32話 付き合いは大事
「くそぉ。またやれた」
頭を抱えてしゃがみ込む。それを尻目に彼女たちは何食わぬ顔でほったらかしにされる。はたからみたら目を瞑り突っ立っている俺達は違和感があるに違いない。
「二斗ったら弱すぎてお話にならないわね。あなた自分の力量を過信しすぎではないのかしら。少しは自覚したらどうなの。あなたは弱いのよ」
彼女は鼻で笑ってみせる。
「にいやんは生き返るまで観戦しててね。」
リストは指を指してお腹を抱えながら笑っている。俺はこれで10戦10敗。さすがにやる気を削がれてしまう。
2対1の対戦。分が悪すぎて勝てたものではない。こいつら言いたい放題いいやがって。ちょっとゲームが得意だからってけなしすぎだろ。
今、俺達は地下でモンスター討伐の訓練をしている。それでモンスター討伐に飽きたので対人戦をやっていた所だった。今更と思うかもしれないが王様の頼みと合っては断れる訳もないのであって。話は数時間前と遡る......
◇ ◇ ◇
「よーし。集まってくれて感謝する。実はな地下室にあったゲームが訓練者たちの中で評判が悪くてな。そこで急遽エンジニアの方達に協力してもらってよりリアルな戦闘体験が出来るのを開発してもらったんじゃ」
俺はあの役に立たないゲームの事かと納得する。
「そこで、テスターをしてほしいのじゃが。どうかね?」
死ぬ事のリスクを回避は出来るしオマケに戦闘経験も詰めると来た。やらない手はないだろう。
「王様。俺はやりますよ」
右手を挙げて意思表示する俺。
「二斗がやるなら私も」
「私も暇だしやろっかな」
セリナとリストは続くようにして答える。こうして王様の頼みを聞く事に。
◇ ◇ ◇
地下室はやはり薄暗い。たいまつが照らしてくれるのは部屋の広さのみ。だが前に見たゴテゴテシタゲーム機自体はもう存在していなかった。あるのは魔方陣が描かれたシートのみ。
「早速頼んだぞ」
王様は地下室を後にする。セリナはうろうろとして。
「ここに立てばいいのかしら?」
彼女はおそるおそる中へと入る。
「なにこれすごいわね」
彼女は一人で感心している。
「なにがなんだ?」
「みえないのこの広大な草原が」
俺らからしたら一人ではしゃいでいる変な人にしか見えない。セリナは目を瞑りそこから動いては居ない。
「にいやんもはやくきなよ」
リストはもう魔方陣の中へと入っていた。
「わけわかんないよ」
目の前にある魔法陣の中へと足を進める。
「おお!」
なにもなかったはずの部屋が一気に草原へと変わっていく。
「街の外の景色に似ている」
そう思ったのはおれだけではなっかたようで。
「リストちゃんモンスター倒しに行くわよ」
「あい」
二人は黒色のスライムをめったざしにしている。
武器も自分の持っているのと同じか。どうやら能力は自分のステータスでプレイできるようになっているらしい。随分と本格的に作っているんだな。
「俺も混ぜろー」
二人の敵に割って参加する。黒スライムは分裂したかと思うとクルリと向きを変えて飛び掛ってくる。
「同じ手は食わんぞ」
あの時は吸い込まれてスライムの体内で窒息死しそうだった。考えるだけでも恐ろしい。透明の力を使って、敵の急所である目を貫く。
「どうだ!」
スライムが「ぴぎゃあ」と声を立てて消えていく。みんなのレベルアップ音が聞こえる。ゲームでもレベル上がらない仕様なのか。しょげそうな自分を奮い立たせ次のモンスターを討伐する。100体ぐらいはとうばつしただろうか。レウニスにジグザス、モンサーとまぁいろいろいたもんだ。
◇ ◇ ◇
「どうじゃったかのう?」
王様は仕事が一段落したのか地下室へと降りてきた。はぁとため息が聞こえてくる。
「いいですね。実際の外に居るモンスターと相違ないですし。それに痛みは感じないように設定できますので初心者でも気兼ねなくできる」
作った人は天才だよ。全く。
「ほうほう。よく分析ができおるのぉ。テスターに最適な人材だったようだのぉ」
髭をいじりながら上機嫌に微笑んで見せる。
「リストとセリナもご苦労じゃった。今日はこの辺でやめておこうかのぉ」
王様の機嫌取りに成功した俺達は地下室から明るい王宮へと戻っていく。
「寝るか」
「そうね」
「にいやん。おやすみ~」
リストは欠伸を我慢しながら言う。
◇ ◇ ◇
そこには知っている顔触れがいた。
「王様、ご報告いたします。現在グランド王国で此れと言った不祥事は起きておりません」
黒いコートに身を包んでいる彼は膝を着き淡白な口調で答える。
「キグナスじゃないか」
驚きのあまり話に割って入る俺。
「二斗。少し黙っていてくれないか」
そこには睨み付ける様に見ているキグナスがいた。
「悪い」
「キグナスよのぉ。少しは落ち着けよのぉ。わかった。では引き続き街の監視を頼むぞ」
「は。この命に代えてまで街をお守りする。それが私の使命」
そういった彼は、王室を立ち去っていく。
「待てよ。キグナス」
彼は止まる事はない。
「君には今私を必要としていないだろう」
「いあ、助けてもらったお礼を言ってなかったからな。ありがとう」
「そんなことか」
そう呟いて、振り向く事も無く階段を下りていく。
「二斗。キグナスに嫌われたの?」
セリナは心配そうに見ている。
「俺もよくわからねぇ。あいつは関わりたくないんだろう」
「そう」
彼女は納得しては居なかったがこれ以上深く言及することはなかった。
◇ ◇ ◇
「リストいるか!」
朝起きてセリナと合流して探しているのは彼女。リストが姿を見せていない。使用人の方にも聞いては見たが誰も行方を知らないの一点張りで拉致が空かない。
「父上、リストちゃんを探しに行って来ます」
携帯で連絡をとっているセリナ。声には落ち着きが無くいつもより早口になっている。
「二斗。どうしよう。私が目を離した隙に......」
「話は後だ。まずは街の中を探そう」
「そうね」
彼女は涙を拭い目に力を入れる。リスト無事であってくれよ。




