46話 怪しい男
「はい、なんでしょうか?」
返答に応じるのは俺で、セリナはシナを見ながらポカンとしており状況を把握できていない様子だ。
「二斗さんでいらっしゃいますかな。わたくしエグルと申す者です」
「は、はぁ.......」
知らないな初めて聞く名前だし俺の名前を知っているのもどこか不気味さを感じる。
黒い帽子を深く被っている男は声から察するにおじさんくらいだろう。
「エグルさんは俺に用件があるのですか?」
出なければ話しかけて来ないだろうという憶測に基づいて尋ねる。
「率直に申し上げますと、貴方は私達にとって邪魔なのですよ。早々に消えていただきたく伺った次第であります」
「どういうことだ!」
男は半歩距離を取ってから話を始める。
「セリナ王女が1人でいる時を狙い襲う予定でありましたが、セイント軍や貴方のお陰でそれができなくなったそういうことです」
「あんたの狙いはセリナか。それならなおさら、従うわけにはいかない」
俺は敵意をむき出しにした犬のごとく噛み付くかのように声を荒げる。
「おうおうこれは。怖い。何も今すぐとは言いません。いずれ必ず殺しにきますので。以後お見知りおきを」
苦笑を浮かべた男はそういい残すと街の人影へと姿を消した。
「なんだったんだろうねあの人」
セリナはシナを食べながら首をかしげている。おつかいを頼まれたのに食べるのはまずいいですよ。王女さん。
「セリナたち食いするのはお行儀が悪いんじゃないか」
「そうね。おいしそうだったからつい.......」
こういう天然な所が俺は好きでもあるんだが。
「帰ろうか」
「うん」
時間が過ぎるのが早く感じる。好きな人と一緒に過ごす感覚を始めて味わった気がした。朝から王宮を出て、気づいてみれば陽は落ちている。こんな日がずっと続けばいいなと思う。
◇ ◇ ◇
「父上帰ってまいりました」
王様は門の前で帰りを待っていたらしく、少々気が立っているようにも伺える。
「二斗よぉ。早く帰るようにといわんかったかのぉ」
「申し訳御座いません。エグルというものに話しかけられまして時間が掛かりました。王様はこの男に心辺りはございますでしょうか」
「エグル......昔王宮の地下訓練所で見かけた事があったような」
「セリナは覚えていないのか」
「ごめんなさい。人数が多いものだから忘れてしまっていたみたいだわ」
地下での訓練を経て街に繰りだされたか。
「今日は夜遅いし寝ましょう」
王様に一礼をして、自室へと向かう。
エグルは一体何者なんだ。そういえば奴の腕には鳳凰の紋章が見当たらなかった。なぜなんだ。




