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エンディング・ワード  作者: セカンド
CASE.2 【 宿命 】
6/14

通学、朝練、戯言。





チュンチュン、チュンチュン。



ピピピピピッ、ピピピッーーー。



『ん〜、もう朝ぁ…』



カーテンの隙間から朝日が射し込み、窓の外では小鳥達が楽しげに囀り、その声はまるで雅におはようの挨拶をしているようであった。


小鳥達の可愛らしい声と携帯電話のアラーム音で目を覚ました雅は、アラームを止めて 大きな伸びをしてからベッドから出た。



『・・・眠い』



普段は寝起きの良い雅だが、昨晩は寝つきが悪かったせいで珍しく今朝はまだ眠そうな顔をしていた。



しかし、時間とは残酷な物で いくら雅がまだ眠いと思っていても時計の針がゆっくりになってくれたりはしない。



「雅もそろそろ起きないと遅れちゃうわよー!朝練があるんでしょー?楓はもう行っちゃったわよー!早く降りてきてご飯食べちゃいなさーい」


『・・・はぁい』



一階から母親が大きな声で雅を呼び、雅は力のない返事をした後 渋々支度を済ませてから朝食を食べに一階へ降りた。





『いただきまぁす』



一階に降りた雅はリビングで朝食を食べながら由梨にメッセージを送ったが、いつも通り返信は無く既読にすらならなかった。



『由梨、やっぱりまだ寝てる…私も眠いのに』


朝が弱い親友に呆れながら朝食を食べる雅だが、由梨が起きていないのは想定内であった為、口では文句を言っているが特段イライラしたりはしていない。



「もうちょっと朝ゆっくりしたいなら、雅も自転車通学すればいいじゃない。部活で散々走ってるのに、わざわざ通学の時まで歩いて運動する必要ないんじゃないの?お母さんなんて近所のコンビニに行くのでさえ車がいいって思ってるのに」



『無理だよ。由梨が自転車乗れないの知ってるでしょ?私だけ自転車乗ってたら、由梨に悪いし』



「ええっ!?由梨ちゃんまだ乗れるようになってなかったの!?それなら雅の後ろに乗せてあげればいいじゃない。先生に見つからなければ大丈夫でしょ」



『お母さん…、それは校則違反じゃなくて道路交通法違反っていう立派な違法行為だよ…。ごちそうさま、じゃあ行ってくるね』



「はいはーい、行ってらっしゃい!しっかり青春してきなさいよー。たまには彼氏の1人や2人連れて来てもいいんだからねー」




母親の戯言を聞き流し、雅は家を出ると 歩いて由梨の家へと向かった。






道中で由梨にモーニングコールを掛けると、一応電話には出たのだが、


「むにゃむにゃ……起きてるよぉ〜。おサルさんがケーキでフリースローだよぉ…。えへへ〜、そんなに食べられないよぉ〜・・・むにゃむにゃ」


起きているかは怪しい感じだった。



『・・・どんな夢見てるの?そんな事より、もうすぐ着くからね』



「雅のこえだぁ〜、はぁい」



電話を切る頃には、なんとか会話が成立するようになった事で由梨が一応起きたと判断して電話を切り、そのまま由梨の家へと向かった。






「雅おはよー、今日も良い天気だねー」



『由梨おはよ。寝癖凄いけど、そのままでいいの?』



「いいよー、朝練してたらそのうち勝手に直ると思うから。よーし、今日も一日頑張ろぉ」



寝覚めは悪いが朝支度の早い由梨は雅が着く前に家の前で待っており、寝癖のついた髪の毛以外は寝起きとは思えないほど元気一杯だ。




もうすぐ10年位の付き合いになる雅と由梨は、入学してからもうすぐ2ヶ月になる学校へ向けてゆっくり歩き出した。



ーーー




ゆっくり歩いていた2人だが、それほど時間が掛かる事もなく学校へ辿り着いた。


校門はすでに開かれており、グラウンドで朝練をする生徒達の声が学校の外にまで響いている。



「よっ、ミヤビおはよ。ミヤビ達も朝練か?」



校門をくぐって部室へ向かおうとしていた雅だが、ふいに背後から肩を突かれて声を掛けられた。



『あ、颯おはよ。颯も朝練?でもサッカー部の人達はもう練習始まってるみたいだよ?』



「まだ先輩達は来てないから大丈夫。昨日スパイク持って帰ったの忘れてて取りに帰ってたんだよ」



声を掛けて来たのは桐島颯きりしまかける


雅と同じクラスの男子生徒で中学時代からの友人だ。


颯は中学の時に引っ越して来てサッカー部へと入り、高校でも引き続きサッカー部へと入部している。



「じゃあオレはそろそろ行くな、2人も頑張れよ!」


『うん、颯も頑張ってね』


「カケル君ばいばーい」





颯と別れた雅達も朝練の為 部室へと向かった。







「雅とカケル君って仲良いよねー。もしかして、好き?」


部室に着き、練習着に着替えている最中に由梨がニヤニヤしながら雅へと質問をしたが、雅は呆れた顔を由梨へ向けた。



『そんな事あるわけないでしょ。中二の時に颯が転入してきてからずっと同じクラスだったし、ずっと席も近かったから話すようになっただけだよ。まさか高校でも同じクラスになるとは思わなかったけどね』



「へぇ〜、ふぅ〜ん、ほほぉ〜。そうですか そうですか。うんうん、わたしは雅を応援してるからねっ!ライバルは多いと思うけど、頑張ってね!」



雅の話を全然理解していない由梨は、かなりズレた応援をしていた。


そんな由梨に対して、今は何を言っても無駄だと判断した雅はそそくさと着替えを済ませ、由梨を置いて体育館へと移動した。




更衣室ではワイワイとたわいもない話をしていた雅や由梨であったが、朝練が始まると雑談する暇などなく、朝食で得たエネルギーを全て消費するほどハードな練習が繰り広げられた。





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