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第三十八話 覚悟を決めた女は強いんですよ~

こんばんわ。

―――――静香side―――――


「晃君…………」

 私は王城の一室でただ一人静かに瞑想していました。

 


 私は幼馴染である晃君のことが昔からずっと好きでした。

 初めて彼と出会ったのは小学3年生の頃だったでしょうか。

 お父さんの仕事の都合でこっちに引っ越してきたらしいのです。

  

 当時の私は極度の人見知りで、学校に行くことすらままならないお子様でした

 だから彼が内にあいさつに来ても、私は彼と出会うことはありませんでした。

 

 そして彼がこちらに来てから約半年くらいたった頃。

 なんとなく窓を開けて空を見ていると、聞きなれない、男の子特有のアルトボイスを私の耳が拾いました。

「やっと顔が見れた」

 

 その時の彼はとてもきれいな笑顔でした。

「あ、え、あの、その、私は……………」

「久美咲さんのおうちの娘さんだよね。初めまして。僕の名前は海崎晃って言います。気軽に晃って呼んでください!」

「あ、あの、私、く、久美先、静香って言います…………」

「わかった。よろしくね静香!」


 今思えば、この時にすでに私は、彼に恋をしていたのだと思います。

 この時を境に、私は彼と一緒に学校に行くようになりました。

 中学も、高校も、彼がいたから私は頑張ることができました。

 言ってしまえば、私は彼のおかげで今の私がいるのだと思います。

 

 まあ、晃君に直接それを言ったら

「僕は何もしてないよ。静香が頑張ったから今の静香がいるんだよ」

 と、恥ずかし気に答えていました。


 それはともかくとして、私は晃君がいれば、それだけでもう幸せでした。


 だからなのでしょうか。

 異世界召喚という異例の事態が起きた時も、彼さえいれば何とかやっていけそうだと思ったのは。

 そのせいなのでしょうか。

 この世界を、現実ではなく単なるゲームだと思い始めてしまったのは。

 

 あの日、晃君がクラスメイトの悪意によって故意的にダンジョンの大穴に落とされた時、私は自分が自分じゃなくなるような感覚を覚えました。

 私が四人のクラスメイトを無慈悲に殺す様を、どこか遠くから見つめるような、そんな感覚に陥りました。

 その時からでしょうか。生き物を殺すことに対して忌避感を感じなくなってしまったのは。


 私の心の中に、ぽっかりと大きな穴が開いてしまったような気がするのです。

 ただ彼が傍に居ないだけで、こんなにもさみしくなってしまうなんて。

 ほかの皆さんは”もう諦めろ”とか”助かるわけがない”などと言っていますが、私はそうは思いません。

 私には彼が死んだことなどひとかけらも思いませんでした。


 なぜか、私には彼がまだ生きてこの世界にいると、半ば確信しています。

 なら私は今度こそ彼を守れるように、強くならなければならないと考えました。

 その日から団長さんに頼んで冒険者ギルドに登録させてもらい、来る日も来る日も魔物を狩り続けました。

 幸い、そう考えていたのは私だけではなかったようで、晃君の親友である海城君や南海ちゃんも同じように力をつけていきました。

 私も彼らも、授かった力の恩恵は大きいようで、冒険者ギルドでもかなり上位に食い込むことができました。


 今では冒険者の皆さんともすっかり仲良くなりました。

 そうして、晃君の情報を探しながら冒険者として仕事をしていると、南海ちゃんの部屋に呼ばれました。

 私が部屋の中に入ると、晃君を除いたいつものメンバーがそこにいて、でもやはり足りないと感じながら南海ちゃんの話を聞きました。


「もしかした近日、戦争になるかもしれない」

 彼女の話は、到底信じられるものではありませんでした。

 ですが、こういう時の南海ちゃんは絶対に冗談を言わないので、事実なのでしょう。

 なぜ戦争の話を知っているのかを聞いたら、

「ギルドマスターをおど……頼んで聞いたんだ」

「お前今絶対に脅してって言おうとしただろ」

「そ、そんなわけねぇよ!」


 とりあえず、この戦争には勇者として呼ばれた私たちにも飛び火するだろうということなので、私たちは皇王様に直談判し、この国の幹部の皆様と話し合いをしました。

 私は当初私たちは戦争に参加しないことを表明するだけなのだと思っていましたが、どうしたことが南海ちゃんが戦争に参加するというのです。

 理由としては確かに納得できるものだったのですが、果たして彼らは納得してくれるのでしょうか。

 

 そう考えていると、南海ちゃんは心配するな、布石はもうすでに打ってある。というので、とりあえず私は南海ちゃんに全て任せてみることにしました。

 するとあら不思議。誰からの指図も受けず一人身勝手なことで有名な近藤君が南海ちゃんと一緒にいるではありませんか。

 

