44話 アルバイト未経験
俺は基本的にクエストが無い日は王宮に住みつくようになっていた。半分ニートみたいな状況だ。セリナのお陰で王様のお咎めなしでいれているが、申し訳ないなやっぱり。手伝いをしようにも使用人が何十人もいるから全部やってくれるという、アフターケアまでついている。正に極楽空間であるためますますなだめ人間になってしまう。
セリナは俺の記録を毎日日記に書いている。これが仕事のうちである。というより本来の目的は俺の監視だから当然のことだろう。
リストは、セリナと同じ部屋でいちゃこらしている。女同士だから気を使わなくていいしいままで一人でやってきたものだから、さびしかったんだろうな。
よし決めた。王様に提案してこよう。俺は自分の部屋を出ると、使用人に挨拶をして王様がいる扉の前まで行く。
「王様、無礼なお願いだと承知で伺います!」
髭を蓄えたマルベス国王は髭の先端部分をモフモフさせながら。
「なんだ。もうしてみよ」
「俺、ここで手伝えることないかと考えておりまして。もし良ければ働かせて頂けないでしょうか」
王様は目をクリクリさせながら驚いている。
「意外じゃったのでなぁ。そんな素振りも見せていなかったからのぉ」
そぶりもなにも今ついさっき思いついた事だから。
「よーし採用じゃ。それじゃあ。一番厄介な風呂掃除を頼んだぞぉ」
「はい!お任せください国王様」
俺の初仕事は風呂掃除に決定した。驚くなよこう見えて家事スキルは全フリもしくはステータスは振り切っているからな。
◇ ◇ ◇
俺は使用人に風呂掃除の説明をしてもらっている。使用人の名前は、メリーだそうだ。ウエイトレス姿で、髪はコッペパンのような茶色でポニーテールだ。
「分かりましたか、二斗さん」
「うん。なんとなくだけど」
「早速お願いいたしますね」
階段の前で別れると俺は風呂場へと向かう。
「まずはブラシで擦るんだったな」
毛先が黒い珍しいデッキプラシを持ってひたすら擦る。鉱石は磨けば磨くほど光を増すんだっけか。ピカピカにしてやるぜ。次はガラスにとりかかるか。
「水分を拭き取ってから、紙で仕上げだ」
「二斗いるのかしら?」
扉腰に聞こえてきたセリナの声。
「ああ」
「ちょっとお邪魔するわね」
これはお約束的展開が遂に俺にもきたのか。バスタオル姿のセリナが来て、顔を赤らめながら去っていくのは想像できた。後はそれが現実になるかどうかだ。
「メリーに頼まれて様子を見に来たんだけどちゃんとやってる?」
「おうよ。セリナの目の前でサボるわけないだろう」
「やっぱり、さぼっていたんじゃないの」
怒ってらっしゃる。余計な事を口に出してしまった。
「違うんだセリナ。言葉のあやってやつなんだよ」
俺は必死に弁解に入る。セリナは中には入らず扉を開けたところからは動いてはいない。
「口よりも手を動かしなさい!」
「は、はい!」
こうなったら誰にも止められない。よし仕事に集中しよう。床は終わって窓を拭いて、ガラスも。家の風呂場とは桁違いの大きさだ。例えるなら、旅館の大浴場並みだな。
「ふぅ~終わった」
終わるまでに掛かった時間はおよそ5時間。休憩なしのはさすがに身体が堪える。腰がやられていて、ぎっくり腰を起こしそうになっている。
セリナはさすがにいなくなっていた。まぁそうだよな。扉を開けて風呂場を後にする。
「あ......」
扉の近くの壁で座って寝ているセリナがいた。寝顔は子犬っぽくてかわいらしい表情をしている。
「こんなとこにいると風引いちゃうぞ」
「うーん」
目を閉じたり開けたりしている。どうやら寝ぼけているみたいだ。
「起きろよ」
「んあ。寝てしまったみたいね」
「待っていてくれたんだとしたらありがとう。それだけが言いたかった」
「どういたしまして」
微笑む彼女を見ておれも思わず頬が緩む。




