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5-1 開戦

 奈々子と幸太郎、加えてスピカは六両編成の地下鉄列車に揺られていた。日曜日の午前十時は車内も人でごった返し、身動ぎすることすら苦労に感じでしまう有様だ。

「お出かけなんていつぶりかなあ」

 感慨深げに漏らす奈々子に、幸太郎は一瞬だけ悩んだ。奈々子が生き返って三、四日経つが、その中で分かったことがある。

 世界は奈々子の生還を大々的に認めているわけではない反面、奈々子は自身の死を知らない。物理的な確証がなかったものの、幸太郎が感覚的に掴んだ結論である。一応スピカにも確認を取ったが、彼女は奈々子の仔細にさしたる興味がないらしく、幸太郎の予想を概ね裏付けるくらいの、酷く霞がかった声しか返さなかった。

 そして奈々子自身の中で何かしらの操作がなされたらしく、奈々子は現在大学に通わず、幸太郎の家で住んでいることになっている。スピカ曰く「奈々子の中の設定をよりスムーズな生活ができるように書き換えた」らしいのだが、詳しいことはわからない。確かに生きているはずがない奈々子がいきなり家に帰ってきたら、親や友人たちも卒倒してしまうだろう。それゆえの書き換えらしいのだが、幸太郎からすればいっそのこと存在を大々的に認めるよう書き換えても良かったのではないかと思わずにはいられなかった。

 そのことを含め、幸太郎は奈々子に答える。「まあ、確かに少し間が空いたよね」

 なぜ三人が地下鉄電車に乗っているのか。至極簡潔に言ってしまうと奈々子の服がないためだ。現在奈々子の着るものといえば生き返った朝に着ていたパジャマと、精々幸太郎が持っているジャージしかない。下着は急遽コンビニで揃えた粗雑なものがあるものの、それなりを服の揃えることはできず、時間のある休日に買い込んでしまおうといった結論に落ち着いたのである。そのため、今も彼女は幸太郎が普段着ているジャージである。

 そして最早お決まりになりつつあるが、やはり電車の中でもスピカは多数の耳目を集めている。本人は至って無関心な、涼しげな瞳と口元が彼女の地球外の生命体であるというミステリアスさに拍車をかけているのだろう。幸太郎も、スピカの正体を知らず偶然同じ車両に乗り合わせていただけならばその美貌に驚いていたことに間違いはない。

「楽しみだねえ。幸ちゃんとのお出かけだから、ウキウキしちゃうよお」

 奈々子が十五センチ近い身長の幸太郎を見上げる。こうして奈々子を正面から見ると、丸く小さい鼻が際立つ。芯が通ったかの如くすっきりとした鼻立ちのスピカとは、面白いくらいに正反対だ。ちなみにここ数日で分かったもうひとつの情報として、スピカに服は必要ないということが発覚した。本人が言うには「外観における情報を一度『――』で分解し、適当な服になるよう再構成すればいいだけ」らしいのだが、幸太郎にはその原理が欠片もわからなかった。加えて聞き取れない単語が混じって、二〇回ほどスピカが発音したにもかかわらず何を言っているのかがわからなかった。これが彼女たちで言う、地球人では発音できない思念体の言葉なのだろう。原理よりも便利さや経済性の観点で羨む奈々子に、相当な安堵を覚えたことは言うまでもない。一年越しに生まれ変わっても奈々子は奈々子なのだと、言葉の端々で実感することができたからだ。

 地下鉄を降りて、さらに私鉄へ乗り換えて十五分。目当ての駅について降りるや否や、奈々子が大きな瞳を輝かせた。


ごめんなさい。昨夜十時頃、ちょっと寝ようと思って横になったら次に目を開けると八時になってました。もし更新を楽しみにしてくださっている方がいらっしゃったら申し訳無いです。お許しください!

このミスを挽回すべく、頑張っていきたいです。


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