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俊和の説明を一通り聞いた田中が、複雑な表情で考え込んでいる。
「俺、てっきり先輩は宇宙人なんているわけがないって否定派だと思ってました。いかにもオカルトチックだし、先輩はそういうの嫌いっぽいし」
「嫌いではないぞ。ただ、テレビのやつはどうも作り物っぽくて苦手なだけだ」
寧ろ俊和は宇宙人の存在に対しては肯定派だった。田中にも説明したとおり膨大な時間と無数の星がひしめき合っているこの宇宙で、逆にここまで発達した文明を築いたのが地球人だけと言い切る方が難しい。宇宙人の存在が公に証明されていないのはあくまで現段階ではそう認識されているだけであり、これからも宇宙人の存在が否定され続ける保証はどこにもないのだ。
故に俊和は宇宙人の存在には寛容でいたつもりであったし、いつか遠い未来には地球人が宇宙人と接触していても不思議ではないと考えることすらあった。
しかし、その俊和を以てしてもスピカや思念体の存在は異質を極めていた。何より姿かたちを人間に扮し、言葉すらも自由に操り意思疎通を図れていたことが、にわかには信じ難いことだったのである。
そんな存在が地球を侵略するでもなく、単なる知識欲を満たすためにこの星へ舞い降りた。俊和にとって、思念体の存在が恐ろしい。
――あいつらは一体、何なんだ。
消えない疑問が俊和を包み込み、足元に薄ら寒い風が吹く。
「ありがとうございました。俺、道こっちなんで」
田中の声で我に返る。気付けば、道が又状に分かれている。俊和の下宿先は右で、田中の下宿先はどうやら左の道らしかった。
「おう、お疲れさん」
適当な労い文句を投げて田中と別れる。背中の鞄を背負い直し、俊和はじっと空を見上げた。未だにスピカが宇宙から来て、日中聞いたような戦争を計画しているとは信じられない。現在認知されている物理法則すらも簡単に覆してみせる彼女たちに、俊和は仄暗い感情を抱く。
そんな俊和の視界の端で、赤い何かが横切る。慌てて光源に目を向ければ、真紅の一筋が空を駆ける。さながら子供がクレヨンで力の限り描いたかのように潔く、清々しい赤が黒を引き裂く。
直後、様々な色合いの光が大地へ降り注いだ。音もなく、雨のように落ちる流星群を見て、俊和は思わず口を開ける。この二十年間でここまで美しい世界を見たことがあっただろうかと自身へ問いかける。否。断定せずにはいられないほど、光の雨は輝いていた。
いくつもの光が束なった虹が空を奔り、残り火とも言える燐光が空に薄い傷跡を残す。そのさまがもどかしく、俊和は息を呑んだ。
その光が何を意図するのかを知らないまま、俊和は無心に光のシャワーを見上げる。
祝福戦争、開幕。
その事実を、俊和はまだ知らない。
アクセスが2000こえました。わーい! さておき、現在試験期間中で明日もダブル鬼門が待ち構えておりますので、現在修羅の道を歩いています。大学1or2年生なそこのあなた。単位は最初二年案でがっぽり稼いでおきましょう。そうすると、おいおい少しは楽になりますぞ