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俺はヒーローになりたいんだ!! (後編)

 俺は社長が出した原作本をパラパラとめくってみる。予想通りの乙女チック展開だ。ぐはっ、これを俺がやる? ギブギブ! だけど、

「社長、俺こんなのムリっすよ」

と言った俺を

「何がムリなんだ、お前役を選り好みできる身分か」

社長はそう言って一蹴する。

「俺は」

「お前のなりたいもの位、わかってるさ」

社長は俺がスーツアクターになりたいと言おうとした言葉をひったくってそう言った。

「だがな、特撮だって、戦隊だってシテをつとめるのは意外とポッと出の新人ばかりじゃないことぐらいおまえにだって知ってるはずだ」

「それは、『外の人』のことでしょ。俺は中の……」

「『中』はもっとだ。『外』はワンシーズン出ちまえばそれまでだが、『中』は同じ奴でもなんら問題はない。

もっとも、最近では『ワンダー』でもタイプチェンジやら複数が一度に出るケースも多いし、過去キャラ使っての映画化とか、スーツアクター自体に固定ファンが付いているってこともあって、そういうファンイベントもあるしな。昔ほど使い回しじゃないけどよ。

けど、それはホンの一部だ。あとは大抵、デパートやスーパーのヒーローショー。バイトの世界だ」

「それがいけないんですか!」

「もちろん、いけないとはいってない。それだって大事なウチの仕事には違いない。ただな、お前はただのバイトじゃない、正式に雇用契約したスターライト企画の役者だ」

はーママさんにここを紹介してもらったとき、俺は別にバイトでもよかったんだが、はーママさんはもちろん、純輝さんや治人の親父さんまで寄ってたかって俺に役者として契約するように勧めた。おかげで渋ってたウチの親父が折れたんだから、彼らの言い分は間違っちゃいなかったんだけど。今更それが足枷になるとは思わなかったな。

 だが、話はそれで終わらなかった。俺は社長が続いて繰り出した一言に目をひん剥くことになる。

「それにな、これは新庄夏生しんじょうなつきさんからのたっての要望でもある」

「親父……の?」

俺は自分の耳を疑った。何でそこで親父の名前が出てくるんだよ。 

 ちなみに新庄夏生はアクション漫画家である俺の親父のペンネーム。本名は伏見泰介という。

「お前がこれを受けないなら、雇用契約を解除してもらって構わないと言ってる」

「は?」

「実はな、この間飛ヒラリとしてた本読みを演出の相川さんにチェックしてもらって、OKももらっている」

確かに、この間、飛が『マリン戦隊シンエンジャー』の台本手に入れたからって、フザケて読み合わせしたけど、それを演出家が聞いてたってのか? ちょっと待て、それよりオーディションってやるっていってたのに、社長今、演出家がOKって……

「それじゃ出来レースってことじゃんかよ! 新庄夏生の息子だから、少々のことは目を瞑って、周りを納得させるためだけに、形だけのオーディションってか? ふざけんな!!」

俺は粗方食い終わった膳を叩いて立ち上がった。中身がないからとあのスポ根アニメの親父よろしくひっくり返さなかったのを褒めて欲しいくらいだ。

「誰もそんなことは言ってないだろ!」

広瀬さんがそれを見てそう言いながら俺の肩を掴む。

「言ってるのと同じじゃねぇかよ!

俺、絶対に出ねぇからな。それでクビにするってんだったら、クビにでもなんでもしてくれ!!」

俺はそう言うと、広瀬さんを振りきって店を飛び出した。









すいません、前後編のつもりだったんですが……


悠馬親子それぞれの想いを書いていく内に、どんどんと膨らんでいっちゃいまして。


何とか今月中には終わります。



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