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5-3

 この店にある服と奈々子の雰囲気を見て親和性が高そうだと悟ったのだろう。茶髪を三つ編みにした店員が数種類の服を持ってきた。それを奈々子と共に、試着室へ入れる。待っている間店内をぼんやりと一瞥していた幸太郎は、あることに気がついた。

 スピカがいない。どこへ行ったのか聞いていないし、心当たりもない。一瞬だけ探そうかと考えていたものの、上がりかけた腰を下ろす。今日は奈々子のための一日だし、何より着替えが楽しみだ。スピカには悪いが、無視をしていても大丈夫だろうと踏んで放っておくことにした。

 待つこと数分、試着室のカーテンが開いた。

「じゃーん!」

 元気な声と共にポーズを決める奈々子に、幸太郎はシンプルな感嘆を漏らす。膝上のワンピースとズボンを履いた、快活さとある程度の精神年齢を兼ね備えた服装である。慎ましい色使いのワンピースで大人しそうにも見える反面、ズボンであどけなさが見え隠れしている。二十歳にもなって未だ少し顔立ちが幼い奈々子には、理想の組み合わせかもしれなかった。服装やファッションセンスに造形の深くない幸太郎でも、この服は似合っていると言わざるを得なかった。ポーズをとったまま返事を待つ奈々子に、幸太郎はこくこくと顎を引いて答える。「うん、すごく似合ってる」

「ほんと!?」

 過剰な反応を見せた奈々子に、幸太郎は念押しの一言を贈る。「うん、すごく似合ってて可愛い」

「可愛いってそんなあ」

 両手を頬に当てて照れる奈々子を見て、幸太郎はふと、自分の胸に何かが灯るのを感じた。その温もりは体中を伝播し、言いようのない衝動が喉元までせり上がる。にへらと笑う奈々子の顔を見た瞬間、幸太郎は思わず顔を背けた。目頭が熱い。少しでも気を緩めれば、泣いてしまいそうだったからだ。幸太郎の様子に驚いた奈々子が、仔犬のような足取りで駆け寄る。「幸ちゃん大丈夫? お腹痛いの?」

 奈々子の的を外した心遣いに思わず頬が緩んだ。素早く顔を作り直して、奈々子の頭を撫でる。

「全然大丈夫。ちょっとしたことだから、奈々子は早く着替えなよ」

 未だ何か心配したような顔だったものの、奈々子は大人しく引き下がった。再び試着室に入り、ジャージに着替える。衣擦れとハンガーがかち合う音を聞きながら、幸太郎はぼんやりと感傷に浸る。深い呼吸とともに、肺の奥底が満ちる。

 ――まさか、もう一度奈々子とこんなことができるだなんて。

 改めて実感する。これが夢か幻かは、正直どうでもいいのかもしれない。

 ――今度こそ、こんな日がずっと続けばなあ。

「お待たせ!」

 再びジャージ姿に戻った奈々子を迎えながら、そう思った。


みなさん、今季はなんのアニメ見ていますか? 僕はハナヤマタ観てます。鳴ちゃんが可愛くて思わずノンケになっちゃいますね。あぁ^~って感じに

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