 いったいどうやったのかを聞くと

「ああ、ちょっとした弱みを掴んだのさ」

 とかなりいい笑顔で言っていました。正直怖いです。

 さて、次はこの国の騎士団長にお話をしに行くそうです。

 

 なんとか騎士団長にも私たちが戦争に参加する旨と、私たち勇者のみで作った班と騎士団の皆さんの中に入れてもらえる人たちの話をし終わったところで、それは起きました。


 この国を囲む壁の更に向こうから、大量の魔力を感じたのです。

 真っ先に反応したのは南海ちゃんでした。

 南海ちゃんと海城君のおかげで、何とかこの国への攻撃は防ぐことはできましたが、それでもまだ油断はできません。


 私にもできることがないかを考えていると

「静香、少し相談がある」

「なぁに? 南海ちゃん」

「説得を手伝ってほしいんだ」

「説得って、だれを?」

「咲のことだ」


「! でも彼女は今……」

「今あいつがつらい思いをしているのはわかってる。でもそれを理由にして放っておいたら、本当に取り返しのつかないことになってもおかしくない。だから頼む!」

 ここまで真剣に誰かに頼みごとをする南海ちゃんは初めて見ました。


「わかった。何とか説得してみるね」

 親友の頼みです。何とかして見せましょう



「ギャルアアアアアアアッッ!!」

「うるせぇよ死ね」

 刀を一閃、オークは血の海に沈んだ。


 依頼主と少年たちを引き連れて、俺たちは今オークの集落でオークたちと戦っている。

「倒しても倒してもキリがんはいな……あいつらは大丈夫かっと!」

 子供たちの方を向こうとすれば間髪入れずにほかのオークがこちらに攻撃を仕掛けてくる。

 まだ親玉も出てくる様子もないし、どうしようか。


 ふと、巨大な魔力を感知し、その方向に向けて全てが記されし禁書(アカシックレコード)を使う。

 …………これは、防御魔法か? それにしては規模がデカすぎるし、それに何より気になるのが、この方向がちょうど皇国なんだよな。もうすでに戦争が始まってたりしてないだろうな。


 俺は心の内に湧き上がる不安を押し殺し、群がってくるオークを全てすれ違いざまに切り伏せていく。

 

「ああもうめんどくさい! まとめて()る!」

 リーナの怒声が聞こえる。まずい、あのキレ方、本気でシャレになんねぇ……!

「ガキども! 俺の近くに来い!」

 この指示に何の躊躇もなく従ってくれる子供たち。こういう時素直で助かったと本気で思う。

「いいか? しっかりと気張っとけよ。じゃねぇとすぐに持ってかれちまうからな!」

 子供たちがどういう意味だと聞いてくるのを黙殺し、防御魔法を展開する。


 俺が防御魔法を張るのと、リーナが魔法を使うのは同時だった。


「穿て、【ミーティア・レイン】ッ!!」

 

 【ミーティア・レイン】

 文字通り、流星の雨である。

 本来ならば一つの隕石を落とすだけで終わるのだが、そこは下級神。一つではなく20個くらいの隕石がこの集落に向かって降ってくる。

 幸いにして防御魔法に衝撃緩和や熱吸収などを付与しておいたお蔭でこちら側に被害はないが、オークたちからすればひとたまりもないだろう。

 

 これにはさすがの引きこもりの親玉も出て来ざるえなかったのだろう。のっしのっしとこちらに向かって歩いてくる。

 正直こちらに来るのを待っている義理はないので、一撃で滅ぼす。

 いくらキングオークと言っても所詮は魔物。俺たちの敵ではない。

 

「全員ケガはないな?」

「はい、私も子どもたちも大丈夫です」

 依頼主がみんなを代表して答える。

 依頼主の言う通り、見たところ酷いケガはなく、自分たちでも対処可能な傷ばかりなので、放っておいても大丈夫だろう。

 

「そうか。ならこのまま皇国に向かおうと思うんだが、お前たちはどうする」

 言外にこのまま引き返した方が身のためだぞ、と言っているのがわかっているのだろう。真剣な顔つきでこちらを見つめ返す子供たち。

 …………これなら付いて来ても大丈夫そうだな。


「よし、ならこのまま出発する。今向こうは戦争中だ。間違っても流れ弾とかで死ぬんじゃねぇぞ?」


 俺はしっかりとくぎを打ってから、皇国に向けて出発した。

女性視点の描写って意外と難しいですよね。何かアドバイスくれるとうれしいです。

余談ですが、この小説の2章が終わり次第、新しい小説を投稿しようと思っています。

こちらを2話投稿して新しいのを1話投稿するという形でこれからやっていきますので、ご理解のほどよろしくお願いします。

まあ、2章終わるまでなのでまだまだ先の話ですけど。

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