41話 解放
あいつの剣は細剣だ。リーチは俺の剣より長い。視界が悪いが、このまま外に出るわけにもいかん。なによりセリナとリストを置いて逃げる事は出来ない。
リストは俯いたまま動いていない。時折獣耳がピクピクとしているが、無意識に起こっているのだろう。
セリナは俯いたまま動かない。けれど俺と彼女は今心で通じ合って会話が出来ている。どんな能力を使ったかは定かでは無いが俺の目を覚ましてくれて感謝している。
「どうした!威勢が良い割には行動が伴って居ないぞ。口だけは達者の様だなぁ!」
シュナイダーは、唾をも飛ばす勢いで拍車を掛けてくる。これが奴の本性ってのか。イケメンの姿にすっかり騙されていた。やはり外見では判断出来ないとはよく言ったものだ。
散々言った後スッと黒い空間へと姿を消した。キグナスの能力に似ている。瞬間移動と呼ばれる類いのだろう。
俺は辺りを見渡す。彼の姿はどこにも見あたらない。どこに隠れやがった。
(二斗後ろ!)
セリナの咄嗟の判断でかわすことができた。少し腕に切り傷を負っただけで済んだ。腕がヒリヒリしてやがる。片腕は麻痺して使い物にならないか。ただ、厄介な敵である事に違いは無い。
俺は剣を振るい、相手と距離を取る。落ち着いてここは一旦深呼吸だ。
(どうすれば良い?)
俺は心の中でセリナと会話する。不思議な感覚だ。聞こえてくる声にはなんとも言い表せないもやがかるのが少し気がかりだったりする。
(私が指示を出すわ!あなたはその通りに動きなさい)
(助かる)
「良くも避けられたね二斗。次はそうは行かないよ」
あいつの行動パターンは多分ツーパターン。
瞬間移動してからの突きもしくは、特攻してくるか。よし。俺は目をゆっくりと閉じる。奴に隙を合えてみせて叩くとしようか。
風の吹き抜ける音。心臓の鼓動が聞こえる。不思議と落ち着いていられる。剣を真っ直ぐに持ち構えて精神を統一させる。
「マヌケが!ここらで終わりにさせてもらう!」
それは、どうだろうな。
(後ろ!)
ナイスだセリナ。
「はぁっ!」
俺の剣は、シュナイダーの身体を真っ二つに切り落とした。
「クソォ!なぜ分かった!」
倒れ際に放った言葉だった。足から胴体へと倒れこむように床に散らばった。
「俺には仲間がいた。それが俺とお前の勝敗を分けるきっかけだった」
シュナイダーは見るも無惨な姿になっていた。内臓は飛び出しており、床には血が這う様に流れている。手が時折震えている。条件反射だろうか。俺は人を殺めてしまったんだ。唐突に気持ちが悪くなり吐き気が抑えられない。
「おええ」
ゲロを吐いたのは、小学生ぶりの事もあり、口の中が、異臭で満たされて気分が悪い。
「二斗大丈夫なの!」
そうだ。縄を解いてやらないと。のこりの力を振り絞って、木剣で縄を切る。
「二斗やん!」
「二斗!」
2人の声が聞こえてはいるが、だんだんと視界が真っ暗になりその場で倒れこんだ。その後の事は記憶が無い。
◇ ◇ ◇
見慣れない壁に、天井。ふかふかのベッドに横たわっていた。扉越しになんだかいい匂いが漂ってきている。木の椅子が二つに、海が描かれている絵画・ざっと見つけられたものはこの程度なものだ。
「目が覚めたようね」
開かれた扉から、姿を現す。
第一声を発したのはセリナだった。黒のワンピースを着ており、いつぞやなの買い物で買ってきたのだろうか。
俺は状況を飲み込めないため頭を抱え、目を閉じる。ここはおそらく誰かの家であるはず。グランド王国の王宮見たく派手な作りはしていないし、セイント軍の基地は在り得ないとして、導き出される答えは!
「そうか、分かったぞ!リストの家だな」
俺は目を輝かせて自信満々に言い放つ。それを聞いた彼女はクスクスと小さく笑みを溢し、
「二斗。はずれよ。ここは私の別荘なの。いや正確に言うとね父上の別荘よ」
あーなるほど。王宮があるのにどうして必要なのかいまいちピンときていない。お金持ちの考えることは一般庶民には理解しがたいぞ。もうひとつ疑問が生じる。
「ここはスカヌハか?というか、あの後俺はどうなった?」
リストの姿も見当たらないし、聞きたい事は山のように出てくる。
「もう!そんなに一度に聞かれても答えられるわけ無いでしょう。聖徳太子じゃないんだから」
彼女の口から歴史上の人物が出てくる事に驚いたのと、腰に手を当てて怒ってる姿に心臓がドキッとしましたよ、ええ。
「少しテンパリ過ぎていたよ。ここまでの経緯について教えてもらえるか」
彼女は何もいわず歩き始め、ベットに座る。
「長くなるから座って話すわ」
「......ああ」
俺が顔を赤らめた事は言うまでもない。こんなに近くで彼女の見るのは初めての事だ。にしても透き通るような銀髪に蒼い色の目。いつみても美しい。
「んーと確か。二斗がいきなり吐いて倒れてしまって。それの処理をしてから父上と連絡を取って別荘を使わせてもらって。こんな感じかしら」
少し間があったあと。
「二斗をおぶったのは私なんだからね」
彼女は顔を赤らめながらこういった。
「あ、ありがと」
「フンッ。お礼は素直に受け取っておくわ」
ツンデレだな本当に。




