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「ちょ、ちょっと待って!」
泡をくらった幸太郎は反射的にスピカの腕を掴む。「なに? いきなり脱ぎ始めるって馬鹿なの!?」
「お前が脱いだら話を聞いてやると言ったから脱ごうとしたまでだ」
「だからって女性がそんなことを軽々しくするもんじゃないよ」
「これが一番速くて効率的だ。それに、脱いで話を聞いてくれるのならこれほどわかりやすいこともない」
「やっぱり脱がなくていい!」
「脱げと言ったり脱ぐなと言ったり、お前たちは本当にわけのわからんことを言うものだな」
一瞬で割り切れたらしいスピカはそれ以上の脱衣を試みることなく、思いのほか大人しくパソコンチェアに腰を下ろした。疲れが一気に心にもたれかかる。これみよがしに、幸太郎は大きなため息を吐いた。だが、スピカはどうとも思っていないようだ。
尊大な調子で脚を組んだスピカが、机の端で立っていたフォトフレームに手を伸ばす。
「なんだ、この女は。お前の女か」
幸太郎と一緒に写っていた写真の中の少女をスピカが強く指先で軽く叩く。直後、暴力的な熱が幸太郎の中で波打った。
「やめろ!」
幸太郎自身すら驚くような大声と共に腕を伸ばし、スピカからフォトフレームをひったくる。そのまま、スピカから遠ざけるようにしてフォトフレームを抱え込んだ。
「少し大げさじゃないのか? 堂々と置いてあった写真を見たくらい、声を荒げることでもないだろう」
淡々と述べるスピカの肩を掴んで幸太郎は強引に立たせる。背中を押す動作と連動して財布をポケットに収め、スピカを玄関先まで押し出す。
「あんたがどんな原因でここに来て僕の家に来たのかはわからないけど、金輪際来るな。今度僕の部屋に入ってみろ、僕は女だって容赦しないからな。警察に突き出してやる」
「気に障るようなことをしたなら謝ろう。すまん」
しかし、と女も食い下がる。
「お前が提示した条件を私は呑んだ。それを何かしらの不可抗力的なものではなくお前の意思で私の脱衣で遮ったのだ。約束通り、私の話を聞いてもらおうか」
幸太郎は顔全体に苦々しさを滲ませ、観念したように小さく返した。
「わかった。五分だけ話を聞いてやる。でも僕はあんたらのお仲間がいるような場所にはいかない。あんた一人で俺と話してくれ」
幸太郎の念押しに対して、スピカは飲み込みの悪い生徒を相手するような目をしながら切り返した。
「もとより私一人だ。それと何度も言うが、宗教団体からの差し金ではないぞ」
ツイッターやってるんですが、あれってどこまで好きなこと言っていいのかよくわかんないですよね。すごく下ネタつぶやきたくなる時あって、でもドン引きされたくないなあみたいな心もあって悩んでます。みなさんもそんな時ありますか?