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第三十六話 目覚めが悪いとなんか嫌なので手伝います

お久しぶりです!

 出発してから1日経った。

 あれからいろいろと難癖をつけてきたガキどもも俺がオハナシ(物理)をしたら大人しくなった。

 リーダー役であったのだろう少年はことあるごとに俺に話しかけてくる。

 それも文句や嫌味といったものではなく、自ら野営の準備をするだとか見張りを引き受けるだとか積極的に貢献しようとする。


 別にそれ自体が悪いことではないのだが、積極的に動こうとするせいで逆に空回りしている感が否めない。まあ見てて微笑ましいというのが正直な感想ではあるが。

 

 さて、ここまでの話はさておくとして、今絶体絶命のピンチに陥っている。

 正確には俺たちではなく子供たちが、だが。

 

 遡ること1時間前、これでは時間がかかりすぎるということで少々危険ではるものの魔物の森に入ることにした。

 依頼主の話では魔物の森を通ればかなりの時間短縮になるそうで、少々危険ではあるものの、魔物の森を通ることにした。

 その際、少年たちがこういった。

「ヒカルさんに何かしてもらう必要はありません」

「いや、そうは言うが流石に非効率……」

「いえいえ! ヒカルさんとリーナさんの手を煩わせる必要はありません!」

「いや、でも…………」

「大丈夫ですから!」

 

 あまりにもグイグイとくるので、結局俺は彼らに任せることにした。

 まあ、あまり俺たちだけが狩り続けるのもダメなので、ちょうどよかったのかもしれない。

 

 そして現在に至る、というわけだ。


「ったく、こうなるなら最初から手を貸してやればよかった………。

「そんなことより、助けてあげる」

 リーナが心配そうに子供たちの方を見る。

 つられて俺もそちらに視線を向ける。


 現在少年たちは6体のオークに囲まれている。

 オークは食える魔物として有名であり、単体ではそこまで強い魔物ではないのだが、基本的に群れで行動するので、集団先頭に慣れていないと逆にこっちがやられてしまう。

 少年たちはなんとか態勢を保ちながらも、ジリジリと後ろに後退していく。


 ふむ、そろそろ手助けしたほうがいいな。

「お前ら、少ししゃがめ」

 少年たちの返事を待たずに、俺は腰に据えている雪雫を引き抜いてオークに向かって特攻する。

 少年たちは俺が突然こちらに来たことに驚いているが、俺の指示通り瞬時にしゃがんでいる。


 俺はそれを尻目に、オークたちの中心に辿りついたと同時に円を描くように一回転してオークの首を斬り飛ばした。

 少年たちは自分たちが苦戦したオークたちを一瞬で片した俺のことを驚愕の表情で見る。

 まあ、確かに自分も同じ立場なら同じことをするんだろうけど、正直に言ってめっちゃ恥ずかしいな。

 

 俺は羞恥心を心のうちにとどめ、何もなかったかのように馬車に戻る。

「お疲れ様」

「対して苦労するほどでもなかったがな。それより―――――」

 俺は依頼主のほうを向く。

「アンタに聞きたいんだが、オークってのはこんなところにまで出没するのか?」

 

 俺の言いたいことが分かったのだろう、依頼主も正直に答えてくれる。

 …………まあ、正直に答えなかったら無理やりにでも吐かせてたんだけど。


「君が思っている通り、オークはこんなところでは出現しない。ここで出るのは基本的にホーンラビットやスライム。時たまにゴブリンやゴーストが現れるくらいだ」

 やはりか。

 ここにくるまでほかの魔物に出会わなかったのは、オークがこの辺の魔物をすべて食い散らかしたからということに他ならない。

 となれば、必然的にここら辺にオークの集落地のようなものがあるということになる。

 

 どうするか。

「依頼主さん、あんたはどうすべきだと思う?」

 依頼主は少しばかり考えるそぶりを見せた後、意を決したように言う。

 

