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声のない魔法使い。ーー学園。  作者: 一条 いちか
Chapter One
2/10

現実は未来への映し鏡

外気に当たる肌が冷たくなる中、品の良い笑みを浮かべて壇上に上がる真を目に追いかける。



ーー新入生代表 黒井 真



花束の受け取り役として前に移動した雛依も、邪魔にならないように端に移り真の言葉に耳を傾けた。



「ーーの名にーーー様にー」



完璧なまでの新入生代表。



声、視線、速度。

極め付けが彼のルックスだ…

他方から憧れと羨望の眼差しで見つめられる。



真に代表をやってもらって大正解だったと、再確認した。



「新入生代表、黒井 真」



形の綺麗な唇が閉じると、しっかりとした拍手が会場を揺らす。

一礼した彼の髪がサラサラしている様は、まるで王子様だ。



「!」



一礼からの起き上がりに真は見回すことなく雛依を一瞥した。

想定外に合わさった視線に、彼を捉えていた雛依の胸が嫌に騒めく。






ーー花束贈呈

新入生代表 一宮 雛依




拍手に混じって聞こえた一宮の名前に、会場がほんの少し、僅かに揺れた。


「…一宮も、だいぶ有名ね……」


小さく呟いた言葉は誰にも届かず、真同様に綺麗な笑みを浮かべ、雛依も壇上へ足を踏み出した。














「ねぇ、あなた一宮さんよね?花束贈呈の時の!」


「え、えぇ。見ていてくださったんですね…ちょっと恥ずかしい……」


クラスに真がいない事に安堵すると、勢い良く1人の少女が雛依に話しかける。



「一宮って言うから、あの一宮かと思ったけど…話せるって事は違うのよね?」


「え?話せるって……一宮の中でも話せない一族がいるの?」


真顔で尋ねる彼女に雛依もまた真顔で尋ねる。


「一宮の当主よ!同じ名字なのに知らないの?」


「一宮は一宮でも、違う家はさすがに知らないわ。でも、その一宮さんの当主はご病気かなにか?」


雛依の答えに呆れた様子。


「呪いよ、呪い!っ…特別な力を得た代わりに、声を失ったのよ」


腫れ物わや扱う様に小声で話す。


「まぁ!御伽話みたいな話ね!」


ぱぁ!と花咲く雛依。


「……変な子ね。同じ名字だってのに……まぁいいわ!乃惠瑠よ。笹木 乃惠瑠」


「一宮 雛依です」


「知ってるわよ……」


そう言うと乃惠瑠は雛依の後ろの席に座る。


「あら?後ろの席だったんですね」


「そうよ。さっきはいきなりごめんね。これから前後、宜しく!」


ニコリと屈託のない笑みで笑う乃惠瑠。


「こちらこそです!のえ…ちゃん?」


「のえっ、…………あなた、お嬢様の割に結構グイグイくるのね…」



笹木 乃惠瑠。外資系で有名な笹木家のご令嬢。

ご令嬢とは思えないサバサバとした話し方。

その代わりにストレートな黒髪の雛依とは違い、上品に巻かれた茶色い髪が乃惠瑠もお嬢様だという事を代弁していた。



「せっかくお話しかけて頂けたので、逃すまいと攻めてみました」


「ふふっ、あなたも意外とお嬢様で収まらない人ね」



クスクスと笑っていれば、クラスの注目を浴びる。


この学校は言わば貴族やお金持ちばかりだ。裏社会や表権力と裏権力など家々にキツく言われたのであろう。名に恥じないように大人しくしている者が大半を占める。



「その体制がいつまで続くかね?」


「え?」


「結局は、この学校生活が今後の日本経済を左右するパワーバランスの基盤になるの。彼とあのヒョロい男。誰かはご存知よね?」



彼と指したのは代々政治家一家の御子息。

そしてヒョロい男と指したのは、一代で世界に名を挙げ、今では誰もが知ってる家の御子息。



「えぇ。政治家一家の御子息と一代で世界が名を知る御子息…どちらも素晴らしい御家柄です」


「あなたの御家も比べ物にならない程素晴らしいと思うわよ。でも家系は重要ではないの!家系は彼が強くても、あのヒョロい男が在学中に何らかで打ち負かせば社会に出た時に今の表権力は逆転する……在学中の力関係は将来の権力を表してる。面白い学校よね」


「それはそれは今後の身の振り方が大変ですね」


「…あなた…、全く興味なさそうね。…まぁ私もだから気持ちは分かるわ」



頬付いてお茶目に笑う乃惠瑠。



「学校が地位や権力を無効って言ってるのは、0スタートから競争をさせる為よ。だからみんなの縦社会が出来上がるまでは安全!」



ニヤッと笑う乃惠瑠が言わんとしてる意図が分かり雛依も笑う。



「最近はイジメなどで学生生活も大変だと伺っていたので、安心しました」


「ふふっ、そうゆうことです!そう言えば選択授業は何にしたの?」




話がコロコロと変わるのは女の子の醍醐味。



それでも雛依の頭から離れない一言。


(呪い、ね……。)



思い描くのは3年後の卒業式。




ーーーー


一宮 雛依 いちみや ひなえ

黒井 真 くろい まこと

笹木 乃惠瑠 ささき のえる

川野辺 静夜 かわのべ せいや








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