で夏の総体に出る事になるから間違いではないけどね」



『結構大事な査定なんだね。スパイクシューズを忘れるような人が本当に選ばれるの?

そうだっ、もし颯がその査定に落ちたらアイス奢ってよ。トリプルで!』



「マジかよ。選考漏れして傷付いた時に財布に追い打ちか?オレ、どっちかと言うと罰ゲームよりご褒美があった方が頑張れるタイプなんだけど」



『うーん、それじゃあ颯が合格したら私がアイス奢ってあげる。もちろん落ちたら颯の奢りだけどね。トリプルで』



「おおっ、それなら乗った!よっしゃ、ヤル気出てきたっ!約束忘れんなよっ」



『はいはい。何味にするか考えながら結果を楽しみにしてるよ。三段アイス〜♪』



「ふっふっふっ、ヤル気になったオレの実力を甘く見るなよっ。絶対ミヤビにチョコミントのトリプルを奢らせてやるぜっ」



『え?颯が勝ったらシングルだよ?』



「ーーーっっ!?」




同級生の男子の中で、雅が1番親しいのは颯。


今朝、由梨がチャカしたような感情は雅には無いが、気が合うし仲が良いのは事実であり、雅自身もそれを否定するつもりはない。


毎朝というわけではないが、バスケ部とサッカー部のどちらも朝練がある時は、今の様に雑談を楽しんでいた。


厳しい朝練で疲れていても、教室に着いて颯がニカッと笑いながら話し掛けてくると、疲れがスゥーっと引いていくような感じがして、いつの間にか雅も笑顔になっていく。


そんな颯との短くも有意義な朝の談笑は、雅にとって良い意味で気分を変えてくれていた。






ガラガラッーーー




雅と颯がとりとめのない話しをしながら始業のベルを待っていると、登校してきたクラスメイト達が徐々に教室へと入ってきた。



「おっ、かけるおっはよー!今日は朝練だったんだよな?朝っぱらからおつおつー!」


「なぁなぁカケル聞いてくれよっ!3組のナミちゃん、絶対俺の事好きだと思ってたのに昨日違う学校の男と手ぇ繋いでデートしてたんだよ!」


「そんな事より颯、ジ⚪︎ンプ見た?またあの漫画休載って小さく書いてあったんだよぉ。もう俺今月はやる気出ねぇよぉ」


「いや、それよりも今の日本の政治が問題だ。桐島、お前の柔軟で革新的な意見を聞きたい。僕は昨夜からその事について考え過ぎて寝不足なのだよ」



「ねぇかけるっ!」 「どう思う?カケル!」


「颯ぅぅぅっ」 「桐島、革新的な意見を!」



「だぁぁっ、朝っぱらからなんなんだよっ!?オレは聖徳太子じゃないんだからそんなに一気に言われてもわかんないって!お前らウィルニッケ野って言葉知ってるか!?」






クラスメイトの男子達は教室に入ると、ぞろぞろと颯の元へと群がり始め、あっという間に颯の姿が見えなくなるほど囲まれていった。



これは特別な光景ではなく、見慣れた日常風景。



誰に対しても分け隔てなく接する颯の周りには大体いつも人が集まっており、それはこのクラス内だけに収まらず、男子は友好的に、女子は好意的に颯の周りに集まってくるのだ。


もしも学年別人気投票のような物があるならば、1年の男子では間違いなく桐島颯が優勝するだろう。





キーンコーン、カーンコーン



「はいみんなおはよう。ほらほら、もう席に着きなさい」



時間が経つにつれて賑やかになっていく教室内に始業のチャイムと同時に現れた教師のひと言で、生徒達は談笑を中断して自分の席へと戻っていき、いつもと変わらない1日が始まった。



ーーーーー


ーーー




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