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2-14

 隣で食い入るように見つめていた奈々子が、ぼそっとつぶやく。「大丈夫かなあ」

「奈々子まで心配してんのか」

 幸太郎は担保もない無責任な苦笑を顔に張り付けたまま、奈々子の黒い髪を撫でる。

 ううん違うの、と奈々子が首を振る。その際に幸太郎の左手が振り払われる。幸太郎は純粋に首をかしげた。「どういうこと?」

 一体何の心配をしているというのだろうか。不安げに眉をハの字にする奈々子が、次なる言葉を繰り出した。

「スピカさんじゃなくて、あの男の人の方が私は心配だなあ」

 一体この娘は何を言っているのだろうか。その疑問を打ち消すように、膠着していた二人に変化が生じた。男が大きく右腕を振り上げる。そのまま迷いなく、スピカの顔めがけて振りぬいた。河合の息をのむ気配がする。そんな彼女を裏切るように、スピカはさしたる苦労を見せることもなく男の拳をかわした。上半身を軽く反らせるだけで、男の拳が空を切る。

 窓越しのため明細はわからないが、男が口を動かせる。あの剣幕からして、穏やかな言葉は使っていないのだろう。

 そのあとも十五発ほど男のパンチがあったものの、スピカに当たる見込みを見せる一発はついになかった。男の大降りを嘲笑うかのごとくスピカはすいすいとよける。まさに、水中の魚にも匹敵する身軽さだ。

 膝に手をついて息を荒げ男と向き合うスピカが、くるくると首を回す。あ、やる気だなと、幸太郎は直感的に察した。

 男が怒ったままスピカの肩を掴む男が初めてスピカに触れた瞬間だ。幸太郎の中に、コンマ数秒だけ暗雲が立ち込める。しかし、幸太郎の心配は杞憂に終わった。

 両者とも全く動かない。外野から見る限り男が何やら力を込めてスピカを押そうと躍起になっているが、当のスピカは一ミリも動いていない。その様には地面に根を張った石像をどうにか動かそうともがく滑稽さがあった。男の表情からはとても遊んでいるようには見えない。男本人は必死に力を込めているようだ。

 直後、スピカの右足が動いた。

 きっと天に向かって伸びる雷があればこうなるだろう。そう思わせる超速の右足が男の股間を蹴り上げた。直接食らったわけではないのに、幸太郎の息が止まる。見ただけで股間部が委縮し、不覚にも内股になる。それほどにまで、一瞬のインパクトが大きかった。

 この時ばかりは今すぐ帰れと願ってやまなかった幸太郎も、白目を剥いて地面に倒れこむ男に惜しみない同情を贈った。


正直ストックがやばいです。なので、マッハで足そうと思っております。テスト期間なんですが、そこんトコロはなんとか頑張りたいですね。なのでもし更新の霊圧が消えたら、久保はテストの犠牲になったのだとお察しください

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