「ここでオークの集落地を放置すれば大変な騒ぎになるだろう。できるだけつぶしておきたいと思うのだが、かまわないだろうか?」

 こちらとしては早めに皇都に着いておきたいというのが本音だが、まだ1日程度だとはいえ世話になった街が壊されるのも目覚めが悪い。

 リーナのほうを見ると、いつにも増してやる気を出している。最近動いてないからね。体を動かしたいんだね。

 

 少年たちのほうはどうなのだろうかとそちらを見るが、少年たちは既にオークの討伐をする気満々らしい。

 ……………仕方ないか。

「わかった。だが条件としてここからは俺が指揮をする。俺の指示には絶対に従ってもらう。異論はないな?」

 俺の言葉に誰も異論をはさむことはなく、俺たちはオークの集落を目指して森の中を進むのであった。



「団長、各隊の準備が完了しました。いつでも出発できます」

「よし、では十分後、ベルネルト要塞に移動するよう伝えろ」

「はっ!」


 グリンデル皇国、国防軍中央会議室。

 そこで、皇国騎士団団長―――――アルトニー・バルザップは部下に指示を出しながら、気づかれないよう小さくため息をつく。

 アルトニーが気にかけているのは、先日この国に召喚された勇者たちのことである。

 彼らは召喚されてまだ2週間程度しかたっていないのにもかかわらず戦争に参加するという。

 それも、国から強制的に駆り出されるのではなく、自ら志願して戦争に出るといっているのである。

 

 まだ彼らは16,7歳とまだまだ若い。

 聞けば勇者たちが来た世界は今や戦争などしていない、平和な世界から来たというではないか。

 そんな、悪いい方をすれば平和ボケした子供たちが、いったいなぜ自ら戦争に出るなどと言いだしたのか。

 アルトニーにはそれがわからない。

 アルトニー自身、家柄上幼いころから戦うために育てられたため、あまりそういったことは気にすることはなかったのだが、彼らに関してはどうしても疑問を持ってしまう。何故―――――と。


 思考の海に沈もうとしていると、ドアがノックされていることに遅まきながらに気付く。

「入れ!」

「失礼します! 団長殿、勇者たちがぜひとも挨拶に伺いたいと申しておりましたので、連れてきてまいりました!」

 アルトニーは入ってきた部下の後ろにいる気配を感じ、許可を出す。

「わかった。勇者たちの方は俺に任せろ」

 それを聞き届けた部下はきびきびと部屋から出ていき、残ったのはアルトニーと10人の勇者たちだった。

 

「それで? 勇者様たちが俺にいったいなんのようだ?」

 アルトニーの質問に、勇者のうちの一人の女子生徒が前に出た。

「単刀直入に言います。今回の戦争、俺たち自身だけで動けるよう計らってもらえませんか?」

「……………なぜ?」


「私たちは今までぬるま湯のような環境でしか戦ってきませんでした。そのせいでほかのクラスメイトは堕落し、今では戦闘すらしようとしていません。それでは魔王を倒すなんて夢のまた夢です。ですから、彼らを強制的に戦闘に参加させ、自分たちの立場をわからせるためです」

 なるほど、とアルトニーは納得する。

 確かに最近、一部を除いて勇者たちの態度が傲慢になってきたと報告が上がってきた。

 つまりこれは、首の輪を締め直すために必要なことなのだろう。

 

 だがしかし、それをまだ少年少女と言った若い彼らに任せてもいいことなのだろうか。

 そんなアルトニーの葛藤を見抜いたかのような表情を少女は浮かべ、微笑を湛えながらこう言う。

「安心してください。別に彼らを死にに生かせるわけではありませんし、自分たちの実力を理解しているつもりです。無理だと思ったらすぐに引き返しますので、どうか許可していただきたいと思います」


 アルトニーは若干の不安を覚えながらも、やがて彼らの提案を許可するのだった。

投稿はしていますが見直しはまだ終わっていません。なので次の投稿にももう少し時間がかかると思います。気長に待ってくれれば幸いです。

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