王国
僕は茶色の紙を直斗に渡しながら言った。
「直斗、これどう思う?」
「まるでゲームだな。このレベルとかスキルってあたりからすごくそんな気がする」
「確かに、それで僕はこんな感じだけど直斗のステータスは?」
「それが知りたかったんだろ。ほら、こんなだよ」
僕が茶色の紙を渡すと直斗も僕に渡してきた。
名前 :北岡 直斗
種族 :人間
レベル:1
職業 :賢者
体力 :150
魔力 :250
筋力 :15
防御 :10
敏捷 :20
魔攻 :50
精神力:50
スキル:火魔法 練度0 第0等位
水魔法 練度0 第第0等
風魔法 練度0 第0等位
土魔法 練度0 第0等位
無魔法 練度0 第0等位
聖魔法 練度0 第0等位
光魔法 練度0 第0等位
闇魔法 練度0 第0等位
ユニークスキル:記憶の(ライ)図書館
隼の(スの)目
賢者か、なるほどすごくぴったりだな。頭いいし、このまま山奥とかに引きこもって魔法の研究とか始めそうだな。
昔から将来は山の中で暮らしてやると言っていたから職業はその人の望む姿をあらわすって本当のことみたいだ。まあそのために必要そうなスキルはほとんどなさそうだけど。それにしても羨ましい、何で二つもユニークスキルがあるんだ。僕はわからないわけわかんないやつが一つだけなのに。
「なあ雪人、お前の――」
「直くん、私はこんな感じだったよ」
喋ろうとした直斗は横から香代に紙を見せられて口をつぐんだ。
僕は直斗の後ろに回り香代のステータスを見てみた。
名前 :朝川 香代
種族 :人間
レベル:1
職業 :魔拳士
体力 :300
魔力 :80
筋力 :45
防御 :10
敏捷 :45
魔攻 :30
精神力:50
スキル:格闘術 練度3000 三ケ月蹴り 真空波 一点破壊
魔拳 練度0
身体強化 練度0
ユニークスキル:確の正拳
光陰の歩み
さすが空手道場の娘、ぴったりの職業だな。でもこれだと攻撃をもらったらすぐに倒れそうだな。それに空手の練習は格闘術に含まれているみたいで僕らの中で一人だけ練度が埋まってる。にしてもこの後ろに書いてある技は絶対空手の技じゃないよな。多分この世界の技なんだろうな。
「香代はぴったりの職業だな」
「うん、自分でもそう思った。あれ?何で雪人のユニークスキルには何も書いてないの?」
いつのまにか僕が持っていたはずの紙は香代の手に収まっていた。
おい、いつ盗ったんだよ。
「へー、空欄に見えるんだ。僕には秘匿中って書いてあるように見えるんだけど」
横から手を伸ばして取り返そうとしたが、香代は体の向きを変えて僕の手が届かない位置に持っていった。
「そうなんだ」
「分かったらそれ返してくれない」
「秘匿中ね、なんだか気になるけどまあいいや。それより僕らの職業はみんな戦闘向きだな」
「うん。これなら多分城に行った方がいいんじゃない?」
確かにパーティなら結構バランスいいかも。
そういや隆吾はどうしたんだ、驚きの連続ですっかり忘れてたけどあの光に包まれたとき近くにいたはずなのに。
「なあ隆吾を見てないか。巻き込まれたときは近くにいたはずだけど」
「そう言えば見てないけど巻き込まれてるのは確かだからどっかにいるでしょ」
「それにあいつは多分戦闘関係の職業だろうから城に行けばあえるだろう」
「それもそうか。確かに心配しなくていいかも」
生徒たちがしゃべっている中、二人の生徒は王女に近づいていき話をしていた。
またあの二人か。相変わらず偉いな、どうやったらそんなに使命感を持てるんだろうか。まあ、あいつらに任せておけばあとは安心できるからいっか。
しばらくすると二人は話し合いを終えたのか、こちらを向くと話し始めた。
「みんなちょっといいか。生徒会の空山蒼二だ」
「学級委員会の日室涼奈よ。私たち2人からみんなに提案があるから聞いてちょうだい」
彼らは学校で直斗とともにテストで毎回上位を争っている。もちろん本人達にその気は無いみたいだけど、彼らに違いがあるとすれば直斗よりも協調性があり人当たりが良いことだな。
まあその違いがこういう時は大きいんだけど……
