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2-11

 それにしても、なんかよくわかんないことになってきたな。

 テーブルのコーヒーカップを撤去させながら、幸太郎はぼんやりと思った。まとまりきらないまま不可思議な事実が積み重なっていく。それで何が困るかと訊かれたら幸太郎自身答えられないものの、体に襲い掛かる違和感を拭うことは難しい。何より死んだはずの奈々子が生きて、触れる。この上なく幸福で嬉しいことだが、色々と気になることも多い。

「長谷川さんどうかした? なんか難しそうな顔してるけど」

 同じくバイトをしている河合から声がかかる。詳しい年齢はわからないが大学生で、実家が喫茶店付近だという話は聞いたことがある。派手ではないがまとまった顔だちをしており、是か非かで極端に評価するならかわいいと呼んでもいい部類の女学生である。

「いや、ちょっと考え事かな」

 幸太郎は曖昧に答え、手を振る。さすがに「昨日いきなり美女が押しかけてきて、そしたら次の日に去年死んだはずの恋人が不思議な力で生き返って驚きもそこそこにその美女が消しゴムをテレポートさせちゃってさ」とは言えない。言った瞬間頭の心配をされるため、言いたい衝動をぐっとこらえて飲み込んだ。言ったところで理解される可能性はほとんど無いに等しく、自分だけで考えるしかない。

 働きながらあれこれと考えてみたものの、その考察も強制的に打ち切られた。原因はバイト中の喫茶店で、思いもしない来客があったからだ。

「ふむ、思いのほかまともに働けているようだな」

 スピカである。もはやお馴染みになりつつある尊大な態度で店に乗り込んできた。スピカの背中には奈々子が続いており、思わず幸太郎は撤去中の小皿やコーヒーカップを落としかけた。

 やっとの思いで思いとどまり、引き攣った笑顔で「いらっしゃいませ」と告げる。

「長谷川さんこの人たちと知り合い? すごく美人な人だけど」

 なかなかスミに置けませんなあとおどけながら脇腹を突いてくる河合に、幸太郎は力のない笑いを浮かべた。「じゃあ、この人は僕が案内するから」

「いいよ、そのくらい譲ってあげる」

 何かを勘違いしているようでならない河合であったが、とにかく助かった。この場で何かしらの突っ込んだ詮索をされて、場をかき乱されることは目下避けられた。

 しかし奈々子に関する混乱は避けられたものの、スピカの来店によって店内の空気が少し熱を孕んだような気もした。何せスピカはハリウッド女優ですら下唇を噛むレベルの美貌を持った、現実離れした女だ。性別の壁を越えて、何故こんな店に来たのかという好奇心が他の客の目線には込められている。

 無難な言葉づかいで窓際席に案内し、水を注いだコップを二人に突き出す。同時に腰を曲げて、スピカに詰め寄った。スピカはやはり浮世離れしたような優雅さで椅子に腰かけ、たったそれだけで何の変哲もないイスとテーブルが特注品のように見えてしまうから不思議だ。座る人でこんなにも変わるのかと、幸太郎は素直に驚いた。

 しかし、それとこれとでは全く別の話である。


僕は結構脳筋的な思考で、展開に困ると必ず物理的な解決を試みようとしてしまいます。論理的なうんぬんよりもとにかくわかりやすく物理で解決。みたいなノリなせいか、作品そのものに影響しないかとビクビクしております

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