63話 稽古
この数日間は地獄のような特訓が続いている。筋トレのハードさといったら、たまったものではない。腕立て伏せをいきなり片手で100回、腹筋を100回じょうたいおこしをそれぞれ100回とアスリート並みの要求をされるのだ。
まともに身体を鍛えていないせいかあちこちで筋肉痛が起きている。今は稽古の真っ最中であるが、
「まだまだ! 詰めが甘いぞ。腹ががら空きになっている!」
いくら本物のけんでないとはいえ突きを喰らったら痛いのは痛い。なんだか喉に込み上げきたが必死で抑えた。とっさになってはらのほうへと木製の剣を傾けてはみたが時すでに遅しで、
「いってぇぇぇ!」
叫ばずには居られない。そしてそのまま膝をついてしまった。ユベルはすぐさま、剣の矛先を俺の顔の方へと突き立てた。
「痛いのは当たり前だ。 さてまだまだ続けるつもりでいるから早くたちな」
ユベルは本当に容赦がない。手加減というのを知らないでいる。俺は腹を抱えながらも力を振り絞って立ち上がる。
「うぉぉ!たぁはぁ」
正統派の攻撃ではゆべるのけんさばきには遠く及ばない。おれはマニュアルを捨てて独自のスタイルを極めていくことにした。
「迷いがなくなったな。けんすじが綺麗になっている」
片手で軽々捌いているユベルはぽつりと呟いた。どうやら俺のやり方はあっていたらしい。このまま前へでて押し切ってやる。カンカンと打ち合いにまでもつれ込み、ユベルは一瞬ではあったがかすかに左足がよろけるのがみえた。俺はそれをみのがさなかった。
「今だ!」
ユベルは反応に少し遅れる。そして俺は剣を弾き返した。
「や、やったぞ」
飛ばされた剣はクルクルと弧を描き、地面へと突き刺さる。表情一つ変えないユベルは少し不気味ではあったが、おれのかちではなかろうか
「よくやったな。最後の君は私を上回っていたとおもうよ」
「それじゃあ!」
「よし稽古はここまでにして次からは実践編にうつろうか」




