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交響楽(シンフォニー)-遠い旋律2-  作者: 神山 備
私を星まで連れてって!
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彩加(姉の七光り)

 弘幸は最初、華野が翔真の妹だからプロデューサーが色気を出したのかと心配したが、それは杞憂に終わった。弘幸が思っていた以上に華野には声量も歌唱力もダンス力もあったのだ。

 華野は幼い頃からアイドルを目指していたのである。ロッカーである兄のボイストレーニングを真似て自主トレに励んでいた。ダンスも『KIRARA』は言うに及ばず、テレビに登場する大物どころはすべて完コピする勢いで練習していた。スクールに通う方が効率ははるかに良いだろうが、いろんな振り付けをこなすことによって、変な振り付けの癖をつけなくて済んだというメリットもあった。もっとも、『KIRARA』のプロデューサーが彼女を選んだ理由はシンプルにその『ハングリーな目』だったそうだが。


 そして、華野が芸能界入りのすぐあと、今度は末娘彩加にモデルのスカウトがきた。『HANANO』似の美少女として、スカウトの目に止まったのである。確かに、実の姉妹なのだから似ていて当然なのだが。

 これにはさすがに両親も戸惑いを隠せなかった。翔真と華野は本人が希望して選んだ道だ。彼らのデビューまでの努力も知っているので反対はしなかった。

 だが、彩加の場合、完全に『姉の七光り』。その上、当時小学生の彩加にはどこの現場に行くにしても大人の助けを借りないわけにはいかない。スカウトされたからといって、事務所側がそれを一手に引き受けてくれる訳ではないのだ。

 その頃には長兄の純輝と芸能界入りした翔真・華野は家を出てはいたが、父智也は会社を経営しており、母久美子もその一翼を担っている。とても末娘だけに構ってはいられないし、末娘だけに手をかけるのは上の兄姉たちもいい気はしないだろう。彩加本人はスカウトに浮かれているようだが、ここは諦めてもらう方向でいくしかない、両親はそう決断したのだが……

 そこに、思わぬ助け船が入った。長姉初羽が家事を、次兄大洋が母の仕事を引き継ぐと言い出したのである。

「このまま諦めさせてもさ、チャイカはきっと納得しないぜ。何で翔真や華野は良くて自分はダメなのかって、絶対に言う時がくる」

大洋はそう言って笑う。

「はーちゃんやチャイカは私も育てたようなもんだからね、やりたいことやらせてあげたいんだよ。

あ、私が今ムリしてるってことじゃないよ。私は表に出るよりこの方が性に合ってるから」

さらに初羽にもそう言われて、久美子は重い腰を上げたのだったが……


 彩加はそれから二年もしない内にモデル事務所を辞めたい言い出したのである。

 

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