炎の槍
この回を掲載し忘れていました。
話がつながらなかったと思います、すいませんでした。
壁から火が吹いたと思うと、次の瞬間消し飛んだ。生み出された衝撃波が僕と周りの魔物達を吹き飛ばす。
「またやりすぎたかな」
「蒼二さんはまだ制御が甘いところがありますね。もう少し力を抜くつもりでいいですよ。型はきれいなので力が抜ければもっと上手になります」
壁を壊して入ってきたのは先に行った会長達のパーティと鎧姿の王女だった。
王女は何でこんなとこに……いや、それよりなんでここに会長達もいるんだ。ここは道から外れてる。
会長は手に赤く光る炎を出している槍を持っていた。いや、炎が槍にまとわりついているというほうが正しいのかもしれない。どちらにせよ会長の手に収まっている槍は燃えていたが、不思議と槍も会長も焼けてなくなる気配はみじんも感じられなかった。
多分この槍が壁を壊した力の正体だ。
「成る程、力を抜くようにね。分かった……こうか?」
そう言うと会長は手に持った槍をふるった。すると僕とともに飛ばされた魔物達が一掃された。しかも起用に僕の体には火傷の1つもなかった。
あの中には僕の槍じゃあ倒せなかった熊もいたのにその全部を同じように一撃なんてなんて力だ。もう近衛騎士団長にすら匹敵するくらいの力があるんじゃないか。
しかも火はまだ消えずに他の魔物に移っては数秒で灰にしていた。つまり副次効果である火にさえ巨大な力が宿ってるってことか。
僕達がその力の強さに圧倒されて何も言えないでいると、ふと気がついたかのように会長は顔を上げて僕達に聞いてきた。
「あれ?君達なんでこんなところにいるんだ。ここは正規ルートじゃなかったはずだけど……まさかその少年を痛めつけていたのか。それならばさっさと開放しろ、その少年には手当てが必要そうだ」
言われてみれば確かに1人の傷ついた少年と数人の武器を持った人ならそう見えるか。さっきの爆風で吹き飛ばされるまでなら守るように囲ってたんだけど吹き飛ばされてバラバラにされちゃったからな。
「おい、少しは考えてものを言え。考える頭はあるだろう、僕達はこいつを助けようとしたら部屋に入ったら罠にかかったんだ。信用できないって言うなら外にいる光川達が証言してくれるはずだ、聞いてみろ」
残った魔物が近づこうとして来るのに対して武器を構えて牽制する僕らの後ろで直軌は魔力を練りながらそう言った。
口喧嘩と魔法の用意の2つを同時にこなすなんて相変わらず器用だな。
会長は完全に信用した様子ではなかったが、あとで聞けという言葉に納得したのか小さく頷くと手に持った槍を一振りした。その動作が生み出した炎と衝撃波は僕達に向かってきていた残りの魔物も一振りで切り伏せた。それだけではなく会長は部屋に所せまいしと浮かんだ魔法陣へも攻撃を加え、陣を乱して機能を失わせていった。
程なくして魔物の群れは全滅し、なおかつ魔法陣もすべて破壊されて黒く金属質だった壁や床はもう見る影もないくらいボロボロとなった部屋にすっかり変わっていた。会長も槍を使うのはとても体力や魔力を使っていたと思ったが平然として立っていた。僕達はまだ意識の戻らない少年の手の代わりにその場に残ってくれるという会長のパーティの1人にその場はお願いして入ってきた穴から外へ出た。壊したはずの穴は僕達の戦闘中に塞がれたようでその場所を開けるにはおなじように壁に手を入れるしかなかった。
会長の仲間を置き去りにしていいのかと聞くと数人は残ってもう少し訓練をしていくそうだ。迷宮ならいくら壊しても勝手に直してくれるから修行に便利なんだとか。
穴から外へ出ると涼火と光川のパーティメンバーが待っていた。
「この人であってる?」
「はい。ありがとうございました、ありがとうございました」
「僕からも礼を言うよ、仲間を救ってくれてありがとう」