ちなみに日室涼奈と名のった少女はうちの学級委員の日室涼火の妹だったりする。姉妹揃って学級委員とか頭が下がるばかりで。
「僕の職業は光の勇者だった。だから僕は戦闘向きなので城に行こうと思う」
「私は会計士だった方戦いには参加せずに城の外に行くわ」
「みんなもステータスやジョブを参考にどちらが良いか決めてくれ。決まったら城に行くものは僕の周りに、外へ行くものは日室さんの周りに集まってくれ」
聞き終えると半分くらいの生徒は次々と立ち上がって移動し始めた。
僕達も行くか、僕達は戦闘向きだから城の方だな。
「じゃあ行こうか。お、隆吾か」
「雪人、お前も城組にしたのか意外だな」
意外ってまあ戦いは嫌いだけどみんながいるしこっちの方がいいんだよ。
「城組って城に行くグループのことか?」
「おう、言いやすいだろ。ところで俺は闇の勇者だったけど、お前はどうだった」
「僕は聖騎士だった、でも何かユニークスキルが秘匿中ってなってんだよ」
「なんだそれ、何が書いてあるか分からないのか。へー、面白そうだな」
職業に勇者ってつくこともあるのか。僕達は召喚された勇者らしいけどどんな違いがあるんだろう。
「そう言えば隆吾はどこにいたんだ。僕と直斗たちは一緒だったけど」
「ああ、部活の奴らんとこだ。召喚されてすぐ目が覚めて直斗が起きそうだったからほかのやつのとこに行ったんだ」
そういや隆吾は完全に運動系の人間で、野球部に入ってるんだったな。
全然接点ないから忘れてた。
しばらく話していると周りが騒がしくなってきた。見るとさっきまで立っていた場所にはもう誰もいるなくなっていた。
みんなもう決めたのか。早いな
。
「では城へ行くものは私の周りに、そうでないものはしばらくお待ちください」
そう言うと王女は手袋を取った。そして右手を上に差し出すと、手にはまった指輪が見えた。僕ら城が言われた通りに王女の周りに集まると騎士たちが円を作って僕等を取り囲んだ。王女が何か小さく呟くと、指輪が赤い光を放ちまたしても僕らは光に包まれた。
すると叫んだりする暇もなく視界が暗転した。
気がつくと床と壁は黒から白に変わり、左右に大きな柱が立っていた。足元には赤い絨毯が引かれ、天井には見たことのない古ぼけた絵が飾られていた。誰かが黒く大きい何かに剣を持って挑んでるようだった。ほかの場所にも絵はあるようだがここからでは遠くて見えない。
そして何より目立つのは、後ろにある扉の目の前に笑顔で並んで立っている白い服の人々だろう。
「ここは王宮の中にあるケプラス教の神殿です。本来であれば勇者の方々には王からあいさつがあるところですが現在は体調を崩しておりまして、先にここで行ってもらうことのために転移させていただきました」
変なところだなと思っていたがまさか神殿だったとは、言われてみればこの柱とかギリシャのナントカ神殿に似てるし、白服も修道服っぽいところがあるな。
「ここではスキルと職業の確認をしますからこちらの方に言って下さい。その後は教会の方が城内の各人の部屋まで案内してくれますのでそちらの案内に従って下さい。ここまでに何か質問はありますか?」
「あの、僕のユニークスキルは秘匿中ってなってるんですけど」
空山が手を挙げて言った。
よかった、1人じゃなかったのか。僕だけかと思って心配してたんだよ。
それを見た王女は何かに驚いたような顔をすると後ろを向き白服たちと話し始めてしまった。
なんか問題でもあったのか?
一体この秘匿中というのにはどんな意味があるんだ。悪いものじゃなきゃいいけど、あの様子からして普通じゃないみたいだから若干心配なんだよね。これのせいで城を追い出されたりしないかとか、あと……。うん、これは考え出したらきりがないからやめておこう、
「分かりました、ユニークスキルが秘匿中となっている方は部屋に行く前に神殿のものか騎士言って下さい。それではまたあとで」
そう言うと王女は数名の騎士を引き連れて扉から出て行ってしまった。
今回は2話連続投稿です。よかったら後ろも読んでみてください。