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声のない魔法使い。ーー学園。  作者: 一条 いちか
Chapter One
9/10

不穏な渦はいつも側に。

「 怪我ってレベルじゃねぇよ…ッ‼︎…骨にヒビ入ってんじゃねーかクソがッ」




雛依の予想は見事に的中した。

人気がない下りの階段で背後から人が落っこちて来たのだ。


『くッ‼︎‼︎‼︎』



気配に気付き、条件反射的で落ちて来た人を受け止めたが、勢いが殺せず真も落ちる。



『うっ、ッ‼︎‼︎』



階段をすっ飛ばし地面に身体を打ち付けても、勢いが収まらずコンクリートの塀に激突する。




『…黒井さん…!黒井さん!』


『っ…』


『気がついてよかった!!あのッ!助けて頂き本当にありがとうございます!』



声も出せない程全身が痛む最中、眼を開けると落ちて来た人が必死にお礼を言う。

その声にどこか聞き覚えがあり、眩んでる目を合わせた。



『き、み……この、前の、』



溝も打ったのか力が入らず声がうまく出せない。



『嬉しい‼︎覚えてくれてたんですね‼︎この前廊下でぶつかった野々宮 櫻子です!』



櫻子の笑顔に悪寒を感じ、横たえていた身体を起こす。



『…つッ‼︎‼︎……』


『あ、まだ起き上がってはダメですよ‼︎』


『…ヅッ‼︎⁇』



抱きつく様に動きを止められ、激痛に剥がすように櫻子の肩を押す。



『…まだ身体が痛むから、触らないでくれるかな?』


『あ、ごめんなさい。つい……』



頬を染め恥じらいを前面に押し出して上目で見つめてくる。



『……!』



今すぐにでも離れたい忌避感に襲われ、身体を動かすと異変に気付く……。



(足が……)


『黒井くんが受け止めてくれなかったら私どうなっていたか……』



ピクリとも動かない足に血の気が引いていく真に気付かず、櫻子はひたすらに自分と真の相性を語る。



(怪我をするとは言われていたが、いざ自分の足が動かないのは恐怖以外のなんでもねぇな…)



くっ付いてる櫻子に感じるのは、いやらしい、不愉快等を通り越し嫌悪感、今すぐこの女の首を絞めてしまいたいと心に鬼を飼った様に怒りがこみ上げる。


込み上げる怒りをなんとか堪え、収集の着かない事態を終わらせようと家に連絡を入れた。



『爺、悪いんだけど学校近くの公園まで来て欲しい。足にヒビが入ったみたいで動けない。いや、救急車は呼ばなくていいよ。その代わり爺が早く来て』



最後のは切実な願いだ。

一刻でも早くこの櫻子という女から離れたい。



『あの、黒井くん、2度もぶつかるなんてなんかの縁だし、助けてもらったお礼もしたいから良かったら連絡先を…』



櫻子の言葉に緒が切れた。



『あんたさぁ、ほんと気持ち悪いよ。この状況で縁感じられても嬉しくないの分かんない?』


『……黒井くん?え…』



いつの間に君付けで呼ばれていたのだろう……それにすら虫唾が走る。



『うるせぇよ。殺したくなるからお前もう喋んな、帰れ』


『え、黒井くん、どうしちゃったの?私は味方だよ!?』



動転して真に触れようとした櫻子の手を跳ね除け、首を掴む。



『…ッ!?』


『まだわかんねぇ?』


ギリギリと喉元を苦しくなるように潰していく。


『ふっ、汚ねぇ顔だな』


『真様!』


『爺ここ。…遅いよ』



爺の声が響き、櫻子の首から手を離す。



『如何されたんですか、この様なお姿になられて…』


『詳しいことは後でにして。今は一刻も早くこの女から離れたい』



爺の手を借りて立ち上がると、櫻子が慌てふためき騒ぐ。



『黒井くん!私とあなたは運命で結ばれてるの!なんで分からないの!?『黙れ!!同じ学校の様ですが、今は校外。真様を気安く呼ぶなど、立場を弁えろ小娘』



スーツ姿の爺の怒りは効果的だったようで、櫻子は恐怖に身を硬くした。



『お前みたいな汚い女と運命なんか感じたくもない』



心底汚物を見る目で見下ろした。

車に戻るなりすぐ車を発進させた。



『……つ、』


『真、怪我はいかがです?』


『怪我ってレベルじゃねぇよ…ッ‼︎…骨にヒビ入ってんじゃねーかクソがッ』



そして冒頭だ。



「私はお前にそんな汚い言葉を教育した覚えはありませんよ。そもそもあの様な小娘に…らしくない」


「爺の教育はしっかり現実で役立ってるし、あの女が後ろから落ちてきたんだよ…流石に勢いが良すぎて避けらんなかった」


「災難でしたね。…主治医を呼びますか? 」


「いや、闇医者から薬をもらった」


「闇医者?……一宮様ですか?」



驚いた目とバックミラーで交える。

無言は肯定だ。



「ほぅ、あの一宮様が…真もお会いできたんですね。それなら安心です。早く薬を飲みなさい」



薬を口にした真を目に、薄い笑みを零しどこか安心した爺。



「っ……」



薬を口にした途端、患部に光が集まり痛みと共に腫れも収まる。



「ふはっ、”即効性“だな…」



ーーーー



『他人』に『運命』なんてもので、決められたくない。


俺の全ては俺のもの。



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