sign 13 (side 周一)
作者も周一もがんばってます!
「周…ちゃん?なんで…どうしてここに?」
「裕美…大丈夫か?ごめん。何度謝っても足りないけど、本当にごめん。」
「なんで…謝るの?なんで泣いてるの?」
裕美はまったく訳がわからないという顔をしながらも、俺の濡れた頬に手を伸ばそうとした。
俺はその手を両手で掴み、自分の額を当て、自分の思いがすべて伝わるように祈りながら話し始めた。
「全部、柴原に聞いたんだ。病気のことも、手術のことも。俺、何も知らなくて…裕美は少し元気なさそうだったし、ちょっと距離置いてるのかなのって思ったこともあったんだけど、忙しくてあまり時間も取れなかったし、別れたいのかなって思ったら怖くて聞けなかった。それで昨日の朝「出張に行く」っていうメモ見つけたんだけど、すぐに嘘だって気付いた。裕美なら絶対書き置きだけ残して出掛けるようなことはしないって思ったし。今日の仕事の後に柴原から裕美のこと聞いて、急いでここに来た。ごめん、あの時俺が裕美とちゃんと話をしていれば…向き合っていれば…裕美のこと理解して傍にいてあげられたのに。支えて、励ましてあげられたのに。俺、一番近くにいたのに、裕美のために何もしてあげられなかった。裕美の心が晴れるまで、今まで抱えていたものを全部俺にぶつけていいから…これからは逃げずに裕美と向き合っていくから…傍にいることを許してくれないか?」
「違う…違うのっ!」
「えっ?」
裕美が声を荒げた。俺は顔を上げる。
ふぅと息を吐き、少し落ち着いてから裕美が言った。
「周ちゃんのせいじゃない、私が臆病で…周ちゃんと離れたくなくて…病気のことも手術のことも黙ってたの。」
「俺と離れたくなくて黙ってたって…どういうこと?」
「…周ちゃんは、将来子どもが産めないかもしれない人となんて、喜んで結婚できないでしょう?」
裕美が吐き捨てるように言った。こんな裕美を見たのは初めてかもしれない。
「裕美の病気は、子どもが産めなくなるのか?」
俺は努めて冷静な声で言った。
「産めなくなる可能性があるの。もしも再発してまた筋腫が大きくなったら、今度は筋腫だけ摘出はできないって。子宮を全部摘出しないといけないって。
先生にそう言われたの。そうなったら子どもは作れないじゃない!周ちゃん、前に結婚したら『子どもは2人は欲しい』って言ってたでしょう?
もしも子どもが産めなくなって…そんな私と結婚したって幸せになれないでしょう?周ちゃんのご両親だって、こんな私をお嫁さんとして認めてくれると思う?だったら私なんか捨てて、他の健康な女性と結婚して幸せになればいいじゃない!」
最後は涙を流しながら、裕美が早口でまくしたてた。
あと1~2話で完結させたいなぁ…




