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エンディング・ワード  作者: セカンド
CASE.2 【 宿命 】
4/14

目標、食事、家族。


楓達と別れた雅と由梨は、通い慣れた帰路をゆっくりと歩いていた。



「冴木先輩って部活の時は怖いくらい厳しいけど、部活が終わるとすっごい優しいよねぇ」



『うん。でも、部活で厳しいのはそれだけバスケに対しても部員の私達に対しても真剣に向き合ってるって事だと思うから、厳しいけど怖いとは思わないかな。厳しいけどね』



「あははっ、大事な事だから2回言ったのぉ?あっ、そういえば今日のお昼ね、わたしのクラスの男子達が冴木先輩と廊下ですれ違ったみたいでね、冴木先輩の話しで盛り上がってたんだよー。夏のプールの授業は絶対覗きに行こうなーとか言ってた!男子ってバカだなぁって思ったけど、それ以上に冴木先輩ってやっぱり異性から見ても素敵に見えるんだなぁって思って、なんかわたしが鼻高々な気分になっちゃったよぉー」



『なんで由梨が鼻高々になるのかはわからないけど、理沙先輩が素敵なのは同感だなぁ。私も理沙先輩みたいになりたいなぁ』




いつも通りふわふわした雰囲気で話す由梨の一部分にだけ同意した雅の表情は、キラキラと輝いていた。



「えー!?雅は冴木先輩みたいにはならないよー!だって、冴木先輩は綺麗系だけど雅は超絶可愛い系だもん!わたしは可愛い雅が大好きなんだよー!」



『ま、まだ私は15歳だもんっ!これから綺麗で格好良くなってくもんっ!可愛い担当は由梨だけでいいの!ほらほら、もう由梨の家に着いたよ』




キャッキャと談笑しながら歩いていた2人だが、由梨の家に到着した事で楽しい帰宅時間は終わりを迎えた。


雅達の通う高校は家から徒歩で通える範囲にある地元の高校で、雅と由梨は小学生の時からの付き合いである事から分かる通り、由梨の家の前で別れる事にはなるが雅の家もここから数分歩いた先にある。



「じゃあ雅、また明日ねー!朝練の時間になったらモーニングコールお願いねー!起きなかったら起こしに来てねー!」



『もぅ、たまには自分で起きる努力してよね』



昔から変わらないやり取りをして由梨と別れた雅は、1人で自宅へ向かって歩き出した。





前述の通り、雅と由梨は幼馴染のようなもの。


それに加え、先ほどまで一緒にいた楓も同じ小中高に通っていた為、3人でよく一緒にバスケをしたりしていた。


一方、冴木は県外から高校に通う為に引っ越して来たので、雅達とは中学までは違う学校だった。


なので、本格的に親しい付き合いが始まったのは高校に入ってから。


本格的、というのはどういう事かというと、雅達が冴木と知り合ったのは雅が高校に入ってからではなく、今から2年前だからだ。



雅が中学2年生の時、休日に由梨と2人でバスケットゴールがある馴染みの公園で遊んでいると、高校1年になった楓が高校バスケ部で仲良くなった松や祐樹と共に冴木をその公園に連れて来たのが、冴木と知り合うきっかけだった。


