表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/48

授業初日の朝

部屋に戻るとベッドが綺麗に直され、その上に畳まれた僕の学生服と本が置かれていた。。本は全部で七冊で、六冊はそれぞれ訓練の教科書で後の一冊は自由時間の施設利用についての案内だった。


今日指示がなかったのはこれでも読んで過ごせってことか?

いいけど、結構厚いな。

本は嫌いじゃないけどこの厚さで喜ぶのは直斗ぐらいだろ。


まずはページをパラパラめくって流し読みしてみる。

挿絵もついてるのか。ちゃんと教科書って感じなのにちっとも退屈にならないのはファンタジーみたいだからだろうな。

作法に土下座ってあるし。召喚された勇者には日本人が絶対いたな。

というかこれを教えた人はなんで教えたんだ?


気がつくと外から差し込む光は真っ赤に変わっていた。もう夕方だった。

こう暗いともう文字が読めないな。ちょうど夕飯はもうすぐだし今日はこのくらいにしておこう。

夕食はバイキングだったっけ?








夕食から戻ると僕の部屋はなぜか直斗達に占拠されていた。


「一応ここは僕の部屋なんだけど……」

「まあ固いことを言うな、日本にいた時と同じと思えばいいだろ」


確かにこいつらに何を言っても無駄なのは分かりきってるか。

はあ、諦めるしかないな。


十分程経つとと日室さん達や隆吾、それに黒堀君が来たので話し合いを始めた。

話し合いとか言ってもやることのほとんどは雑談だったけど。

ちゃんと決めることだけは決めた。六曜の聖、火、風、水、土、無のうち休みの聖の日には集まって練習をする。それから真ん中の水の日には最後の訓練の時間をみんなで自習にまわしてそこでも集まることにした。

それにしてもあの時間割でほとんどの授業が誰かとかぶってたのは驚いた。

途中から面倒になって鉛筆転がして決めたのに……偶然って本当にあるんだな。


「偶然ってほんとにあるんだな。俺はあみだくじで決めたのに」


隣で隆吾も同じことを思ったようで似たようなことを呟いていた。

お前もかよ、隆吾。だったら本当にすごいな。無の日なんか半分以上の授業が隆吾と同じだったし。



帰りがけにふと思い立ったように霞桜さんが言った。


「そうだ、せっかくこれから協力して行くんだから苗字じゃなくてあだ名とか名前で呼び合わない?」

「それはいい考えだな。俺のことは普通に隆吾って呼んでくれ」

「わかったよ、隆吾。私は裕子でいいからね」



隆吾が嬉しそうな顔をしていた。

きっと日室さんのことを名前で呼べるのが嬉しかったのだろう。分かりやすい奴だな。

直斗も香代もニヤついている。


絶対ばれたな。直斗も香代もこういう話は好きだからな、これからがんばれよ隆吾。





翌日


朝から鐘が鳴り響いていた。

そう言えば朝食は鐘が教えてくれるんだっけ。

僕は着替えて昨日の食堂に向かった。

流石に朝食はバイキングじゃなかったけど結構量が多かった。今日から決めた時間割に沿って本格的に訓練をはじめるらしい。

だからってそれくらい昨日話してくれればよかったのに。そしたらもう少しちゃんとした話し合いができたかもしれないのにな。


早めに来たつもりだったけど僕以外のメンバーはそろっていた。

明日からはもう少し早く来た方がよさそうだな。


「雪人、寝坊か?もう少し余裕をもって行動すべきだぞ」

「努力するよ、僕はお前みたいに早起きじゃないんだ」

「どうせいつもみたいに遅くまで起きてきたんだろ、早く寝ろってんだ」

「はいはい」


とにかく食べようとしてスプーンを持った時ちょうど王女が騎士を連れて食堂に入って来た。


「おはようございます、勇者の皆さん。説明は部屋に置いてある紙を呼んでください。それから闇の勇者の方と光の勇者の方々は食事の後こちらへ来てください。騎士が誘導します」


それだけ言うと王女は足早に食堂を去っていった。

闇の勇者って隆吾だったよな、光は会長さんだし。改めて聞くとかっこいいな、聖騎士に喜んでた僕が情けなかったみたいだ。

と言うかお王女そんなことのためだけに来たのか?時間の無駄な気がする。


「あれだけのために来たのかよ」

「急いでいるみたいだったんだよ、暇なはずないと思うんだけど……。それよりあれだけを言うために来たことの方が不思議だよ」

「どうしても必要だったとか」

「どんな理由でだよ」

「この国の王はいま寝込んでいるらしいからな、王の仕事と自分の仕事を掛け持ちしてるとじゃないか」


なんやかんやとしばらく話しているといつの間にか他のみんなは出て行っていた。

そして、ついに食堂の係の人に追い出された。

ちょっと長居しすぎたか、早く授業行かないと。



僕らは各自部屋に戻ると確かに紙が置いてあった。

ずいぶん仕事が早いな。

時間割とそれらの教室への行き方が記されていた。

まずは一時間目の魔法訓練の授業に行くか。訓練所は城下町にあるのか、じゃあ町の様子も見れそうだな。日本とどれくらい違うんだろ。


訓練場やダンジョンが城の中にあるわけもなく城下町の北側に鍛錬用の建物が集まり、反対の南側には商業施設が立ち並んでいるらしい。

南は人が多そうだな、行くときは迷わないように気を付けよう。

でも訓練所北だししばらくは関係ないか。



門の兵士があいさつをしてくれたので返しておいた。

よく考えたらこの国のあいさつの仕方すら知らなかったな。

とりあえず兵士にならって手を振ってみよう。




そうこうしているうちに魔法訓練の授業が行われる建物まで来た。

外見はローマのコロッセオのような円形だった。見た目は振るそうだけど、内装は城の中に似て整った衣装が施されていた。ホテルの装飾みたいに緻密なつくりのものもある。


「証明書を見せてください」


証明書?そんなものもらってたっけ。

そのまま突っ立っているともう一度兵士に声をかけられた。


「いつどこへ行くかが書かれた紙ですが持っていませんか」


ああ、時間割のことか。説明書きとしか言われてなかったから全然わからなかった。

それなら最初からそう言ってくれりゃあいいのに。


「これですか?」

「はい、確認しました。魔法訓練は四階です、頑張ってください」


四階か、エレベーターは……あるわけないな。しょうがない階段で行くか。


やっぱり間違いだった。運動不足にこれはつらいぞ、他の場所にならないか相談してみよう。

階段が急すぎるんだよ、これ以上疲れたらやばいって。


部屋にはもう十数名の生徒が来ていて、それぞれ配られた本を読んだり友達と談笑したりしていた。

この調子だとせいぜい三十人くらいしか来ないんだろうな。


昨日はあんまり集中して読んでなかったから内容がほとんど頭に入ってないんだな。覚えているのは属性があることと魔法はスキルがないと使えないこと、それに属性は努力でも増やせないってことくらいだな。ってこれ全部言ってたことだけだ。

折角昨日読んだのに本の内容全然頭に入ってない。時間の無駄だったか。

とにかく今はできるだけ教科書読んでおこう。


って魔法が切れて文字が読めない。ああもう、こんな時に最悪だ。


時間になるとドアを開けて誰かが入って来たので僕達は姿勢をととのえた。


さあ人生初の魔法の授業だ、どんなになるか楽しみだ。そういえば授業と聞いてワクワクしたのは小学校以来かもしれない。



黒堀の名前を苔斗から裁賀にしました。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