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3-2

「これ、僕でもできるのか?」

「勿論だ。寧ろ戦争においては私の手助けなんてほとんどないと思え。私たちは慈善事業でお前たちの幸福を祝ってやったわけではないんだ」

 スピカの言葉を聞きながら、幸太郎は右手の開閉を繰り返す。

「どうやってやるんだ?」

「この世界には座標というものが存在する。その物体に書かれている座標を、書き換えればあっという間にワープするぞ」

「その座標って?」

 スピカは肩をすくめる。「そこはお前の力だろう。私は自分の見る者すべてに座標が書き込まれているからその数値を書き換えるだけで済むが、お前はそうでもないのか?」

「むしろ物体に座標が書き込まれてるってのが初耳だよ」

 眉間に力を込め、試しにちゃぶ台を見つめる。三十秒近く凝視しても、数字らしい何かが浮かんでくることはなかった。

「全然浮かばないんだけど」

「そんなはずはない。現にお前は一回成功させているではないか」

 ああ、と幸太郎は思い出す。昨夜、言われてみればトラックに轢かれる直前でワープできていた。つまり、無理ではないのだろう。

「なんかコツはないのか?」

「思念体相手に感覚的な話は正直有益ではないが、要するに慣れという部分が大きいのだろう。お前たちの言葉で謂うところの『勘』だ」

 腕を組んで唸る幸太郎に言葉を付け足す。

「また、何かしらの危険が迫った時くらいだろうな。そこから、うまい具合に勘所をつかんでみたらどうだ? 何度かそういったことを繰り返し、自分の体に瞬間移動の感覚を馴染ませてみるといいかもしれんぞ」

 スピカの提案に、幸太郎はおとなしく頷いた。もしかしたらもっと通学が楽になるかもしれないといった邪な企みに亀裂が入る。世の中は、そこまで優しくはできていないようだった。

 そこで、ふとした疑問が湧き出す。ある種、何より重要な最優先事項だった。

「これさ、もし僕の体の座標を書き換えて家の壁にめり込んだらどうなるの?」

 訊きながら幸太郎は考える。ゲームでもキャラクターが壁にめり込むバグは未だに多い。ゲームの中では無理やり壁から脱出することは可能だが、現実世界ではどうなるのか目処が立たない。

 幸太郎の質問に、スピカは表情を変えないまま答える。

「お前の体と物質が融合して、多分めり込んだままになるだろうな。これは実験してみたことがないから、私も正確な結論を出すことができん」

 まあ、とスピカが付け足す。「とりあえず物は試しだ。一回壁にめり込んでみてもいいかもしれんぞ」

「お前は僕を殺す気か!」

 思わず怒鳴り声をあげた。「とりあえず」で死んだら、幸太郎としてはたまったものではないだろう。


「僕と久保ってことは、二人いるの?」と、数年前聞かれたことがあります。残念ですが「と」って言っておきながら一人です。いっそNARUTOのペインのように複数名で一つの名前を名乗るとか熱いですよね。あのギミックはすごく好きでしたね。

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