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3-3

「結局、今の僕には瞬間移動は手に余るってことでいいの?」

「できんではないが、それ相応のリスクや要求されるものもあると思っていいだろうな」

 とりあえず確認したいことが聞けたため、幸太郎は息を吐く。リスクがないのなら好きなように試してもよかったのだが、最初の一回で即死する危険性も浮上した今、無暗に中途半端な気持ちで瞬間移動を行使するわけにもいかない。

 暫定的な方針を固めた幸太郎はベッドから腰を上げる。缶をシンクへ置いておこうと足を前に進めた瞬間、体が大きく揺れた。ぐらり、と視界も動く。慌てて何か掴もうと手を伸ばすも電気の紐は指をするりとかいくぐり、幸太郎の上半身は重力の鎖に引き込まれる。

 視界の端に、パソコンを乗せるデスクの角が見える。

 ――あ、これはまずい。

 他人事のように認識して痛みを堪えようと力を入れた瞬間、電気が走るような音とともに幸太郎の視界がぶれた。コンマ数秒、テレビでまれにみる砂嵐じみた何かが視界を埋め尽くす。

 体が一気に軽くなった。正確には宙へ投げ出されたような状態であり、先ほどまで踏みしめていた床もない。

 次に感じたのは、熱い何かが服や自分を侵す感覚だ。あまりに突然のことで幸太郎は半狂乱のままその場でもがいた。熱いと叫んで、それがやっと風呂の湯だと気付いた。ここはどこだ。何があった。じたばた喚きながらパニックに陥ること数秒、湯がそこまで深いわけでもなく、そこに足が簡単に届いた。同時に、今まで騒いでいた自分はなんだったのだと虚しくなる。

 しかしそんな虚無感も、ものの見事に砕け散った。

「幸ちゃん?」

 木漏れ日のような声に、幸太郎ははっと上を向く。

 奈々子だ。奈々子が全裸で鼻先に泡を乗せたまま、茫然と言った様子で幸太郎を見下している。

 やっと幸太郎は、ここがどこなのかを理解した。つまるところ、幸太郎は無意識下で勝手なワープを試み、現在奈々子が使っているはずの風呂場に飛び込んだ、ということらしい。全く予期しなかった事態に幸太郎は勿論のこと、奈々子も目を見開いて何も言えずにいる。

 改めて、幸太郎は奈々子の体をまじまじと見つめる。思えば、彼女の体をまともに見た記憶がなかった。上から下へ、視線を行き来させる。

 奈々子はモデル体型とは言い難い、実に日本人らしい体つきだ。寸胴とはいかないまでも腰の括れは努力すればわずかに見て取れる程度で、胸も平均サイズである。スピカと比べたら、そのグラマラスさは大人と幼児くらいの差があるだろう。しかし腰のラインはなめらかで適度に肉のついた太ももは若く、その張りでシャワーの湯を弾いていた。直線的なわかりやすい色気には乏しいが、趣のある肉体である。

 未だきょとんとしている奈々子に向かって、幸太郎は言葉を投げる。

「まあ、そんなに悲観する体じゃないと思うよ」

「あほー!」

 硬直の溶けた奈々子がシャワーを向ける。瀑布のような勢いで噴射した湯が、幸太郎の顔をしたたかに打ち据えた。

「ごめんって! 悪気はなかった!」

 必死に謝りながら風呂桶から這い出る。全身ずぶ濡れのまま、幸太郎は追い出される形で風呂場を後にした。


なんかいかにもなお色気?シーンを書いたのは久しい気がします。ライトノベルではあって当たり前なシーンですが、どうにもどうやって挟み込めばいいのかがわかんなくて僕はすごく書くのに困ります。なくてもいいんですが、あったほうがいいのかなーと思います。需要的な意味で

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