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第十九話 勘違いです

「久しぶりね。ティリーナ・アルベルト」


 私を封印した神、【生命神アルフィリーナ】。


 以前私が使えていた神であり、自分の我儘で私をあのような場所に封印した、理不尽の塊。

「…………いったい何のつもり」

 私は警戒心を強めながら質問した。

 私の様子を見たアルフィリーナは、「はぁ……」と言ってため息をついた。

「あなたはまだわかってないの?」


「…………なにが?」

「私があんなことをしてまであなたを封印した理由」

「?」

 私には、あの人が何を言っているのかわらない。


「本当にわからないの?」

 私は無言でうなずく。

 するとアルフィリーナは再びため息をついて、テーブルと椅子を用意し、こちらに視線を送る。

 ………………座れということだろうか?


 私は警戒心を解かずに、ゆっくりと席に着いた。

 私がちゃんと席に着いたのを確認してから、彼女は口を開いた。

「今からあなたを封印した理由を言うから、ちゃんと聞きなさい」

 最初に断りを入れてから、彼女は話し始めた。


「まず、あなたは天界と呼ばれる、天使だけが住んでいる世界に生まれた。

 天使にも位があり、産まれた天使は全員ただの『天使』だった。もちろんあなたも例外ではなかった。

 ただ、あなたの場合、他の天使と圧倒的に違う部分があった。何かわかる?」

 アルフィリーナの問いに、私はしばし考え、考えられる答えを口にした。


「持って生まれた力……?」

「正解よ。あなたが持って生まれた力は、天使の範疇に納まるレベルじゃなかった。それこそ、【八柱神】とまともに戦えるほどに。

 でも、天使にはそんな力は必要ない。様子見ということで、あなたの天使の位を熾天使にまで上げてはいたけれど、天使だって成長する。当然、あなたの異常性なんて数年でばれたわ。

 そして、力を持った天使を味方につけることができれば、自分が神の座に……みたいな馬鹿な考えをする奴が現れ始めた。どこにでもこういうクズは存在するのね」

 

 アルフィリーナは少し悲しげな表情を見せた後、話を続ける。

「最初は神自身の手で神罰を与えて数を減らしていたんだけど、それよりも馬鹿なことを考える奴の方が多くてね。これは元凶の方をどうにかしないといけないと思って考え付いたのが―――――」

「―――――私を封印すること」


 私の言葉に、その通り、とアルフィリーナは頷いた。

 つまり、彼女の言葉を信じるのであれば、私が封印されたのは、そこにいる神の我儘でもなんでもなく、自分自身のためだった、とでもいうのだろうか。

 そうであるならば、滑稽な話だ。

 

 封印されはずの天使が再び蘇り、堕ちたとはいえ熾天使に返り咲いたのだから。


「封印した後は、あなたを蝕んでいた鎖の力を一年周期で強化して、完全に天使の力を消滅させるはずだったのよ」

 でも、と続ける。

「あなたは彼に出会った。おそらく目覚めれば極神なんて目じゃないくらいに強い神の候補と」

 

 アルフィリーナの言っている彼とは、恐らくヒカルのことだろう。

 だが、今のヒカルでは目の前にいる生命神にも勝てないだろう。

 なにせ【八柱神】の上位に位置する【四帝神】のナンバー2の実力者なのだ。


「確かに今の彼じゃ私はおろか【八柱神】とやってギリギリ勝てるか程度ね。でも、それはまだ彼が目覚めていない状態の話よ」

「つまり、ヒカルはもっと強くなる?」

「まあ、概ねその通りよ。でも今は彼の話じゃなくて、あなたの話をしましょう」

 

 そこでいったん言葉を区切り、いつの間にか出現していたティーカップに手を伸ばす。

 つられて私もティーカップを手に取った。

 その場を沈黙が襲う。

 やがてアルフィリーナが沈黙を破った。


「あなた、自分のステータスを確認した?」

 彼女の問いに、私は首を縦に振る。

「自分が堕熾天使になったことは知っているのね。じゃあ、あなたがすでに神の一員になっていることは自覚している?」

「?」


 私は首を傾げた。

 たしかにステータスには堕熾天使と書かれていたし、称号にも神の領域に踏み込みし者みたいなものもあったけれど、神には至っていなかったはずだ。

 いったいどうなっているのだろうか。


「確かにステータスの表示は堕熾天使となっているけど、あなたはクリスタルの光を浴びているの。直接触れていなくても、近くにいた者には何かしらの影響があって当然なのよね」

 クリスタルとは確か、神の力が凝縮された結晶だったはず。

 あの時確かに私も光を浴びた。

 だが、それだけで神になるのだろうか。


「普通はならないわ。でも、彼を含めてだけどあなたたちは普通じゃない。本来なら存在しえないはずの種族になったりしているし、今更でもないでしょう」

 言われてみればその通りである。

「神になったといっても、あくまでそれは力の片鱗が現れたという程度。だから、あなたにはこの神界で神になるよう修行してもらうわ」


 突然のアルフィリーナの申し出に、リーナは目をぱちくりとさせる。

「その間に、ヒカルは……………どうしているの?」

「彼もあなたと同じ。神の力を完全に目覚めさせるようね。だからこそあなたも、彼の隣に立つために神になる必要があるのよ」

 

 アルフィリーナの言葉に納得した私は気合を入れる。


 私もヒカルに頼られるように、強くなる。

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