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仲間

―チュンチュン


鳥の鳴き声がしてきて目が覚めた。

目を開けるとカーテンの隙間からこぼれるように日が差し込んでいた。

この世界でも鳥は早起きなのか。


「もう朝か。よく寝たな」


伸びをしながら起き上がり、ベッドから降りつつ部屋を見渡す。

大きくはないがいくつかの部屋やベランダもあり高校生に与えられる部屋としてはかなり上等な部類に入るんじゃないか。いや、それよりもマンションの一室に近いな。


時間はっとそうか時計がないんだったな。


この世界の時計は魔結晶という魔力がこもった石を電池代わりに使っているらしい。これらは魔物から簡単に手に入るそうだ。ただそれを電池代わりに使うには特殊な加工技術がいるから量産が出来ず、おいそれとは使えないらしい。だから今いる建物の玄関と食堂にしか置かれていない。


まあ昨日の疲れがなくなってるからだいぶ寝たってことだけは分かるな。

この分だと今日はいろいろできそうだな。昨日は話し合いの後スキルについて考えようとしたが頭痛がひどくてなかなか考え事に集中できなかったから今日はその分を取り返してやらないと。

昨日は部屋に案内されてそのまま布団で寝たからな。


グゥー


そう言えば腹減ったな。昨日は夕飯食べてないからいつもより腹の虫がうるさい。


枕元に置いてあった服に着替えて部屋の外に出た。

時間はちょうどよかったみたいで他の部屋から出てきた生徒が下に降りていくところだった。

そちらに付いて行こうとしたところで後ろから直軌に呼び止められた。


「雪人、昨日はどうしたんだ?夕飯はお前の好きなローストビーフみたいな肉料理も出てうまかったぞ。もちろんお前の分は僕が食べておいたが」

「なんで起こしに来てくれなかったんだ。歓迎の宴会とはきいてたけどそんなに美味しそうな食事が出るなんて」

「ああ、でも昨日は参加している人が少なくて宴会は延期になったぞ」

「本当か!じゃあ今日は食べられるかもしれないんだな、早く行こう。食堂はどっちだ?」

「下降りて右に行ったところだ。僕は香代と行くから席取っておいてくれ」


朝ご飯のメニューもおいしいといいな。

あそこが食堂だな。


人の波は下の階に降りるとすぐの部屋の中に続いていた。


バイキング形式化。ご飯に味噌汁、卵焼き……和食のメニューがそろってるってことはこれまでの勇者召喚で現れた中に日本人がいたな、絶対に。


部屋の手前には長テーブルに見たことあるような料理や全く知らない料理が所狭しと並べられていた。

好きなもの集めてもいいんだけどここはいつも通りバランスよく選ぶか。

主食はご飯にしてあとは適当にとればいいか。

席は結構空いてるな人が多いとか思ったけど意外とここにきてる人少ないのか?


席でしばらく待っていると直軌が香代と隆吾、それに日室さんと霞桜さんが一緒に食堂に来た。

思ったより遅かったな。お腹のすいた状態で待たされた僕のことも考えてくれると嬉しいんだけど。


日室さんと霞桜さんが香代と一緒にいるのはよくあることだけど、隆吾たちとまでいっしょなのは珍しいな。たまたま部屋が隣だったりしたのか?

まあ関係はおいおい分かるだろうから今はいいや。それよりもお腹すいたし。


そろそろ全員が食べ終わるというころ直軌が思い出したようにポケットから折りたたんだ紙とシャーペンを取り出した。


「雪人、お前昨日夕食に出なかったからもらっといたぞ。この紙に訓練の時間割を書いて提出だと。科目はこっちの紙にあるから日室達とでも考えて明日までにあっちの騎士に渡してこい。あいつらもまだ書いてないらしいから」

「訓練の時間割ってあの時間割?」

「まあその紙見ればだいたいのことは分かる」


日室さん達がいたのは僕への配慮か、ありがたいんだけど視線が痛い。

反対側で隆吾が泣きそうな顔をしていたが僕は何も見ていないことにした。

隆吾は昨日元気そうだったから多分夕食にも出てこの紙はとっくに書き上げたんだろう。


悪いな、隆吾。僕も一人でやる方が寂しくていやだ。

まずは渡された紙を確認するか。


一枚には五×五のマス目とそれぞれの行と列に時間と曜日らしきものが書かれていた。これぞ時間割って感じだな。もう一枚には全部で七つある訓練の説明と必要な数が書かれていた。

