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2-5

「名前は?」

「ない。ないではないがお前たち人類には発音できん音だからな。だから私たちは、地球上においては自らのことを『思念体』と呼ぶことにしている」

「その思念体とやらが、一体何しにこの地球にやって来たんだ?」

 俊和のもっともな問に、幸太郎も背筋を伸ばす。昨日スピカから話を聞いた限りでは今ひとつ真意を掴めなかった目的も、俊和ならなにか分かるかもしれない。そんな淡い期待からだ。

 射抜くような視線を当てられているスピカが答える。

「昨日幸太郎にも話したが、私たちは人間の『幸福』について知りたい。そのために個々の幸福を手伝って、そのために人類は何ができるか、何をしようとするのかというデータの収集に来たわけだ」

 釈然としない顔つきの俊和だったが、無理やり口を開く。

「じゃあさっきも幸太郎の口から聞いた戦争ってなんなんだよ」

「何って、お前たちが大好きな戦争以外あるまい。家屋に火をつけ武器を持ち、奪えるものは根こそぎ奪い蹂躙狂乱咆哮慟哭のなか目的を見失いながら殺し合い続けるあれだ」

「その戦争をすることによって何がわかると?」

「人間は必要に駆られないと基本的に行動は起こさないし、逆に考えると必要に駆られれば動く。だから、私たちはその必要を作ったに過ぎない。そこからどう動くのかを、私たちは知りたいんだ。そして私たちは、その知識や研究結果を得るためにはあらゆる努力を惜しむつもりもない」

 人差し指を揺らしながら滔々と理念を語るスピカには、オーケストラの指揮者にも似たある種の優雅さもあった。ひらひらと気品漂うスピカとは対照的に、俊和の顔は険しい。

「まあ、一応そういうことにしておこう。そうでもしねえと話が進まん」

 諦めたように俊和が吼えた。確かに、このままでは話が進まない。苦汁を飲み込むような覚悟を滲ませながら、俊和はコーヒーを一気に呷った。空になったカップに、奈々子がいそいそと二杯目を注ぐ。

「じゃあ次の質問だ。なんで桜井がこうして生きてんだ」

 俊和の物言いに、奈々子が再びしおれた。眉をハの字にして、俯く。

「もう一度言うが、これは桜井を嫌っての発言じゃないぞ。ただ、生きてくれていることはありがたいものの少し不可解な部分があるから聞いているだけだ」

「たとえばどんな部分が不可解なんだ?」

 挑発的な語調で尋ねるスピカに、俊和は「とぼけるな」と噛みつく。

「辻褄が合わねえんだよ。心臓が止まって死亡認定された直後に何かしらのイベントが起きて心臓が動き出しました。桜井も生き返ってみんな幸せですって筋書きなら納得できる。俺だって、それは素直に喜んでやるよ」

 でもそうじゃねえだろと付け加える。

「桜井が死んでからどれだけの時間が経ったと思ってやがる。一年だぞ、一年。火葬はとっくの昔に済ませたし生き返る要素がない。俺は信じないがまさか幽霊だったとしたらこうして物理的な干渉なんてできるはずもない。じゃあこの桜井はなんだ。ニセモノやそっくりさんだって考えが一番それらしいんじゃないのか」


現在、もう一作品書きたいなあとか作しております。それをしだすと互いの投稿がまちまちになるどころかとりとめのない感じになってしまうリスクもあるんですが、いつもやらないジャンルゆえ挑戦したいなあという気持ちがあります。なんでもしもう一作品がいきなり投稿されてたら、察して優しい目で蔑んでください。おねがいします

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