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07話 あの世の新聞

 


 新聞の一面を見た瞬間、噴き出した。


『号外!!3段死神ナトリ氏、申請を下ろさずに拘魔印を使い一級死神に降格!!』


 大きな見出しとともに、見覚えのある顔が一面に載っている。

 そう、俺とジョニーを迎えに来たあの死神だ。


 あれ、本当は違反だったのか!?


『なおナトリ氏は、“犬と飼い主があまりにも似ていたため、魂を取り違えそうになり、一旦冷静になるための時間が欲しかった。悪気はなかった”などとし、容疑を認めています。


 これに対して死神協会は、“飼い主のほうがペットに似ることもある”と、死神免許の剥奪でなく降格という形で今回の事件を収め、特別厳しい処罰は下しませんでした。


 この一件により、24人しかいない三段以上の称号を持つ上級死神、伽藍がらんが23人となりました。実力は五段以上とも謳われるナトリ氏が、今回失ってしまった信頼をどのように取り戻していくのか気になるところです。今後の彼の活躍に注目していきましょう。』


 いやいやいやいや、この言い分が通るのかよ!!

 雑にもほどがあんだろ!!

 百歩譲って俺とジョニーの顔が似てたとして、犬と人間をどうやって間違えるっていうんだよ!!


 後半になるにつれて聞いたことのない言葉も増えてきたし、気に掛かる箇所もたくさんあるのだが、前半の衝撃が強すぎて正直あまり頭に入ってこなかった。


 あの死神が今回処罰を受けてしまっているのは、ほとんど、というか完全に俺のせいだ。

 突っ込みどころは満載だが、こちらに非があるのは確かなのであれこれ思わずに心の中で謝罪しよう。


 本当に申し訳ありませんでした。


『また昨晩、またもや死亡者名簿のすり替え事件がが起こり、死亡する予定のなかった17歳少年の魂をこちらの世に導いてしまうという問題が発生しました。


 今回生じたブラッドは、事故で亡くなる予定だった22歳の女性の寿命を40年、病死が決定していた12歳の少年の寿命を20年引き上げることで埋め合わせすることが決定致しました。


 7000年間起こることのなかった死亡者名簿の悪用が、ここ数年で今回含め2件発生してしまいました。死神協会はこの問題に対してどのように対処していくのでしょうか。』


 え、何だこれ。明らかにこっちの方がさっきの記事より重大事件だろ。

 大見出し一面を飾るべきはこの記事だろ。


 極楽新聞というから緩い記事が掲載されているのかと思っていたが、そうでもないらしい。次々と出てくる見知らぬ単語に混乱してしまいそうだ。ブラッドってなんだよ。


 というか、誤って死亡した17歳少年って、まさか俺じゃないよな?


 一瞬よぎった考えにすぐに首を振った。


 それはないそれはない。それは被害妄想激しすぎだ気持ち悪いぞ自分。恥ずかしすぎる思考回路だ。

 大体、地球上に17歳少年が何人いると思ってんだ。ピンポイントで俺がどうにかなるわけがない。


 ともかく次の記事だ。


 気まずい気持ちを紛らわすようにページをめくった。


 他の記事も見ていくと、自殺だとか大量殺人だとか人の命に関わる情報が中心的で、やはりというかすべての記事にあのブラッドという言葉が載っていた。


 ーー何だこれ。


 新聞の中盤辺りに差し掛かったところで手を止めた。


 驚いたことに、芸能記事やスポーツ記事など現世とさして変わらないようなコーナーがずらりと掲載されている。


 へえ、凄いな。アイドルとかいるんだ。


【今週の音楽ランキング】


 1位 魂ロック魂


 2位 あの世の真ん中で転生を叫ぶ


 3位 私は守護霊



 ...ウケる。


 ふむふむと時間をかけて読み耽っていると、とうとう最後のページに辿り着いてしまった。


『今月の黄泉の国イベント!!』


 大きな見出しででかでかトラストを飾っているのはこんな記事。


「黄泉の国、イベント...?」


『現世では暑い夏の季節!!と、いうことで、そんな彼らに負けないよう、今月の黄泉の国イベントは白熱するバトルロイヤル、トライアスロン大会です!!


 走って漕いで泳ぐの三拍子!疲れないから関係ない!

 楽しい夏は暑い勝負で乗り切ろう!


 今回は大会の規模もあり、優勝者には転生する権利を与えちゃいます!!


 日時は三日後丑の刻、場所は三途の川!


 沢山の参加お待ちしております!!』


 イベントか...。


 たまには良いかもしれない。きつそうだけど。

 せっかくの天国での生活だ。めいいっぱい活動的になって充実させてやる。


 でも転生はしたくないなあ。生きてた頃の記憶を失ってしまうと思うとかなり嫌だ。


 まあそう簡単に優勝出来るものでもないだろし、気楽に行こう。


 こうして俺は大会に出場することを決意した。









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