それによると、


戦闘訓練  戦闘技術を騎士から教わる 武器の扱い

魔法訓練  魔法技術を魔法氏から教わる 魔法の使い方、理論

魔物訓練  魔物の生態について学ぶ  危険性や見分けなど

薬学訓練  薬草について学ぶ  効能を教わったり毒草と見分けたり

作法訓練  作法について学ぶ  目上の者や王などに謁見するのに必須

実地訓練  実際にダンジョンへもぐり習ったことの実践を行う

自己練習  自分で復習する時間  訓練施設を借りられる


注:ダンジョンは魔物が生まれてくる場所、気を付けないと大変な目に遭います


 とのことだ。注意書きまでしてくれているのはありがたいけど、この下の消した跡は何があったんだろうすごく気になる。

まあそれは置いておくとしてこれは職業によって必要な訓練の数が変わってくるみたいだな。全員必須で最初の六つを五日間で二つずつはいれなくてはいけないのか。

すると残りの十三回は好きなように選べってことか。

まあ作法は二回で十分だろ、それから……


「やっぱり榊原君も作法はいらないって思うんだ。あたしもね、昨日考えた時に最初にそれ消したよ」


突然前から声がして驚いた。見ると霞桜さん達もすでに食器を片付け、日室さんは僕と同じように紙を見て頭に手を当てていた。

霞桜は昨日のうちに書き終えたのか、すごいな。なんであんなに疲れてまだ動く余裕があったんだ。不思議だ、僕なんかベッドに倒れ込んだら服を着替える気さえ起きなかったのに。


「だってこんなの必要ないだろ、偉くならなきゃいいんだから」

「そう思うよね、ところがどっこい何とここには一般常識も含まれるらしいんだよ。だからおとなしく全部もう二回づつ選んでおいた方がいいよ」


そういうことか、危うく常識があんまりない状態で町に出るとこだった。

しかしそれくらい直斗が教えてくれてもいい気がするんだけど。


「分かった、そうする」

「ありがと祐ちゃん」


日室さんも作法を消していたのか、やっぱりみんな考えることは同じだな。

僕はこっそり頰を緩めた。


「それと昨日北岡君決めたんだけど、休みになってる曜日に集まろう。宿題とかは出ないみたいだから」

「いいけど、なんでそんなことするんだ?」

「えっと、七人いれば練習場を貸し切れるらしいんだ。だから仲間を集めて貸し切ろうってことになって。今もう四人は決まってるから二人を入れたらあと一人だけなんだ。」

「でも裕ちゃん、具体的には何をする予定なの?」


日室さんも気になるようでそう尋ねた。


「詳しいことは決まってないけど、主に武器の扱いとか魔法とか勉強とか?」

「いいと思うぞ。確かにその方が楽しそうだから」

「私も行きたいな。ほら、一人は寂しいからね」


多分発案者は直斗だ。あいつは昔から他人が苦手だから仲間で集まろうとするからな。まあかくいう僕もそこまで社交的じゃないから人のことは言えないんだけどね。


「ねえ、それ僕も入っちゃダメかな?あと一人必要なんでしょ」

「えっと君は……」


どっかで見たことがある顔だけど、思い出せない。

喉まで出かかってるんだけど。


「僕は黒堀裁賀。一応同じクラスだったんだけど、覚えられてないみたいだね」


そうそう、昨日小部屋に集められた中にいたっけ。昨日と違って今日は長髪を結んでなかったから分かんなかった。


「いや、ダメだったらいいんだけど。実は僕は四月に引っ越してきたばかりで、まだこの学校に友達がいないんだ。それに君たち昨日あの部屋にいたでしょ。隠し事は少ないほうが気が楽だから……ダメか?」

「もちろんいいよ。これから一緒に頑張ろう」


霞桜さんが即答でオーケーしてしまった。

そう言えば日室さんが転校してきた時の最初の友達は霞桜さんだっけか。隆吾が言ってたから覚えちゃった。

その頃からこんな感じなんだったんだな。


「僕も賛成。誰かといた方が楽しいし」

「ならいいね。北岡君には私から言っておくから今日の夕食後榊原君の部屋に来て」

「分かった、じゃあまた夕食後に」


黒堀君はそう言ってから席を離れていった。

さてと、時間割作らなきゃ。


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