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エンディング・ワード  作者: セカンド
CASE.2 【 宿命 】
12/14

相談、宿命、臆病者。



『私…の友達、の話しなんだけどね…』


「・・・友達?それが雅の悩みの種なのか?」



バスケボールをゆっくりと投げ合っていた2人だが、ボールは雅で止まった。



『うん、そう。友達の話。聞いて、くれる?』


「あぁ。アドバイスとかは出来る自信はないけど、話ならいくらでも聞いてやるよ」



これから話すのは、臆病者の偽りと真実。


話す事で全てが変わってしまうかもしれない事を恐れながら、全てが変わってしまえばいいと願う、偽り無き偽りの恋愛相談。



『私の友達にね、可愛い妹がいるお兄ちゃんが居るの』


「おぉ、俺みたいな奴だな。ははっ…っと悪い悪い。ちょっと黙っとくわ」


『いいよ、普通にしてて。お兄ちゃんの意見も聞きたいし』



当たり前のようにそんな事を言ってしまう楓にクスッと笑いながら、雅は話を続ける。



『でね、その友達がね、実の妹に恋をしちゃったんだって。しかも、結構前からずっと好きだったんだって』


「妹に恋っ!?それってlikeじゃなくてLOVEの方って事か?」



雅の相談に驚いた顔を返す楓。



『うん。ねぇ、どう思う?私は妹の立場だから、お兄ちゃんの立場の考え方がわからないんだよね』



こんな聞き方はズルい事なのだと、雅は理解していた。


こんな聞き方では後悔しか生まれない事も、理解していた。


理解していて尚、雅は聞く事をやめようとはしなかった。



『ねぇ、お兄ちゃんがもし、私の事を好きになっちゃったら、どうする?』



ここまで来て、私がお兄ちゃんを好きだって言ったらどうする、とは聞けない臆病者の雅。


そんな雅の胸中を知る由もない楓は、必死に雅の言った事を想像しようとウ〜ンと唸りながら考えていた。



「う〜ん、俺も可愛い妹がいるし、雅の事は大好きだけどなぁ。それはあくまでも妹としてって意味だしなぁ」


『うん…そう、だよね…』



楓の言葉は、雅の予想通りだった。



そう言われる事は分かっていた。


そう思われている事は知っていた。


楓が雅を妹としてしか見ていない事も、恋愛としての希望なんか元々ない事も、とっくに知っていた。


だから、望みがない事に絶望などしない。


たとえ妹ととしてだとしても、大好きだと言ってくれた事の方が嬉しかったから…。



「もし俺がその雅の友達の立場だったら、やっぱり気持ちは自分の中だけで留めておくと思う。兄妹として生まれた事を恨みながら、でも多分、感謝もするかもな…」


『・・・私も、そうかも』



結局、宿命には勝てない。


その事実に何度悩まされただろうか、何度涙を流しただろうか。


だが、楓が辿り着いた解と同じく、雅もこの忌々しい宿命に感謝もしていた。


兄妹でなければ、これほど一緒に居られなかった。話も出来なかった。心配もされなかった。


大好きだなんて、言ってもらえなかったはずだから。



「まぁそこまで好きになった相手なら、俺だったら来世では絶対に他人として生まれて、見つけ出して結ばれてやるけどなっ。気合いと執念でっ!」


『ーーーーー』



はははっと笑いながらそんな事を言い出す楓。


そんな楓を、雅は驚きと感動が入り混じったように見ていた。


それはまるで、出口の見えない暗いトンネルで光を見つけたような…そんな表情だった。





ダムッーーーー


「うおっ、いきなりどうしたんだよ?俺がバスケの天才じゃなかったら顔面キャッチで鼻血もんだったぞ?」


『えへへっ、お兄ちゃん…。ありがとっ』



突然ボールを投げ渡した雅の表情は、晴れやかになっていた。



「おっ、なんか吹っ切れたみたいだな。んじゃ帰るとするか。あー腹減った」


『うん。お兄ちゃん、自転車の後ろ乗せてねっ』


「ご機嫌だなっ!よーし、安全運転でかっ飛ばしてやるよっ」



言葉の勢いとは裏腹に、後ろに乗せた雅の安全を配慮した楓の運転はゆっくりであった。


そんな楓の優しさと、大きくて暖かな背中の温もりを感じながら、雅は最期の2人乗りを存分に堪能した。




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