蝉の一生
真夏の恋の話
真夏の陽射しがバシバシと降り注ぐなか、私は後7日で自分の命が尽きることを聞かされた。
唐突に聞かされたそれは、死という終わりの実感を与えてはくれなかったが、ふと、そうまるで・・・・・・蝉のようだなと思った。
自分が死ぬと言われた日は、何をすることもなくそのまま家に帰り、両親に死ぬことを告げた。
父はおお泣きをし、母は意識を失った。
そして、再度此れからのことを明日話し合うとして、1日目が終わった。
2日目、私が目覚めてリビングに行くと、両親が仁王立ちで待っていた。 なぜ私が死ななければならないのか、その理由を聞かれたので答える。 二人は納得がいかないっといった顔を隠しもせずに、渋々ながらも分かったと告げた。
3日目、私は学校に来ていた。勿論勉強をするためだか、私はしてももう役立てることはできなさそうだ。
授業が終わり、放課後になった。私は1つ年上の幼馴染みの所に走り、ずっと好きだったことを告げた。
返事は明日で良いからと告げて家に帰宅する、少し緊張した。
4日目、幼馴染みは朝、家まで私を迎えに来てくれた。
俺と付き合ってくれっと告白された。
少しはにかみながら、はいっと答えた。
二人で手を繋ぎながら学校に向かう。他愛ない日常の話をしながらゆっくり歩いた。少し変に思われたが足がいたいのだと誤魔化した。
5日目、私は昼食用にお弁当を作った。
少し不格好なお握りと甘い卵焼き、タコさんウインナー、お弁当の定番をこれでもかっという勢いで積めた。
その少し不格好なお弁当を幼馴染みは美味しいと言いながら食べてくれた。嬉しかった。
放課後、また二人で手を繋ぎ家に帰った。
家の前まで送ってくれた幼馴染みにありがとうと告げ、家に入ろうとしたら呼び止められた。
そして、キスをされた。私のファーストキス。そう呟いて唇を押さえると、俺もだからお揃いだなと言われた。
顔から火が吹き出るかと思った。
6日目、私たちは学校をサボって遊園地に来ていた。
本当はいけないことだが、一度やってみたかったのだ。
開演前から並び、ゲートが開いたと同時にアトラクションに向けて全力失踪をした。案の定途中でバテた。
先に走っていった幼馴染みにやっと追い付き、二人で人気の絶叫マシーンに乗った。
死ぬかと思った。そう幼馴染みは降りてから告げた。
私は逆に笑いながら楽しんだ、アトラクションは楽しんだ勝ちなのである。
それからは、メリーゴーランドやコーヒーカップに乗った。
昼食はショーを見ながら食べた。
園内で買ったジャンクフードだが、それなりに美味しかった。
マスコットキャラクターのキーホルダーが付いてきたので、二人でスマホに着けた。
その後は、またアトラクションに乗ったり、お土産屋さんを見たりしていたら夜になった。
夜のパレードはイルミネーションの光と、うち上がる花火が、とても幻想的だった。
周りの人が花火に夢中になり、上を向いているなか、私は幼馴染みに2度目のキスをされた。
2回目のキスは少し激しかった。
そして、閉園時間となった。
2人で電車を乗り継いで最寄り駅まで帰る。
その間私達の間には一切の会話は無かった。でも握っている手のひらの温もりが、あの楽しかった時間がたしかに存在したことを教えてくれた。
電車を降りて、家まで送ってくれた幼馴染みに、話があるのだと切り出した。
そして私は、幼馴染みにお別れを告げた。
7日目、私は病院のベッドで目をさました。
別れを切り出したあと、私の意識は何かに切り取られるようにプツリッとなくなり、崩れ落ちたらしい。
結果的に、私が今日死ぬことが幼馴染みにバレてしまったのである。
その幼馴染みは面会時間になるとすぐに現れ、横たわっている私の手をずっと握っている。
何かを話さなければいけないのに、何を話せばいいのかが解らなかった。
私たちは、ただ無言のままお昼過ぎまで過ごした。
日が傾きだした頃。唐突に、幼馴染みは私のことをいつ好きになったのかを話し出した。
小さな頃は妹のようだったが、中学に上がる頃にはもう好きだったと気付いたと言われた。
すごく嬉しかった。涙かボロボロ溢れて止まらないなかった。
私もいつ好きになったのかをつまりながら話した。
昔から私を引っ張ってくれたその姿や、苛められていたとき助けてくれたその背中にあこがれて好きになった。そう告げた。
その間、幼馴染みは顔を真っ赤にさせて私の話を聞いていた。
二人が話終わった頃には、日も落ちてかなり遅い時間になっていた。
それでも幼馴染みは、私の話を一言も漏らさないように真剣な眼差しで聞いていた。
そして、その時は訪れた。
私の体から力が抜けていき、もう目を開けていることさえ、辛くなってきた。
横では、両親と幼馴染みが泣いている。
でも、その声も意識が霞んでいる私には届かない。
7日で死んでしまう命なら、いっそのこと、本当に蝉のようにパタリと死んで終いたかった。
だって遺していくことが、こんなに辛いなんて知らなくて済んだのに。
もう聞こえない、耳では拾えないその声で、私は皆に幸せだった。
次に生まれて来てもまた一緒に居たい。
そう告げて、7日目にあっさり死んだ。
「なんかすごかったね、男優さんもイケメンだったし、女優さんもなんか落ち着いた美人って感じで!最後が特に良かった!」
「たしかに、でも私は、あの遊園地のシーンも好きだなぁ。すっごく、綺麗で幻想的だったもん」
「あぁ、あんたああいうの大好きだもんね」
「うん、でもほんとよかったよね、この映画!」
「ほんと、ほんと、でもこの映画って内容は実話を元にしてるらしいよ?
なんか、この原作を書いた人の死んだ奥さんがモデルみたい」
「へー、なんかスゴいね」
「ね、なんかスゴいよね、私もこんな恋がして見たいよ」
「いや、あんたは無理だから諦めな」
「ムキー!!なんだと〜!!わたしだってねぇ・・・・・・・・」
真夏の陽射しがバシバシと降り注ぐ。
蝉が今日も命を繋ぐため大きな声で鳴いていた。
朝、電柱に止まっている蝉がかなり弱弱しく泣いていたので、この話を思いつきました。
蝉の一生とかけてみました。でも実際にこんな人がいたら結構ひどい人ですよね。
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