11話 干し柿美味しい
気が付いた時には太陽が高くまで昇っていた。
「まぶしっ・・・」
いつのまにか寝てしまっていたらしい。昨日のことが嘘のように体が軽くなっていた。
でも、嘘じゃないんだよな。
割れたラムネ瓶と乾いた血だまりがそれを物語っている。
それとーーー。
あの少年からもらったこの小包。昨晩は開封することなく意識を飛ばしてしまったが、一体何が入っているんだろう。
そっと紐を解いてみると、中からは懐かしいものが出てきた。
「干し柿だ」
中に入っていたのは、干し柿三つ。なんというか、久しぶりな感じがする。
市場でもいくつか見かけていたのだが、天国のものを食べても空腹が満たされないことを学んでいたため、なるべく食べ物からは目を背けるようにしてきたからだ。
これを食べて空腹が改善されるかどうかは分からないが、せっかくのご厚意だし甘えることにしよう。
「頂きます」
手を合わせて口に運ぶ。瞬間、口の中いっぱいに砂糖の甘みが広がった。
旨い。干し柿ってこんなにおいしかったんだ。
何度も食べたことはあったはずなのに、今まで食べたどの干し柿よりも美味しく感じた。胃の中に物が入ってくるのが分かる。五臓六腑に染み渡るぜ。
うまいうまいといっていると、あっという間に一つ目を食べ終わってしまった。
そこで気が付いた。
・・・空腹が収まってる。
流石に干し柿一つで満腹になったわけではないが、昨日までよりもかなりマシになっていた。
他の食べ物と何か違うものが入っていたりするのだろうか。
ともかく助かった。
残りの二つは非常時用に取っておこう。
我慢できるところまでは我慢だ。
もう無駄なことは一切しない。下手なことをして瀕死になるような事態は避けるんだ。
目安は明後日の黄泉の国イベント、それまでは全力で天国を楽しむことにしよう。
改めて周囲を見渡すと、昨日居た町の他にも遠くにいくつかの集落が見えた。
時間もあることだし、遠出してみるか。レッツエンジョイ!
・・・そう思ったのだが。
出発して三時間、別の町に着いたは良いものの、結構疲れた。
完璧に忘れていた。俺、疲れるんだった。
生きていた頃は三時間も歩いたら疲れることなんて当たり前だったのに、ここに来たら自分がとてつもなく不利な体質のように思えてくる。
本当に優勝出来るんだろうか、黄泉の国イベント。
というか、どのくらいの人が参加するんだろう。
ともかく遊び惚けている場合じゃない、明後日までは体力を温存することに専念しよう。
もう一度三途の川付近の町に戻り、宿屋を借りることにした。完全なる無駄足だ。
ーーーまあいいか。食事は仕方ないとしても、ふかふかの毛布と温かいお風呂があれば3日間くらいは何とかなるだろう。暇はけん玉か何かをして紛らわそう。
元の町に戻って雰囲気の良さげな宿を借り引きこもる。
そうこうしているうちに、あっという間に黄泉の国イベント当日になってしまった。