当時の雅から見た冴木は、まさにカッコいい女性の典型だった。


綺麗な顔立ちとスタイル、嫌味がなく気さくな話し方、楓達と混ざってバスケをしている姿、全てが格好良く見え、雅は初めて会った2年前からずっと冴木に憧れていた。


その憧れの気持ちは、高校生になってからも薄れる事はなかった。







『理沙先輩…やっぱり格好良いよなぁ。由梨は私が理沙先輩みたいにはなれないなんて言ってたけど、、、絶対なってやるんだからぁっ!』



由梨と別れた雅は 親友の放った失礼な一言を思い出し、ムッとした表情でそう呟くと もう見え始めている自宅に向かって走り出した。


声には出していないが、雅は心の中でうおぉぉぉっと叫ぶ勢いで駆け出し、家に着くとその勢いのまま玄関のドアを開けた。



バンッーーー


『ハァ、ハァ、ただいまぁっ!』


「わぁっ、ビックリしたぁ。なによ雅、走って帰って来たの?ドアはもう少しゆっくり開けなさい。ご飯もうすぐ出来るから、先にお風呂済ませちゃいなさいね」


『はぁい』



自宅に着いた雅が勢い良く玄関を開けると、丁度ドアの近くに居た母親が驚きと呆れの表情で雅を出迎えた。


母親との短いやり取りを終えた雅は、リビングへと入っていく母親を見送ると呼吸を整えて部屋に戻り、荷物を置いて浴室へと向かった。






シャァァァァッーーー・・・



『フン♪フン♪フフ〜ン♪』


冴木との一対一でモヤモヤしたり、校門での会話でスッキリしたり、帰り際の由梨の発言にムスッとさせられたり。


今日は一日で沢山感情が揺さぶられたなぁと思っていた雅だが、シャワーの心地良さのおかげでモヤっとした気分も疲れも流れ落ちていき、鼻歌を奏でながらシャワーを満喫した。



シャァァァァッーーー・・キュッ。



入浴前に母親からご飯がもうすぐ出来ると聞いていた雅は、湯には浸からずシャワーだけ浴びて早々に風呂を出た。


風呂を出た雅は化粧水やドライヤーを適当に済ませると、足早にリビングへと向かう。




『お腹空いたぁ!あっ、お父さん帰ってたんだね。おかえりなさいただきますっ』


「もぅ雅ったら、もうちょっとゆっくり食べなさい。それに今おかえりなさいと頂きますを混ぜて言ってなかった?挨拶は大切にしなさいってお母さんいつも言ってるでしょ?まったく、落ち着きがないのは誰に似たのかしらねぇ。お父さんからもたまにはキツく言ってあげて下さ……あらヤダ、ドラマ始まっちゃう!」


「あ、あぁうん。ははは…いただきます」



家に居る時の雅はどことなく普段の由梨と似た所があるのは親友の影響か、それとも母親に似たせいか。


一家の大黒柱である父親は基本的に大人しくて優しい人柄の為、家族内では大黒柱というより座布団のように尻に敷かれているのが夕飯の一幕で垣間見える。


広めのダイニングリビングでテーブルを囲む父、母、雅。


3人で談笑しながら夕飯を食べる。


ありふれた円満な家庭の食事風景。


食事をしながらする会話も、内容はどうあれ いつも笑顔が絶えずに繰り広げられており、本日も例外無くそんな夕飯だ。



『ーーーーでね、理沙先輩がパスしたんだけど、パスが速すぎて由梨ったらカットしないでしゃがんで避けちゃったんだよ!でもね、チームの子達も「うん、あれは仕方ない」みたいな感じでウンウン頷いてたの!』


ご機嫌な様子で話す内容は、今日の試合でのワンシーン。


楽しそうに話す雅を、嬉しそうな顔で眺めながら相槌を打つ母と父。


「やっぱり理沙ちゃんは凄いのねぇ。去年はエースで今年はキャプテンなのよね?じゃあ今年は男女揃って全国優勝もあるかもしれないわねぇ」


『うんっ!理沙先輩だけじゃなくて他の先輩も上手い人ばっかりだから、夏のインターハイでは絶対優勝出来るっ!私も頑張って控えメンバーには入りたいなぁ』


「ははは、雅なら控えどころか選手になれるんじゃないか?なんたって雅はーーー」



ガチャ、



部活の話で盛り上がる食卓。


その流れで父親が何かを言おうとした時、玄関のドアがガチャっと開く音がした。



ドタドタドタッーーー



玄関のドアが開く音がすると、次は廊下を走る音が聞こえ、その音は一直線に雅達の居るリビングへと向かって来ていた。



バンッーー



そして、リビングの扉が勢い良く開かれた。



扉を開けた人物はズカズカとリビング内へと足を踏み入れ、雅の真横まで来ると 目の前の椅子を引き その椅子へ ドカッと座り……



「腹減ったぁぁっ!」



と、叫んだのだった。





「もう、楓ったら。帰ったらまずはただいまでしょう!あんたがそうやって適当だから雅まで挨拶を適当にしちゃうのよ。お兄ちゃんなんだからしっかりしなさい。ほら、お父さんからもたまにはキツく言ってあげて下さ………うそっ!?来週でこのドラマ最終回なの!?犯人まったくわからないままじゃない!」



「あ、あぁうん。ははは…、楓 おかえり」



「おぅ、ただいま父さん!あ、そこの醤油取って!よっしゃ、いっただっきまぁーす」



夕飯の途中で帰って来たのは


宮川 雅の兄、宮川 楓であった。


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