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sign  作者: 雪菜
9/14

sign 9 (side 裕美)

周ちゃんに書き置きを残して、嘘をついて入院してしまった。

昨日の朝、テーブルの上に置いた書き置きを見て、周ちゃんはどう思っただろう。


いきなりあんな書き置きを残してしまったから、ビックリしたかもしれない。

ちゃんと話さないで出て行ったから、怒ってるかな?

「落ち着いたら連絡を入れる」と書いたから、手術が終わった後に連絡を入れなくちゃ…。


携帯電話は電源を切っていた。

病室内は通話はできないけれどもメールはできるから、本当は切る必要はなかった。

でも今、周ちゃんから連絡がきてしまっても「出張」という嘘をつき通せる自信はなかった…。





「裕美、もうすぐ時間よ。」


病室の天井を見ながらボーっと考え事をしていると、4つ年上のお姉ちゃんが私の顔を覗き込んだ。



「うん。お姉ちゃん、仕事休んでくれてありがとね。」


手術中、もしもの場合に備えて親族の付き添いがいる。

私はお姉ちゃんに付き添いをお願いしていた。

お姉ちゃんは新婚で、私のアパートから電車で2時間くらい離れたところに住んでいる。

今日は仕事を休んで病院に来てくれたのだ。


「いいけど…手術が終わって落ち着いたら、お父さんとお母さんにちゃんと知らせるのよ?」


田舎に住む両親には、手術のことは伝えていなかった。

手術自体が難しいものではないし、自営業をしている両親にわざわざ来てもらうのも悪かったからだ。


「…うん。黙ってたから怒られるかなぁ。その時はお姉ちゃんもフォローしてね?」


「はいはい。」



お姉ちゃんと話していると、看護師さんが病室に入ってきた。


「有澤さん、そろそろ行きますよー。」



いよいよ手術だ。


「はい、よろしくお願いします。」


私は、看護師さんとお姉ちゃんと共に手術室へ向かった。

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