僕らは意識を失った彼を見た御守さんは再び泣き出してしまった。光川も代表などとは以前に大切な仲間を思う心があったようで。
なにはともあれこれで一件落着かな。あとは5層まで上がって帰って帰るだけだ。
他のメンバーが喜んでいる中、霧立さんだけは相変わらずこの前のようにイラついたような顔をしていた。仲間が無事に帰ってきたというのに何か気に食わないことでもあるんだろうか。
だが他のメンバーは気にかけている様子はなかたから多分これが当たり前の光景なんだろう。傍から見ると1人だけ温度差が激しいとか言うレベルの話じゃないんだけど。
僕達はもうパーティにとらわれずそれぞれ気が合いそうな仲間たちと談笑していた。
その時、さっきと同じようにしていて壁が火を噴き壁が消しこんだ。爆風が収まると穴から会長と王女が出てきた。
練習に行くんじゃなかったのか?迷宮は確実に絶好の訓練場だと思うのだけど。
会長達は壁から出てくるとそのまま直軌たちのもとへ歩いて行った。
「どうして君達はあんな場所に入ったんだ。僕らが来なかったら死んでいたぞ。安全のためにわざわざ騎士が道を警備してくれていると言うのに」
「ああ、分かってる。今回のことで自分の力不足は身にしみている。次からは自分たちの安全を優先する」
「僕も反省しています。利益を求めたせいで失敗して危うく友達を失うところだったんだ。これからはもっと慎重になるよ」
会長の問いに直軌と光川がそう返した。
確かにこの世界では日本にいた時よりずっと命の重さが軽くなっている。冒険に出れば簡単に人は死ぬし、普通に暮らしていても薬草を取りに町の外に魔物に襲われて死ぬことだってある。
僕はそのことを自分に言い聞かせた。
そうでもしないと今日のような出来事には冷静に対処できなくなってしまう。
そして僕らは慎重に探索を再開した。5層に用事があるという王女も連れ、光川達とは既定の道に入ったところで分かれた。僕は分かれた道を進むと下に降りる階段を見つけた。そこにはこれまでとは違い冒険者ではなく騎士が数人立っていた。
そのうち一人が僕たちを見るとこちらへ向かってきた。
「王女よ、時間ですので城に戻りましょう。それとこの方達は……」
「クーフリアですか。お迎えご苦労様です、会長さん達はもう少し修行してから帰るそうですので私はこちらの方達に連れてきていただきました」
「そうですか。王女を送っていただきありがとうございました」
近衛騎士はそう言うと僕らに頭を下げてから王女を守りように騎士を王女の周りに配置するとその形を維持したまま3層への階段がある方へと進んでいった。多分あのまま城にまでかえるんだろう。
5階に降りるとすぐ目の前に十字路があった。
今までは降りると広い部屋だったので見通しが良かったけどこれじゃ何かが出て来ても全然分からない。
地図によると僕たちはここは右に進むらしいのです道なりにしばらく歩いてみた。実際最初の十字路以外で4階と大きく違うところはなく探索はスムーズに進んだ。もちろん魔物は弱かった。
そして1時間も進むと僕達は目的地となっている部屋までたどり着いた。
しかし待っていたのは騎士団の副団長……ではなく上にいたはずの軍曹だった。
「よくやったな第3パーティ。これでお前たちも迷宮で探索ができるようになるぞ。この石を持って入り口のところにいる騎士たちに見せろ」
そう言うと軍曹は腰に下げた袋から出発前に僕らに見せた石を取り出して直軌に手渡した。それを受け取った僕らは元来た道を少し急いで戻った。行きではあのモンスターハウス以外に目立った怪我はなかったので少しきつめにしようという算段だった。
もちろん迷宮を出たいと思う気持ちと軍曹から離れたいと言う気持ちが合わさったことも大きかったけど。
途中の十字路で1,2度奇襲を受けて少し怪我をしたが数時間すれば来てるぞ。
さて残りも元気に突破して訓練の結果を見るのに役立ってもらおう。