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生前も同じような事を言っていた奈々子であったが、幸太郎はその感覚が未だによくわからなかった。それゆえ、いつ奈々子が大型遊園地に行こうと言い出すのか、気が気でない。本当に行きたいのであればやぶさかではないものの、しかし出来ることなら避けたい事の代表だ。
しかし、今は違う。久々に同じ時と場を刻めるのだ。時間はきっといくらあっても足りない。その思いを胸に、幸太郎は奈々子の髪を梳いた。さらさらと、毛先が幸太郎の指をくすぐる。
「ん、髪にごみがあったの?」
見上げる奈々子に、幸太郎は笑って返す。「一年分、精一杯撫でようかと思ってね」
不思議そうに口を結ぶ奈々子であったが、嫌ではないらしい。大人しく、店員から渡されたメニュー表を凝視している。少し俯きがちなせいか黒い髪が照明を弾き、頭を縁どるように天使の輪が見える。子供のような目でクレープを選ぶ奈々子が子供のように愛くるしい。羽でもつけたら飛べるんじゃないだろうか。そんなことを思いながら、幸太郎は無心で天使の輪をなぞる。
いつの間にか、注文の順番が回ってきていた。
今日はキリの問題ですごく少ない更新です。さておき、この時間になるとなんかすごくお腹すいてきますよね(現在約0時40分)。お酒がすごく飲みたくなってくるんですが、健康とを考えるとなかなか飲めなくて世知辛いですな