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「そういえば、ずっと気になっていたことがあったんだ」
スピカが思念体のことに言及した呼び水で、幸太郎はふと思い出す。「思念体はみんな、スピカみたいなモデル級のルックスがあるの?」
「個体差があるだろうな。私のように美人と設定される容姿もあれば、童話の姫にでも出てくるような可愛らしい思念体だっている。まあ、人間の基準でいうところの不細工は殆どいないと言ってもいいだろうな。ほぼ全個体が平均以上はあると思うぞ」
「それって何か理由でもあるの? 思念体は、本来なら美男美女の集まりとか?」
幸太郎の憶測を、スピカは馬鹿なことを言うなと一蹴する。「容姿に恵まれているほうがこの星では圧倒的に優遇される。それ以外の理由がいるか?」
突きつけられたプラスチックスプーンの先端を見ながら、幸太郎は答えられなかった。スピカの言っていることが、的を射すぎている。「同じ成果や態度をしていても、地球人は容姿が優れている、あるいは評価者の好みに沿った顔や体をしていると評価の軸が一気に傾く。お前たち大学生の就職活動とやらでも、それが如実に示されていると思うが?」
「いきなり耳の痛い話するなよ」
幸太郎は顔をしかめる。「ファンタジーな存在にまで就活の話題出されたら泣けてくる」
「じゃあファンタジックな話題にしてやろう。現実離れした容姿をして目立っていれば、ほかの祝福者からも認識されやすくなる。つまり、戦闘を重ねる回数を増やす手助けをしているといってもいいだろうな。あえてほかの理由を探すなら」
深く肩を落として幸太郎は腰を上げる。まさか思念体にまで就職活動のことを言及されるとは思っていなかった。非現実感とリアリティとの狭間で、軽い酔いを起こす。
「何かジュースでも買ってくるけど、ほしい人は?」
「はい!」
奈々子が元気に手を挙げる。先ほどのカロリー攻撃はどこかへ霧散したらしい。彼女はすっかり元気だ。
「私は水で十分だ」
つまり、幸太郎自身も含めると二人分でいいというわけだ。ポケットに財布が入っていることを確認して、空いている店へと足を運ばせる。適当なファーストフード店の最後尾に身を滑らせた瞬間、右肩を誰かとぶつけた。あわてて謝罪の態勢に入る。「すいません、不注意で」
相手は青年だった。年齢は十八歳から二十二歳くらいといったところであろうか。今一つ、雰囲気が掴みにくい。顔つきはまだ若いようにも見えるが左頬に走る稲妻形の傷と黒のスーツは、ある程度時間が熟した人間を思わせた。
肩をぶつけた青年は、人のよさそうな笑みを浮かべる。
「いや、僕のほうも悪かったし。あ、お先どうぞ」
青年の言葉に甘えて、幸太郎は一歩前へ。何を頼もうか考え始めた矢先に、先の青年から声をかけられた。「君、学生?」
最近、体力の低下が凄まじいです。夜もあまり起きることができなくなってきたので、これを機に朝方の人間にシフトチェンジを試みようと思います。
とにもかくにも、投稿が夜にできなくて申し訳ありません