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交響楽(シンフォニー)-遠い旋律2-  作者: 神山 備
私を星まで連れてって!
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華野

 翔真のデビューに真っ先に反応したのは、すぐ下の妹の華野。彼女は長い間、笹本家のアイドル『はーちゃん』として君臨してきたが、彼女が小学校に入学した年、彼女を超える存在、笹本家のお姫様『チャイカ』こと、妹彩加が誕生した。その笑顔は瞬く間に笹本・坪内両家を席巻し、華野は一気に目立たなくなってしまったのだ。

 確かに妹は姉の贔屓目抜きにしても可愛かった。だが、それまで浴びていたスポットライトが当たらなくなるのはまた別の話だ。一時はそれに抗ってはみたりもしたが、

『はーちゃんはお姉ちゃんでしょ』

の一言でいなされてしまい、却って凹む結果に。

 大体華野は6人兄弟の5番目、笹本家では『赤ちゃん返り』はもはや通過儀礼。両親祖父母のみならず、兄弟の上の方でさえ、対処法は心得ているのだ。

 では、今一度注目されるにはどうしたら良いのか。もっと家族に面倒をかけるという手もなくはないが、華野はその目を外に向けることにした。とりあえずクラスのアイドルを目指すことにしたのである。同じ血が流れているのだ。彩加には負けるかもしれないが、自分だって結構可愛い。華野は自分磨きに精を出し、『誰からも愛されるはーちゃん』を目指した。それも、男の子だけをターゲットにすると女の子からはそうスカンを喰らうことになるので、極力女の子ウケすることを狙ったところはさすがと言うべきか。そして、その目標はクラスのアイドルから学校のアイドルに、学校のアイドルから日本のアイドルにと広がっていった。彼女は機会あるごとに

「私は絶対にアイドルになる!(どこかの海賊風)」

と『アイドル宣言』もしていたし、いつしか華野は周囲からも『この子はいつかアイドルになる子だ』と思われていった。

 そんな中での翔真のメジャーデビューである。華野は真っ先に芸能事務所を紹介してほしいと兄に頼むが、

「んなもん、俺じゃムリ」

と一蹴されてしまう。

 確かに、インディーズ上がりの翔真にそんなコネなどある訳がないのが一番の理由ではあるが、売り込みくらいはできそうなものだ。だが翔真自身が、『こんな芸能界みたいなクソな世界にウチの大事な『天使』を放り込めるか』と思っているのだから、華野がいくら頼み込もうとも彼が首を縦に振る訳がない。


 だが、それでも諦めきれなかった華野は、その思いを翔真のバンドメンバーの一人、吉野弘幸にぶつけた。翔真がうんと言っていないのだ、弘幸も難色を示すが、密かに思いを寄せていた華野が自分の方からやってきて懇願するのである。紹介したいのはやまやまだが、自分にはそんな力もないし、縦しんばバレでもしたら、翔真にどんな仕打ちをうけるのか想像もできない。何とか納得できる形で諦めさせたい……と思ってひねり出した苦肉の策が、人気大型アイドルグループ『KIRARA』のメンバー(第5次)募集だった。

 結成以来、女の子なら誰でも一度はあこがれたことのあるグループだ。エントリー数も半端ない。回を追うごとにエントリー数は増え、前回はついに4桁を超えたときく。しかも、やってくるのは全国の名だたるスクールで学んでいる強者揃いである。何も訓練していない華野が受かるわけがないと考えたのだったが……


 華野はその4桁の難関を突破し、見事『KIRARA』への加入を果たしてしまったのだ。


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